ブツ撮り

 例えば、オーディオ製品だとか、時計だとか、カメラだとか、物、とりわけ製品のカタログ写真を撮ることを「ブツ撮り」という。地味だけれど、すごく難しく、奥が深いらしい。

 2、3年前に、ひょんなことから、DENON(デノンではなくデンオン)の社内写真家として、DENONブランドのアンプなどのカタログ写真を撮っていた方と飲む機会があり、高級アンプのメタリックなパネルをカタログ上で表現するのが如何に難しいか、仔細に聞かせていただいた。

 アンプの写真が難しいなら、カメラのカタログ写真が更に高い技術と芸術性を必要とするであろうことは、容易に想像できる。だって、そのカメラのカタログを見るのは、アマチュアであったとしても、写真には一家言ある方ばかりなのだから。

 さて、昨日の記事に添えた写真である。お話しになりませんな。

 写真撮影技術の前に、まず、「ポーズ」がだめ。FM3AとF3、2台のカメラの並べ方が美しくない。F3の方のレンズの露出計連動爪(通称カニの爪。レンズの絞り(F)値をカメラボディに伝えるためのNikkor特有のものだが、1977年以降登場のボディには必要がなくなっている)が上を向いていないのも、だめ。

 この爪はF値が5.6の時に真上を向くようになっているが、昨日F3に着けていたNikkor 50mm F1.4では向かって左に傾いている。おそらくは絞りが11か16になっていたのだろう。Nikkorレンズを(「で」ではない)撮る時には、絞りは5.6の位置、つまりカニの爪が真上を向いているのが、セオリーだ。

 時計の写真にも勿論「お約束」がある。お気づきだとは思うけれど、写真になった時計の針は、必ず10時10分を指している。クルマのカタログ写真を仔細に観察すれば、タイヤのエアバルブが下に来ていることに気づくだろ。ピアノ(勿論グランドだ)のカタログを見れば、どのピアノも3つのキャスターの向きが常に一定であることにも気が付かれることだろ。

 そんなわけで、急に上手くなるわけはないんだけれど、今日もCarl Zeiss Planer T* 1.4/50mm ZFを着けたFM3Aを撮ってみた。レフ板を使い工夫はしてみたけれど、ストロボ1灯で撮るのはやはり難しい。でも、昨日の写真よりは、少しはましだろうか。

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