仕事の関係で、ライフスキル、ソフトスキル、ソーシャルスキル、社会人基礎力、以上の4つの概念について調べてみた。
1. ライフスキル life skills
“ライフスキルとは、日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な能力である”(WHO, 1994)。世界保健機構(WHO)が、若者の問題を解決するために必要な教育プログラムとして、1994年に提唱した。その中身は、10のスキルで構成されている(以下は文部科学省HPにもとづく)。
(1)意思決定(Decision making)
生活に関する決定を建設的に行う力。様々な選択肢と各決定がもたらす影響を評価し、主体的な意思決定を行うことにより望ましい結果を得る。
(2)問題解決(Problem solving)
日常の問題を建設的に処理する力。
(3)創造的思考(Creative thinking)
どんな選択肢があるのか、行動の結果がもたらす様々な結果について考えることを可能にし、意思決定と問題解決を助ける。直接経験しないことを考える、アイデアを生み出す力。
(4)批判的思考(Critical thinking)
情報や経験を客観的に分析する能力。価値観、集団の圧力、メディアなど、人々の態度や行動に影響する要因を認識し、評価する力。
(5)効果的コミュニケーション(Effective communication)
文化や状況に応じた方法で、言語的または非言語的に自分を表現する能力。意見・要望・欲求・恐れの表明やアドバイス・援助を求めることができる。
(6)対人関係スキル(Interpersonal relationship skills)
好ましい方法で人と接触・関係の構築・関係の維持・関係の解消をすることができる。
(7)自己認識(Self-awareness)
自分自身の性格、長所と短所、欲求などを知ること。
(8)共感性(Empathy)
自分が知らない状況に置かれている人の生き方であっても、それを心に描くことができる能力。共感性を持つことで、人々を支え勇気づけることができる。
(9)情動への対処(Coping with emotions)
自分や他者の情動を認識し、情動が行動にどのように影響するかを知り、情動に適切に対処する能力。
(10)ストレス・コントロール(Coping with stress)
生活上のストレッサーを認識し、ストレスの影響を知り、ストレスレベルをコントロールする。ストレッサーに適切に対処し、リラックスすることができる。
日本では、本来の意味で使用されるケース以外に、保健衛生教育(喫煙防止や食生活など)または精神的な障害を抱える者に対するトレーニングの文脈で使用されることも多いようである。(ライフスキルという語を含んだ書籍タイトル一覧を眺めた印象にもとづく)。
参考資料
WHO. Life Skills Education in Schools,1994 (『WHO・ライフスキル教育プログラム』大修館, 1997)
文部科学省. “第3章 スクールカウンセリング/ 海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育等(CLARINET)” http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/009.htm
2. ソフトスキル soft skills
米国の経営学-マネジメント分野でのみ普及している模様。楽天的な人生態度をもてることや、対人関係をうまく調整できる能力。職務遂行に必要な知識・技能であるhard skillsと対置される概念だが、主に職場での対人関係──特に共同作業を円滑に遂行できること──を主題としている場合が多い。米国では、大学での教育内容とは考えられていないようである。
参考資料
Michael Pollick “What are Soft Skills?” Wisegeek.com http://www.wisegeek.com/what-are-soft-skills.htm
3. ソーシャルスキル(社会技能) social skill
心理学用語。対人関係を調整する能力のことだが、かなり具体的であり、人間関係を維持し、関係構築の失敗で制裁を受けないよう行動させる技能のことである。特にSocial Skill Training(SST)という分野があり、精神障害者むけの社会生活支援プログラムが組まれている。他に、小児向けの訓練プログラムが多いようである。(ソーシャルスキルという語を含んだ書籍タイトル一覧を眺めた印象にもとづく)
参考資料
SST普及協会HP http://www.jasst.net/
4. 社会人基礎力
若者の能力と職場が彼らに求める能力の間のギャップを埋めるプログラムを作るために、経済産業省が提唱しはじめた概念。2005年に経産省の下に「社会人基礎力に関する研究会」が結成され、翌年に中間報告が取りまとめられた。それによれば、三つの分類の中の12の要素として定義できる。
○前に踏み出す力(アクション)
主体性:物事に進んで取り組む力
例) 指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけ積極的に取り込む
働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
例) 「やろうじゃないか」と呼びかけ目的に向かって周囲の人を動かしていく
実行力:目的を設定し確実に行動する力
