レノボ・AT&TウィリアムズDriver's Day(その3/最終回)

 片山右京、中嶋一貴が共に訴えたのは、F1が如何にハイテク化したとしても、あくまでもF1は人がマシンをドライブするスポーツであるということ。片山は、その現役時代、モナコでのレースを振り返り次のように語った。

 当時は、今のように、ステアリングから手を離さなくても変速が出来るパドルシフトではなく、市販の乗用車と同じH型のシフトだったので、変速のたびに右手をステアリングから離すわけだが、モナコのようなコースでは、右手はシフトノブを握りっぱなし、つまり、ステアリングはほとんど左手のみで操作していた。そのため、左手の指がステアリングを握ったまま固まってしまい、レースが終わってマシンを降りる時には、左手の指を、右手で一本ずつステアリングから引き離さなくてはならなかった。

 パワーステアリングもパドルシフトもない時代、片山はコックピットの中で、文字通りマシンと戦っていたのである。

 中嶋一貴は、GP2時代からパドルシフトシフトであり、片山が経験したような体力的はストレスを感じることはないというが、1レースで2-3kgも体重が落ちるF1は、やはりスポーツであると共に、レースの戦略を常に考えながら走る事が求められる、知的スポーツの要素が強くなってきていると語っていた。

 これから10年、もしFIAの発表の通りエンジンの開発が全面的に禁止されるのならば、シャーシの性能と共にますます重要になるのがドライバーの運転技術と戦略的思考であろう。FIAが、もし、その点に着目してエンジンの開発禁止を打ち出したのであれば、大いに評価しなければならないが、どうもそれだけではないらしいところに、ファンはFIAに対する不信感を募らせているのだろうな。

 最後に、レノボがウィリアムズに提供しているITソリューションについて。

 レノボは、ウィリアムズにマシン設計のためのスーパーコンピュータを提供している。このスーパーコンピュータは、風洞実験で得られたデータの解析に用いられ、各サーキットのデータを元にして、最適な空力デバイスの設計に利用されている。

 また、マネジメント部門を含め、500名と言われるウィリアムズのスタッフに対し、同数以上のPCが供与されている。供与されているPCは、レノボブランドではなく、ThinkPadである。そして、このThinkPadは、特にF1チームであるウィリアムズのためにカスタマイズされたものではなく、市販されているものと同一スペックであり、このベーシックなマシンで、バーレーンやマレーシアといった過酷な環境の中でも十分にその機能を発揮しているという。

FW29の横にはLenovoと大書してあるが、チームに提供されているPCは、実はIBMから引き継いだブランド、ThinkPadなのである。果たして、ウィリアムズのスタッフが使うPCがLenovoブランドになる日はくるのであろうか。


 抽選による一般の招待者は300名とのことであったが、その他、上顧客や報道関係の席もたっぷりと用意されており、500名程が集まっていたように見えた。
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