西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
本ブログ記事の無断転載および無断引用をお断りします。
 

『アンディヤナ』第四部:A1

2012年01月09日 | サンド研究

さて、フランスにあれほど多くの物事の乱れをもたらした8月8日の新内閣の誕生は、レイモンの物心両面の安泰に激しい一撃を加えることとなった。ラミエール氏は、一日で勝利した盲目的な虚栄心の持ち主たちの属する階級ではなかった。

彼は政治を自分のすべての思想の中心に置き、自分の将来のすべての夢のなかでも基盤をなすものとしていた。国王が巧みに譲歩する道を選択することによって、貴族の家柄の存続を確かなものにしている均衡が今後もまだ長いこと維持されることになるだろう。そのようなことを彼は密かに期待していたのだった。ところが、ポリニャック公の出現が彼の期待を絵空事に終わらせてしまった。

レイモンは、ゆく末を遙か先まで見通していた。彼は新たに訪れた世界で顔が売れすぎていたために、政府の一時的な勝利に対して警戒心を抱くことがなかった。彼は自分の運命すべてが王政の運命とともに揺らいでいること、そして自分の財産が、恐らく自分の命までがもはや一本のか細い糸につながっているにすぎないことを理解した。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画の中のフランス文学】 | トップ | Soulever deux lièvres »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

サンド研究」カテゴリの最新記事