例) 言われたことをやるだけでなく自ら目標を設定し、失敗を恐れず行動に移し、粘り強く取り組む
○考え抜く力(シンキング)
課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
例)目標に向かって、自ら「ここに問題があり、解決が必要だ」と提案する。
計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
例)課題の解決に向けた複数のプロセスを明確にし、「その中で最善のもの何か」を検討し、それに向けた準備をする。
創造力:新しい価値を生み出す力
例)既存の発送にとらわれず、課題に対して新しい解決方法を考える。
○チームで働く力(チームワーク)
発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
例)自分の意見を分かりやすく整理した上で、相手に理解してもらうように的確に伝える。
傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
例)相手の話しやすい環境をつくり、適切なタイミングで質問するなど相手の意見を引き出す。
柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
例)自分のルールややり方に固執するのではなく、相手の意見や立場を尊重し理解する。
情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
例)チームで仕事をするとき、自分がどのような役割を果たすべきかを理解する。
規律性:社会のルールや人との約束を守る力
例)状況に応じて、社会のルールに則って自らの発言や行動を適切に律する。
ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力
例)ストレスを感じることがあっても、成長の機会だとポジティブに捉えて肩の力を抜いて対応する。
背景には、経済環境の変化で、従来職場で行われてきたOJTが出来なくなってきたことから、学校段階での社会人としての能力育成が求められるようになってきたことがある。経済産業省は、大学の教育プログラムに採りいれられるよう、「社会人基礎力育成グランプリ」なるコンテストを開いて普及に努めている。
参考資料
「社会人基礎力に関する研究会」中間とりまとめ / 経済産業省HP http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/torimatome.htm
「今日から始める 社会人基礎力の育成と評価」/ 経済産業省HP http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/h19reference.htm
1. ライフスキル life skills
“ライフスキルとは、日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な能力である”(WHO, 1994)。世界保健機構(WHO)が、若者の問題を解決するために必要な教育プログラムとして、1994年に提唱した。その中身は、10のスキルで構成されている(以下は文部科学省HPにもとづく)。
(1)意思決定(Decision making)
生活に関する決定を建設的に行う力。様々な選択肢と各決定がもたらす影響を評価し、主体的な意思決定を行うことにより望ましい結果を得る。
(2)問題解決(Problem solving)
日常の問題を建設的に処理する力。
(3)創造的思考(Creative thinking)
どんな選択肢があるのか、行動の結果がもたらす様々な結果について考えることを可能にし、意思決定と問題解決を助ける。直接経験しないことを考える、アイデアを生み出す力。
(4)批判的思考(Critical thinking)
情報や経験を客観的に分析する能力。価値観、集団の圧力、メディアなど、人々の態度や行動に影響する要因を認識し、評価する力。
(5)効果的コミュニケーション(Effective communication)
文化や状況に応じた方法で、言語的または非言語的に自分を表現する能力。意見・要望・欲求・恐れの表明やアドバイス・援助を求めることができる。
(6)対人関係スキル(Interpersonal relationship skills)
好ましい方法で人と接触・関係の構築・関係の維持・関係の解消をすることができる。
(7)自己認識(Self-awareness)
自分自身の性格、長所と短所、欲求などを知ること。
(8)共感性(Empathy)
自分が知らない状況に置かれている人の生き方であっても、それを心に描くことができる能力。共感性を持つことで、人々を支え勇気づけることができる。
(9)情動への対処(Coping with emotions)
自分や他者の情動を認識し、情動が行動にどのように影響するかを知り、情動に適切に対処する能力。
(10)ストレス・コントロール(Coping with stress)
生活上のストレッサーを認識し、ストレスの影響を知り、ストレスレベルをコントロールする。ストレッサーに適切に対処し、リラックスすることができる。
日本では、本来の意味で使用されるケース以外に、保健衛生教育(喫煙防止や食生活など)または精神的な障害を抱える者に対するトレーニングの文脈で使用されることも多いようである。(ライフスキルという語を含んだ書籍タイトル一覧を眺めた印象にもとづく)。
