10年間同じエンジンって、いったい・・・

 FIAが、F1用エンジンの開発を今後10年間禁止することを発表した。

 シャーシとタイヤの性能が向上することで、たとえ同じエンジンを使っても、F1マシンは速くなり続ける。しかし、その場合の速くなるための主たる要素である空力とタイヤのコンパウンド性能は、少なくとも200Km/h以上で走行する場合に有効な技術であり、一般公道を走る市販車の性能向上には、おおよそ関係にないレベルでの話である。

 翻って、F1のエンジン性能向上のために開発された技術は、比較的簡単に市販車のエンジンにフィードバックする事ができる。それは、燃費の向上、馬力やトルクの向上、耐久性の向上などであり、一般消費者にも大いに歓迎される技術である。

 だからこそ、世界の名だたる自動車メーカーはこぞってF1に参戦し、自社の技術力をアピールするわけなのだが(ホンダとトヨタは、少なくともここ数年、アピールできていない。アピールできているとすれば、ドイツの2つのメーカーと、フランス某社に比し、自社の技術が劣っていることである。つまり資金の無駄遣い)、最も重要なエンジンの優秀性をアピールできないとなると、幾つかのメーカーは、F1から撤退し、他のカテゴリ、つまり自社のエンジン技術の優秀さを判り易い形で表現できるカテゴリでのエンジン供給にシフトする可能性があるのではないだろうか。

 ただし、先に記したようにシャーシ技術の向上で好タイムをたたき出すことは可能であるから、現在は禁止されているようだが、市販車へのフィードバックが可能な技術、つまり、高度なトラクションコントロールやアクティブサスペンション、AWDなどを解禁することで、大手メーカーをF1に繋ぎ止めることは可能かも知れない。

 いずれにしても、F1が真に世界最高峰のモータースポーツであることを目指すのならば、エンジンの開発を凍結するなど、もっての他。具の骨頂である。エンジンについては、むしろ次々に高いハードルをもうけて、エンジンサプライヤー(現在ではエンジン、シャーシ共に製作するコンストラクターが多いが)を競わせるべきである。

 例えば、燃費。1980年代のF1用ターボエンジンは、わずか1.5Lの排気量から予選ではなんと1,500馬力、本選においてもさえも1,000馬力を絞り出していたが、ターボエンジン最後の1988年には、305Kmをわずか150Lのガソリンで走り切ることを要求されていた。1,000馬力のエンジンで激しい加減速を繰り返し、300Kmオーバーでレースをするマシンの燃費が2Km/Lだったのである。この時に開発されたターボ技術、省燃費技術は速やかに市販車用エンジンにフィードバックされている。

 燃費だけではなく、排出ガスの清浄性を求めても良いし、静寂性を求めても良いだろ。また、現在はレギュレーションで禁止されているロータリーエンジンなどを認めても良いし、ル・マン同様、ディーゼルエンジンの参入を認めるのもよし(現在のF1において禁止されているのかどうかは未確認)、バイオ燃料使用のエンジンや電気モーターとのハイブリッドエンジンの参入を促しても良いだろ。

 つまり、あらゆる形式のエンジンの利用を認める。その代わりに、市販車に速やかに導入することが可能な技術的ハードルを設けるのである。

 このような厳しい技術的課題を解決できるのは、少数のメーカーに限られる。かつてのコスワースのようなエンジンがF1を走ることはなくなるだろうが、下位のカテゴリでその力を発揮できる仕組みを作ってあげればよい。F1には、「世界最高峰」の名に相応しい技術力持ったメーカーだけがトライすればよいのである。


 今日の1枚は、白粉花(おしろいばな、別名夕化粧)。夏の花かと思われがちですが、実は秋になってもまだ咲いています。夏の間は早朝に咲き、日が高くなる頃には萎んでしますが、秋になると、昼を過ぎても花は萎まず、朝寝寝坊の郷秋<Gauche>もその花を楽しむことができます。
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