青森県六ヶ所村で使用済み核燃料再処理施設反対運動を続けている関係者からもたらされた情報である。再処理施設を運営するのは国策会社である日本原燃という企業だが、その日本原燃の事務所がこの3月に移転。移転先がなんと、青森県の地方紙である東奥日報社の新町ビルというのだ。
今時呆れるほどのマスコミと原子力ムラとの癒着。福島第1原発事故の起きた3月に記事を掲載というのも凄い。まるで福島原発事故などなかったかのようだ。今後も堂々と原発、核燃サイクル推進を続けるという、ある意味すがすがしい宣言といえる。3.11を福島県内で迎えて以降、強硬な脱原発の立場を取る当研究会にはまったく理解不能だが。
「原発広告と地方紙 原発立地県の報道姿勢」(本間龍・著、2014年、亜紀書房)によれば、東奥日報は日本一原発関連広告の多い地方紙である。さらに、今は脱退しているが、日本原子力産業協会に会員として加入(福島原発事故後の2012年時点)していたことを当研究会は確認している。メディアで日本原子力産業協会に加入していたのは、東奥日報、福島民報、福井新聞、三重テレビの4社のみ。現在もなお加入を続けているのは三重テレビのみだ(興味のある方は直接、日本原子力産業協会サイト内の会員名簿で確認できる。この協会のトップページは見ていると吐き気がしてくるので、あえてリンクは張らないでおく)。
「政・官・財・学・報」の5者による原発推進体制を表現したわかりやすい図表として、福島原発事故直後にずいぶん話題になった「原発利権ペンタゴン」という資料をネット上では今も見ることができる。改めて掲載しておこう。
自社ビル内に日本原燃を入居させる東奥日報はどこまで原発推進御用腐敗新聞に身を堕とすのか。双葉町の少女が原発事故直後に100ミリシーベルトの甲状腺被ばくをしていたことを東京新聞が情報公開請求で突き止め大々的に報道している間、原発事故の地元でありながら無視し続けた福島県内の2紙(福島民報、福島民友)も随分ひどいが、東奥日報はそれ以上だと思う。
ちなみに「少女被ばく問題」を無視し続ける福島県内2紙は、「原発事故の被災地である福島県において、県民の健康問題は非常に大きな課題だ。にもかかわらず、地元紙が触れないのは違和感しかない」として、同じ福島県の地元雑誌「政経東北」から批判されている(「少女被ばく問題」で地元紙の対応に違和感~政経東北2019年2月号「巻頭言」)。
原発立地県の地方紙は、どこも原発批判には及び腰の対応が続いており、そのことが地元で反対運動が抑え込まれる理由にもなっているが、それでもまだ「福井新聞」は、地元の反原発運動のリーダー的存在である中嶌哲演さん(明通寺住職)のハンストを取り上げるなど反対派にも配慮した報道姿勢がある。原発にとって不都合なことはたとえ事実であっても無視する福島県内2紙や、日本原燃を堂々と自社ビルに入居させる東奥日報は誰のためのメディアなのか。原発事故から8回目の3月を終えるに当たり、当研究会は改めて3紙に強く反省を促したい。