参考資料
WHO. Life Skills Education in Schools,1994 (『WHO・ライフスキル教育プログラム』大修館, 1997)
文部科学省. “第3章 スクールカウンセリング/ 海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育等(CLARINET)” http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/009.htm
2. ソフトスキル soft skills
米国の経営学-マネジメント分野でのみ普及している模様。楽天的な人生態度をもてることや、対人関係をうまく調整できる能力。職務遂行に必要な知識・技能であるhard skillsと対置される概念だが、主に職場での対人関係──特に共同作業を円滑に遂行できること──を主題としている場合が多い。米国では、大学での教育内容とは考えられていないようである。
参考資料
Michael Pollick “What are Soft Skills?” Wisegeek.com http://www.wisegeek.com/what-are-soft-skills.htm
3. ソーシャルスキル(社会技能) social skill
心理学用語。対人関係を調整する能力のことだが、かなり具体的であり、人間関係を維持し、関係構築の失敗で制裁を受けないよう行動させる技能のことである。特にSocial Skill Training(SST)という分野があり、精神障害者むけの社会生活支援プログラムが組まれている。他に、小児向けの訓練プログラムが多いようである。(ソーシャルスキルという語を含んだ書籍タイトル一覧を眺めた印象にもとづく)
参考資料
SST普及協会HP http://www.jasst.net/
4. 社会人基礎力
若者の能力と職場が彼らに求める能力の間のギャップを埋めるプログラムを作るために、経済産業省が提唱しはじめた概念。2005年に経産省の下に「社会人基礎力に関する研究会」が結成され、翌年に中間報告が取りまとめられた。それによれば、三つの分類の中の12の要素として定義できる。
○前に踏み出す力(アクション)
主体性:物事に進んで取り組む力
例) 指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけ積極的に取り込む
働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
例) 「やろうじゃないか」と呼びかけ目的に向かって周囲の人を動かしていく
実行力:目的を設定し確実に行動する力
例) 言われたことをやるだけでなく自ら目標を設定し、失敗を恐れず行動に移し、粘り強く取り組む
○考え抜く力(シンキング)
課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
例)目標に向かって、自ら「ここに問題があり、解決が必要だ」と提案する。
計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
例)課題の解決に向けた複数のプロセスを明確にし、「その中で最善のもの何か」を検討し、それに向けた準備をする。
創造力:新しい価値を生み出す力
例)既存の発送にとらわれず、課題に対して新しい解決方法を考える。
○チームで働く力(チームワーク)
発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
例)自分の意見を分かりやすく整理した上で、相手に理解してもらうように的確に伝える。
傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
例)相手の話しやすい環境をつくり、適切なタイミングで質問するなど相手の意見を引き出す。
柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
例)自分のルールややり方に固執するのではなく、相手の意見や立場を尊重し理解する。
情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
例)チームで仕事をするとき、自分がどのような役割を果たすべきかを理解する。
規律性:社会のルールや人との約束を守る力
例)状況に応じて、社会のルールに則って自らの発言や行動を適切に律する。
ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力
例)ストレスを感じることがあっても、成長の機会だとポジティブに捉えて肩の力を抜いて対応する。
背景には、経済環境の変化で、従来職場で行われてきたOJTが出来なくなってきたことから、学校段階での社会人としての能力育成が求められるようになってきたことがある。経済産業省は、大学の教育プログラムに採りいれられるよう、「社会人基礎力育成グランプリ」なるコンテストを開いて普及に努めている。
参考資料
「社会人基礎力に関する研究会」中間とりまとめ / 経済産業省HP http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/torimatome.htm
「今日から始める 社会人基礎力の育成と評価」/ 経済産業省HP http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/h19reference.htm