電脳筆写『 心超臨界 』

人は自らの信念の産物である
( アントン・チェーホフ )

日本史 鎌倉編 《 信頼関係を消滅させた徳政令——渡部昇一 》

2024-05-10 | 04-歴史・文化・社会
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金を貸す人がなくなっては、かえって困る人があるというところで、利子というものが発生した。高利は人の弱みにつけこむことであるが、無利子は人の好意につけこむことになる。徳政は、まったく文字どおりの鎌倉御家人に得をさせてやるために、彼らに金を貸した人の好意を無にしたことになる。


『日本史から見た日本人 鎌倉編』
( 渡部昇一、祥伝社 (2000/02)、p67 )
1章 鎌倉幕府――近代国家意識の誕生 = 元寇が促した「一所懸命」からの脱却
(3) 楠木正成――日本型「大義名分」の発明

◆信頼関係を消滅させた徳政令

さらに、これから2年後の永仁5年(1297)には、幕府はいっそう抜本的な経済政策を打ち出した。これは鎌倉御家人の身分と所領の保護救済を目的とするために、経済法則も何もすべて無視するという強引なもので、いわゆる「永仁の徳政」と呼ばれるものである。

これには三つの柱となるものがあった。

その第一が、越訴(おっそ)の、重ねての停止宣言である。裁判の遅延がひどく、それが、さらに裁判不信を生んで、裁定にすぐに服さずに越訴するので、鎌倉幕府は音を上げたのである。それで、ともかく現在争っているもの以外は、いっさいの越訴も停止してしまうということで、一種の現状維持宣言を出してしまった。

このように訴訟がこれ以上増えないようにしたうえで、第二番目の方針として、御家人の所領の質入や、これを流すことや、売り払うことをいっさい停止させ、買った所領はもとの持ち主に返させたのである。

ただ、買い主も御家人であり、それについて幕府の認可を得ていたり、あるいは買ってから20年以上経っているものは例外とした。これは御家人同士の間の話であるから、一般の者が買った場合は、買ったほうはみな返さなければならないことを意味した。御家人の得になる政令であるから徳政と言われるようになったのである。

第三には、貸した金銭に対する利子は富者をますます富ましめ、貧弱者をさらに貧乏にするということで、利子を廃止した。ただ土倉(どそう)(質屋)に質入れをして金を借りることは認めた。シェイクスピアの『ヴェニスの商人』ではないが、土地を基礎にした支配者たちは、甚だしく利子を憎んだのである。

西洋では、中世に金貸しをして利子を取るのは、ユダヤ人だけに許されていたわけであり、そのためユダヤ人は憎まれ、しばしば迫害されたのであるが、結局利子はなくならなかった。迫害する側がユダヤ人に借りなければならないことが起こるのだから、永続きするわけはない。しかも日本人同士だから、ユダヤ人を迫害するように簡単に迫害できるわけもないし、国外追放もできない。この法令があまり効かなかっただろうということは、すぐに予想されるであろう。

たとえば、金の必要があって刀を質に入れて、つまり土倉に預けて金を借りる。何ヵ月か何年かのちに、金の工面がついてそれを返して、自分の刀を返してもらう。お金を貸した人は、その間にそのお金を利用することができないから、実質的には、その金を貸した人は損をしていることになる。

特別の好意を持った親類同士、友人同士なら、そういうこともあるだろうが、だいたいにおいて金を貸す人はなくなる。金を貸す人がなくなっては、かえって困る人があるというところで、利子というものが発生した。

高利は人の弱みにつけこむことであるが、無利子は人の好意につけこむことになる。徳政は、まったく文字どおりの鎌倉御家人に得をさせてやるために、彼らに金を貸した人の好意を無にしたことになる。
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