福島大学、受験料無料化

 福島大学(福島市)が、2012年度の入学試験の受験料(正確には検定料)を無料にすることを発表した。実施済みの大学院の入学試験の受験料も無料とし、受験者には返還もするようである。2011年度は約4,200名の受験者がおり、約7,200万円の受験料収入(学部の受験料、17,000円。多くの私立大学の半額である)があったようだが、2012年度はこの収入がゼロとなる訳だな。

 

 同大学の広報資料によれば「3.11大震災及び原発事故で経済的困難に陥った被災各県の受験生が、全国のどこで避難生活を送っていても、福島大学を受験できるように支援したい」ことからの措置であるとされている。被災・罹災の有無に関係なくすべての受験者を無料とする大英断である。これはこれで素晴らしい判断であると思うが、その裏には、背に腹変えられない、大きな問題が潜んでいるのである。

 

 郡山市にある私立大学に勤務する知人に聞いた話であるが、7月に実施したキャンパス見学会への参加者(高校生及びその父母)が昨年同期の30%減であったと云う。見学者は30%減であったが、受験者となると半数以下になるのではないかと予測していると、肩を落としていた。報道によると、福島大学においてもまったく同じ状況で、8月に実施したオープンキャンパス(キャンパス見学会と同様の広報活動)の参加者が前年実績の1,100名減、3,200名であったとのこと。

 

 福島市辺りの放射線量は1.2マイクロシーベルト毎時程度ある。これは平常時の0.040.06程度の2030倍である。計画的避難区域の線量と比べれば低いが、長期間浴びたい線量でないことは間違いない。そんな地域に、福島県外から受験者・入学者が来るだろうか。県内の高校生にしても、県内の大学を敬遠し首都圏等他地区の大学への進学が増えるのは間違いないだろう。受験者半減だけなら良いが、受験者半減と云う事は入学者半減ともなりかねないのである。

 

 つまり、福島大学は受験料収入よりも入学者確保を選択したのである。勿論郷秋<Gauche>はこれを責める気はない。親方日の丸の「国立大学」から「国立大学法人」に移行して久しい今、「国大」であっても経営の視点なしには成り立ち得ないのだから。

 

 しかしだ、福島を代表する福大が入学試験の無料化を打ち出したと云う事は、県内の他の公立・私立大学への波及は必至。それでも定員を充足できない(あるいは定員充足率が「更に」低下した)と云うようなことになれば、風評により受験者・入学者が減少したとして、東電への賠償金請求へと動くことになるのだろうな。何ともはや。

 

 

 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、830日に長野県の霧ヶ峰八島ヶ原湿原で撮った一枚。野薊(のあざみ)とその蜜を吸う蝶。ベニシジミの仲間のように思えるが・・・。植物の名前は多少は覚えたが、相変わらず昆虫の名前はさっぱりの郷秋<Gauche>である(^^;

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