Triority(トライオリティ)

四十にして惑う、それがトリニータ。

拝啓 大木武様

2022-10-26 19:55:41 | トリニータ
「プレーオフなんてなけりゃオレは今ごろ代表監督やってたっておかしくないんだぞ」くらい言っても誰からも非難されないくらいにJ1昇格プレーオフに人生を狂わされた男。それが大木武。


2012年のプレーオフ制度創設から10年。これまでたくさんの監督がこの難しいレギュレーションに泣き笑いそしてドラマを創ってきた。これまでにプレーオフで複数回敗退を喫している監督はわずかに4人。大木武、ロティーナ、高木琢也、そして木山隆之だ。高木さんと木山さんは何と3度も敗退。来週岡山と対戦することになったら木山さんについても書きたい。大木さんはプレーオフ創設元年から2年連続でプレーオフ敗退。2度目のプレーオフ敗退と同時に京都の監督を退任。その後はプレーオフへの参戦を避けるかのようにJ2下位が定位置の岐阜やJ3の熊本の監督を務めた。ただその手腕に陰りはなく引き寄せられるようにまたもやJ1参入プレーオフの舞台へと引きずり出されてしまったことに運命めいたものを感じてしまう。それも10年前にこれ以上ない辛酸をなめさせられた大分トリニータが対戦相手だということに少なからず嫌な予感を覚えているのではないだろうか。


大木さんは今シーズンの熊本を見るまでもなく優秀な指揮官であることは疑いようがない。冒頭でも触れたけど代表監督の声がかかってもおかしくないくらいだとも思っている。ただその能力のわりにキャリアが今ひとつ光り輝いていないのには何か原因があるんじゃないかと思っている。もう大木さん時代の甲府がどんなチームだったかは忘れてしまったんだけど、京都、岐阜、熊本どこのクラブでも魅力的なチームを作り上げた。ただ個人的にどのチームでも大木さんに持つイメージは共通していて「流動的だけど柔軟性のないチーム」という印象。パスを多用して理詰めで崩す戦術を丁寧にチームに落とし込む手腕は見事だと思う。でもプレーオフ2年連続敗退が象徴するように一発勝負に勝てないのは、目の前の一戦に何をしてでも勝つというこだわりや柔軟性を極力排除しているからではないかと思っている。柔軟性を持ち合わせていないのではなく、自らのサッカー哲学として自分の信じたサッカーで勝ちたいという思いが強い人なんじゃないかと思っている。まあかといってそんな大それたもんがうちの指揮官にあるのかと問われたならば、口ごもってしまうくらいにはうちの指揮官のことを信頼しているわけじゃないんだけど。いずれにしてもそういう真っすぐでずっと過小評価されたままの人であってほしいという他サポの勝手な願いでしかないんだけどね。


大木さんのことをこんな風に考えているので戦術もそんなに難しく考える必要はないと思っている。ポイントと考えるのは2つ。①守備時はハイプレス②攻撃時はロングボール。まさに今シーズンのアウェイゲームそのまんまのサッカーをやれば勝てるんじゃないかな。そこで裏の裏を読んでくるようなことは大木さんには出来ないような気がする。いい意味で「自分たちのサッカー」をぶつけるだけ、マジでそれしか考えていないような気がする。ボールを握ってリズムを作り出したい熊本に主導権まで握らせないためにハイプレスでパスワークを寸断する。攻守が入れ替わると熊本も迷いなくハイプレスを敢行してくる。ここで後手を踏んだのがホームゲーム(1-2で敗戦)で、ロングボールではぐらかしたのがアウェイゲーム(2-1で勝利)。その再現を狙うだけ。そんな狙うゲーム展開にとても参考になるのが第41節仙台−熊本。そこまでロングボールを使っていたわけじゃないけど、ハイプレスでタフなゲームに持ち込み最後の最後にセットプレーで決勝点を奪って勝ち切った仙台。こんなゲーム展開にしたい。そして仙台になくうちにあるのが長沢の圧倒的な高さとサムエルの圧倒的な強さ。最低でもどちらかの先発は絶対条件だ。何が何でもハイプレスをかいくぐってやるなんて思わなくていい、ある程度前に食い付かせたらロングボールではぐらかしてやればいい。そのうち何本かでも収まればいい程度の割り切りが必要。幸いにも熊本の最終ライン3人に強さは見受けられない。どちらかと言うとサムエルの方がハマるんじゃないかと思っているから琉球戦で元気な姿を見せてくれたのはこれ以上ない朗報だ。



