矢祭町「もったいない図書館」(その2)

 寄贈された本は約30万冊。人口7千人の町に30万冊ということは、町民一人当たり42.86冊ということになります。この数字が多いのか少ないのか見当も付かないとおっしゃる方も多いのではないかと思います。って、かくいう郷秋<Gauche>もその一人。ですので、早速調べてみました。

 調べてみたのは矢祭町と同じ福島県の郡山市。郷秋<Gauche>の実家のある、福島県の中核都市ですが、この郡山市の図書館の蔵書数は80万冊。人口が34万人ですから、市民一人当たりの蔵書数は2.35冊。矢祭町の1/20というところですが、地方都市としては標準的なところのようです。比較対象として、学生数1万人程度の大学の図書館の蔵書数を調べてみると、80万冊程度というところが多いようです。学生一人当たり80冊ですね。

 矢祭町のもったいない図書館の蔵書数は、大学の一人当たり80冊の半分、標準的な地方都市の図書館の20倍というのがその蔵書規模ということになります。郡山市の基準で行けば矢祭町の蔵書は16,000冊で良いことになるわけですから、予算節約のために町長や教育長自ら庁舎内の掃除を行っているという(失礼ながら)貧乏町としては破格の規模ということになります。

 仮に、蔵書1冊当たりの単価(発売時)が3千円(所謂豪華本の比率が相当高いように思えましたので、平均単価は更に高いものと思われます)だとしても30万冊ですから9億円相当ということになります。矢祭町の一般会計予算が27億円ですから、その三分の一規模の予算を一気に投入したことになりますが、まっ、有り得ない図書予算ということですね。

 電動の書架です。この手の書架をご覧になったことのない方にはちょっと説明が難しいのですが、書架と書架の間の通路は無く、両面式の書架がぎっしりと並んでいます。写真は書架が閉じた状態です。本を取り出す場合には、見たい本のある書架(当然NDCで分類されています)の通路側側面にあるボタンを押して書架を移動させて隙間を作ってから人が奥に入るようになっています。この規模の書庫が3つあります。

 量的充実はわかったけれど、質はどうなの?ということになると、これも凄い。国内外の著名作家の個人全集、全30巻揃い、などが物によっては5セット、6セットあるのですから、ホントに凄いのです。個人宅で持て余し気味になっていたのではないかとは思いますが、全巻揃いで10万円、20万円などという画集、写真集も複数セット揃っています。
 
 人気作家の単行本、全集も豊富に揃っているようです。カウンターの近くでは陳舜臣氏の作品が「フェア」よろしく展示されていましたが、ざっと見たところでは、代表作はほぼ新品状態のものがすべて揃っているようで、更に通常の書架にも同じ本が複数配架されておりました。

 個人的には、相当多いのではないかと思っていた文庫・新書の類は意外と少なく、比較的高価な単行本、全集が多い印象です。当初、児童図書が少なかったようですが、そのことをHP呼びかけたところ海外で出版された絵本を含め、相当数の寄贈があったとのことでした。

 書架と書架の間に人の入ることの出来る通路部分をつくったところ。10数列ある書棚も、書棚と書棚の間の通路は2箇所ほど。間に必ず通路が必要になる固定式書架と比較すると、同じ床面積で2倍もの書籍を収納することが出来ます。ここは百科事典の棚。思いのほか百科事典の寄贈は少なかったようですが、それにしてもインターネット時代の今日、利用される事があるのかどうか・・・。(明日に続く)

矢祭町、矢祭もったいない図書館関連Site & blog
矢祭町役場
矢祭町役場(図書の寄贈のお礼)2007年6月現在、新たな寄贈の受付はしていないとのこと。
矢祭町Wikipedia
タダで図書館を作る方法(「郷秋<Gauche>の独り言」内の記事)
タダで図書館を作る方法(続報)(「郷秋<Gauche>の独り言」内の記事)
矢祭町図書館、1月14日開館(「郷秋<Gauche>の独り言」内の記事)
矢祭町「もったいない図書館」(「郷秋<Gauche>の独り言」内の記事)
矢祭町「もったいない図書館」(その2)(「郷秋<Gauche>の独り言」内の記事)
矢祭町「もったいない図書館」(その3)(「郷秋<Gauche>の独り言」内の記事)
那須屋(矢祭町にある田舎宿屋)(「郷秋<Gauche>の独り言」内の記事)
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