安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
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北海道出張…財政破綻から5年の夕張の今、そしてJR北海道の評判

2012-10-28 21:42:19 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
今日から出張で北海道に来ている。仕事は明日から始まるが、朝一番から現場というしんどい業務なので、前泊することになった。現場仕事だというのに、すでに天気は雨。今週1週間、曇時々雨の予報が続く。ったく、なんてこったい。

飛行機の都合で、新千歳に降り立ったのは昼過ぎ。泊まるホテルは帯広市だが、まっすぐ向かうというのも何なので、未乗区間を乗り潰す。とはいえ、2~3時間の空き時間で乗り潰しができるほど北海道は甘くなく、帯広に向かう途中の石勝線夕張支線に乗るだけにする。

新千歳空港駅から南千歳に移動。南千歳14:32発2639Dで16:11夕張着。

夕張市は、5年前の2007年に財政が破綻した。以降、職員の大幅削減、給与の大幅(4割)カット、市民サービスの削減など職員にも市民にも痛みを伴う形で財政再建に乗り出したが、累積債務は353億円もあり道のりは厳しい。主要産業だった炭鉱の閉山の後、これに代わる新たな産業を創出できないでいる。

列車の窓から流れる夕張の町並みを眺める。建物に明かりが点り、車が行き交い生活臭は感じるが、町の活気のなさは一目瞭然だ。タクシー・運送会社、クリーニング業者、飲食店など、市民にとってなくてはならない生活密着型の零細産業はあるが、多くの雇用を吸収し、地域の明日につながる産業の影は見えない。これでは若い人たちが転入し定着することは難しい。大赤字の町なのに、かつての炭鉱住宅の名残なのか、身分不相応の立派な団地があるところに「栄華の夢の跡」が見える。「厳しいな」…列車の窓から一瞥しただけなのに、つい、そんな言葉が私の口をついた。

苦境の中にある夕張の姿は、多くの「限界集落」を抱える自治体にとって対岸の火事ではない。衰退の進行度が違うだけで、手をこまねいていては多くの地域がいずれ辿る道だということははっきりしている。

私の地元、福島にしても同じことだ。原発事故から「復興」と唱えればすべてが解決するかのような妄想にふけっている自治体、首長たちが大勢いる。彼らときたら、産業育成も地域振興も怠ってきた自分たちの過去の怠慢を棚に上げ、地域衰退があたかも自主避難者のせいででもあるかのような「自主避難者=裏切り者、非県民」「復興のために踏みとどまる者=英雄」というばかげたキャンペーンを続けている。地域衰退の原因は何か。どうしたら復興できるか。そうした疑問に向き合わず、衰退を他人のせいにするだけのキャンペーン、持続可能な産業を興す努力もせず「食えなければ原発の収束作業か除染にでも従事していろ」といわんばかりの棄民政策では、いずれ夕張以上の惨劇が福島を襲うだろう。

やはり、国や自治体にはもう任せておけない。住民が立ちあがり、自分たちで知恵とカネを出して持続可能、地産地消、地域循環を柱とした新しい産業を興し、「大資本に食い物にされる資本主義」への対抗軸を示さなければならないとの思いを強くする。夕張の破綻は確かに残念なできごとではあるけれど、「再生へのスタートラインに日本で最初に立てたのだ」と気持ちを切り替えるしかない。31歳、全国最年少の市長を迎えた夕張市の実験は思いのほか注目されている。一番手だけに何をやっても注目されるし、モデルケースがないのだから失敗しても許される。「これ以上悪くなりようがないのだから、後はよくなるだけ」「市長もまだ若いから」で許される有利な条件のうちに、大胆に色々やってみればいい。苦難を他人のせいにするしか能がない福島のダメ自治体、ダメ首長たちも大いに触発されるかもしれない。

16:19発、2636Dで足早に折り返す。16:41着の新夕張で降り、16:48発特急「スーパーおおぞら9号」で帯広へ。今日から30日までは帯広泊となる。

帯広到着後、夕食も兼ねて寿司屋に繰り出す。福島では汚染の可能性が消えない食材を避け続ける生活が続き、いつしか食卓から遠のいたり、消えてしまったりした物が多くある。葉物野菜などその際たる例だ。だがここでは地元産のほうれん草のおひたしが並ぶ。ほうれん草の味が、懐かしく感じられる。

朝、仕事に行き、夕方、家族の待つ自宅に帰る。食材を自由に選び感謝しながら食べる。そんな当たり前の生活を送ることすら、福島でも夕張でも難しくなった。それなのに、その原因を作った者たちは雲隠れし、今、彼らに代わって行政を預かる者は苦難を他人のせいにしてお茶を濁すだけだ。

「厳しいな」…さっきと同じ言葉が、また脳裏に浮かんだ。

【完乗達成】石勝線

余談だが、寿司屋でのできごと。カウンター席に座った客と店主が話をしている。帯広が石勝線沿線であるせいか、話題は2011年5月に起きたJR北海道の特急列車火災事故に。「お客が自主的な判断で車外に避難したからよかったけれど、あのまま車内に残っていたらみんな死んでた。車両と一緒に丸焼けだ」「車掌は列車指令に判断を求めたが、指令は乗客はそのままにしていろと言うだけ。車掌も指令も訓練が全くされてもいないし、たるんでいる」。安全トラブル続きのJR北海道の評判は地元でもガタ落ちだ。

ただ、店主の話しぶりが昔々、政府やマスコミが大宣伝した「たるみ国鉄」キャンペーンと同レベルなのが気がかりだった。労働者が有事に適切な対応ができないのには会社の体質というもっと大きな問題がある。そこに切り込むことなく、誰それがたるんでいる、と言うだけでは昔と同じことの繰り返しになってしまう。そんな危惧も抱いた。

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