今シーズン2度の対戦を経て注意したい選手を何人かピックアップ。熊本の攻撃で一番恐いのはボールを握られて何となくボールサイドに寄せられてしまってからのサイドチェンジで逆サイドに1対1の局面を作られること。右の杉山直宏と左の坂本亘基のアタックはかなり強烈。特に坂本の縦への鋭さは要注意。対面は健太になると思うからここのマッチアップがキーになるかもしれないね。上の写真はどこかの記事で使ったような記憶があるんだけど、2018年のインカレでの福岡大。前列右から2番目が健太で左から2番目が今シーズンJ2のボランチの中でも一番株を上げたと言っても過言ではない河原創。昇格即4位躍進のクラブで42試合フルタイム出場という数字だけでその貢献度が分かる。ビルドアップ時のボールへの関与回数が多く間違いなく熊本のキーマン。河原が1学年上でさらに健太が1年からトップチームに絡んでいたので河原とは相当たくさんの試合に一緒に出ていると思われる。人間関係的にもここでも健太がキーとなるか。ちなみにこの試合には出場していないけど熊本の3バックのセンターに鎮座する菅田真啓も河原の同期だ。そしてレギュラーシーズンのチーム得点王は14ゴールで高橋利樹。うちは長沢が8ゴールでチーム得点王なので14ゴールは立派な数字。国士館大出身の3年目。自分が一番関東大学リーグを見ていた時期に在籍した選手なので学生時代に何度も見た選手だ。何度も見たけど正直に言ってこんなにJリーグでコンスタントに点を取れる選手になるとは微塵も思わなかった。最終学年の時に国士館大が2部だった(同期は浦和の明本)こともあってプロ入りが決まった時でさえ「へー」と思った記憶がある。前プレを頑張れてゴール前で泥臭く体を投げ出せる選手という印象だった。J2で得点を量産し始めてから高橋のプレーを見てみるとその印象とほとんど変わんないんだよね。自らのプレースタイルを磨き上げ続けてこの数字を残していることは素直に尊敬する。そのガツガツとしたところにうちのDFラインも負けないでほしい。ちなみに高校は埼玉栄高出身。サッカーでは全国的には強豪校ではない埼玉栄高だけど現役Jリーガーを4人輩出している。出世頭はもちろん町田也真人。もし也真人が間に合うのなら試合前に腹パンかまして耳元で「調子に乗んなよ」くらいのことをささやいてほしい。也真人は今シーズン熊本との対戦は2試合ともお休みしているので初対戦になるのであれば大先輩として先制攻撃をぶちかましてほしい。


決定戦は別にして、果たしてJ2の4クラブの中で勝ち上がれるのか。取り急ぎデータ。2012年に創設されたJ1昇格プレーオフ。2018年からはJ1参入プレーオフとして3回戦方式に変更。2020年と2021年は開催なし。J2クラブに限定するとこれまで行われた試合は全部で23試合。下位クラブ側から見た勝敗は以下のとおり。

10勝8分5敗

何となく分かってはいたけどいざ集計してみるとやはり下位クラブが圧倒的に勝ち越している。さらに5敗のうち2つは「お前、J2にいるのはいいにしても何でプレーオフ出てんだよ」と言ってやりたい名古屋とセレッソによるものなので、今シーズンのようにクラブの財政規模が同程度のクラブによる対戦の場合は明らかに上位クラブが不利なレギュレーションと言い切って間違いない。この数字が明らかにしたことは勝ち抜けは別にしたとして下位クラブがスコアで負けることは極めて稀であるということ。だからゴールを決めきることが出来るかというところが、試合のバランスよりも大事になってくるんだろうなと思う。もし先制点を許してしまったとしても本来なら圧倒的に優位なはずの上位クラブ側にこそ大きな隙が出来ているかもしれないという共通認識をチーム全体で持てるようにアグレッシブな姿勢を保ち続けてほしい。1点取られたとしても2点取るサッカー、2点取られたとしても3点取るサッカー。下平監督が本来目指すはずだったスタイルがここで花開くかもしれないという淡い期待は持ってもいいのかな。


クラブ創設以来プレーオフ全勝の大分(事実だけど誇大)とその監督キャリアにおいてプレーオフ全敗の大木武(事実、紛れもない事実)。次に進むのはどっちだ。
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2 コメント

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ははーん (鳥脳)
2022-10-27 15:58:01
なるほど、僕もロングボール多用で何が悪いと思ってました。大木さんはプレーオフ用に秘策を練ってくるタイプではないですもんね
Unknown (triority)
2022-10-27 20:33:28
鳥脳さん
コメントありがとうございます。
サッカーに対して純粋なままの大木さんで来てほしいですね。

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