西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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アンディヤナ 第四部 XXV-2

2012年01月30日 | サンド研究
第四部 XXV


刻々と転落してゆきながら,自分をその転落に引きずり込んでいくこの王政を、彼は密かに呪い軽蔑し始めていた。闘いが開始する前に恥をかくことなく離党できるものならしてしまいたいと彼は考えた。彼はしばらくの間、両方の陣営の信頼を得ようとして、信じられないほど頭を使って努力してみた。当時の反政府派は、難なく新たな支持者を入党させていた。反政府派は新党員を必要としていた。党員となる覚悟を示す証拠をほとんど要求しなかったお陰で、彼らは相当数の新党員を作りだしていた。おまけに彼らは知名度のある人物たちの支持を嫌うことがなかった。新聞には、連日、巧みな言葉がちりばめられ、古い王党派の王冠から一番目立つ最も貴重な人物たちを離脱させようとしていた。レイモンはこのような知名度を餌食とした政治的な運動にだまされはしなかった。しかし、彼はそれを斥けもしなかった。自分が彼らの役に立つことを確信していたからであった。一方、王党派の闘志たちは、彼らの状況が絶望的になるにつれて、ますます焦りをみせ寛容さを失っていった。深く考えることもなく不用意にも、自分たちの隊列から最も有益な支持者を追放してしまったのである。彼らは間もなく、レイモンに対する不満と不信感を表明し始めた。レイモンは大いに困惑し、名声を自分の存在の主な特権と考えそれに執着していたので、ちょうどおあつらえ向きに重いリュウマチにかかったのをよいことにして、他に方法もなく一時的にすべての種類の仕事を断念し、母親とともに田舎に引退することになったのだった。

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