多くの日本国民が、日本国憲法の、それも9条のおかげで平和が守られたと素直にそう思っています。理性では、軍隊は必要だと理解していたとしても、世界の厳しい現実からあえて目をそむけています。なぜなら、そのほうがラクだからです。そして、この「ラクでいい」という発想こそ、GHQが推進した精神劣化政策が見事に成功したことの一例です。 . . . 本文を読む
ともあれ、女性宮家が女系天皇につながる危険性があるというのは、生まれたお子さんがお相手の家の子であり、その方が天皇となると女系天皇になるからだ。では、今回の「皇女」はどうなのかというと、結婚されてもご夫婦で公務を行うわけだから、半分皇室に残っておられるような存在である。そうこうするうちに、そんな中途半端な状態はよくない、旦那さまともども、皇籍復帰してもらおうではないかという世論が高まるだろう。となれば、「皇女」という制度は女性宮家と何ら変わるところがない。 . . . 本文を読む
学術会議の声明は、侵略を未然に防ぎ、万一の有事には敵を撃退する防衛力、抑止力を整える意義を否定するのと変わらない。その一方で学術会議は、科学技術の分野でも「軍民融合」路線を進める中国の科学技術協会と、協力促進の覚書を結んでいる。自国の防衛省との協力に反対し、中国人民解放軍の強化に取り組む同国の科学技術機関とは不用心に協力を進めていいものか。 . . . 本文を読む
日本では「日本は悪で、ソ連を含む戦勝国は正義だ」とする戦勝国史観こそが国際社会の常識だと主張する歴史学者が多いのですが、バルト3国やポーランドではこの歴史観は通用しません。「お前らは何を言っているのだ。ソ連のスターリンやアメリカのルーズヴェルトが正義なわけがないだろう。ルーズヴェルトはヤルタ会談で俺たちの自由をスターリンに売ったのだぞ」と鼻で笑われるだけでしょう。 . . . 本文を読む
ターフとは「トランス排外主義的ラディカルフェミニスト」を意味する英語の頭文字の侮蔑語だが、世界各地で「ターフ狩り」と称すべき暴力事件が起きている。19年8月、カナダ・バンクーバーのレイプやDV(家庭内暴力)に対応する女性シェルタ―が破損された。生まれつきの女性だけを受け入れていたため、「トランス女性(身体は男性だが、女性と主張するトランスジェンダー)は女性だ」とのスローガンが書き込まれ、「ターフを殺せ」などと落書きされた。 . . . 本文を読む
日本の国民性を蔑(さげす)み罵ったものは決まって日本に定住し、見下している国民を顧客として自分の作品を売りつけ、それに心酔した享受者(きょうじゅしゃ)は我こそ民衆から抜きんでた知識階級なりと自己満足を楽しんだ。一般に釜は食品を投げ入れて煮るための用具だが、饂飩を湯掻(ゆが)く釜には湯しか入っていない。湯(ゆ)ぅだけ、と嗤笑(わら)う。我が国を罵ってみずから高しとする著作家と読者の系列が、戦後に進歩的文化人を生みだす源泉となったのである。 . . . 本文を読む
母の胎内にある時は、臍の緒というもので栄養を吸収して育って、そして外に出るとその臍の緒を切って、その痕跡が臍になるのですから、明らかに臍というものは、戦後の憲法流に言いますならば、伝統の象徴であります。臍のある限りは我々に歴史・伝統というものがあるということであります。ところが、その大事な歴史・伝統というものを目の敵のように疑惑したり、否定したりする。それを称して「臍のない人間」という。いわゆる進歩的文化人などといわれる人々に、この臍なし人種が非常に多いのであります。 . . . 本文を読む
日本の近代史を批判したり弾劾したり嘲弄(ちょうろう)したりわが国を蔑(ないがし)ろにした論客は無数にいます。しかし、近代日本の達成を情(なさけ)容赦なく零(ゼロ)と決めつける、これほどまでに冷酷な裁定は、ひとり大塚久雄の比類なき独創でありましょう。1章でも述べたとおり、「近代科学成立の基盤たる合理性も見出されない」という峻厳きわまる断罪は、典型的な一例です。 . . . 本文を読む
私は、自分の思うところにひたすら熱心に行動する人間には好意を持つ。そして、口先だけで実行を伴わない人間は軽蔑する。だから、大江が天皇制廃止こそが日本を幸福に導く道であると信じるのは勝手だ。それなら、粉骨砕身おやりなさい。身を粉にして日本国民に語り、訴えかけ、堂々の論陣を張り、天皇制が顔色をなくし退位すると言い出すまで、とことん追い詰めてもらいたい。しかし、大江はそれは一切やらない。少なくとも国内ではやらない。そして、外国へ出掛けていって、それを喋(しゃべ)り立てる。 . . . 本文を読む
ここに大江健三郎の企んだ嘘があります。彼が唱えているのは献金論であり奉納論なのです。それを賠償という言葉にすりかえたのが、彼一流の詐術(トリック)なんですね。この場合、事柄が賠償ではありませんから、相互に話し合うわけにもいかんでしょう。したがって、金額は日本側で決めなければなりません。大江健三郎の案では、それはいくらなんでしょうか。どれほど出したら万事解決ということになるかを、大江健三郎は算出し公表する義務があります。 . . . 本文を読む
50年以上まえの映像(イメージ)を現代にかぶせて見る坂本義和は、日本が途上国から、先方が希望し納得する価格で、鉄鉱石をはじめとする資源を買っている、という通常の商業行為が、どうにも理解できないんですね。途上国のほうこそ、先進国が資源を買ってくれなければ経済が成りたたないので、積極的に売りたいと願っているという現実も、これまた完全に視野の外です。彼には、適正価格による「購買」という概念がなく、それを「支配」というおどろおどろしい言葉にわざと言い換えます。なんとも、しつこい日本への憎しみですね。 . . . 本文を読む
向坂逸郎においては、資本主義は必ず何度も戦争する、というひとつおぼえの教条(どぐま)が頭にあるだけなんですね。だから、その信ずるところにしたがって、「三度(みたび)世界大戦が起こる」と荘重に予言あそばすわけです。資本主義はたえず戦争を惹き起こす。それに対して、共産主義は世界に完全な平和をもたらす、という根拠のない思いこみだけで議論したつもりになっているのですから、なんとも手のつけようもない石頭です。共産主義の教科書でおぼえたご託宣を、そのまま飽きずに繰り返している〝すりきれた音盤(レコード)″みたいな人でした。 . . . 本文を読む
いっとき共産主義者が唱えた迷文句に、「帝国主義国(自由経済諸国を指す)が核実験でまきちらす灰は黒く汚れているが、共産主義国が核実験で生みだす灰は白く清らかである」という抱腹絶倒の珍論がありました。しかるに竹内好は百尺竿頭(ひゃくしゃくかんとう)一歩を進めて、アメリカやソ連が保有する核兵器は核戦争の可能性をはらんでいるが、北京政府が持つであろう核兵器は、これだけは例外的に格別に、核戦争を防ぐ力になる、と保証したわけです。 . . . 本文を読む
昭和56年、ソ連がまだ健在であった時に執筆されたソ連従属論には一片のおふざけもなく、文章を一貫する真面目な調子から見て、完全に本気で真剣であること疑いを容れる余地がありません。そして、はっきりと意識的に歴史上の事実を巧妙に隠蔽し、日本国民を欺きながら説得しようと、舞文曲筆(ぶぶんきょくひつ)(文辞をもてあそび、事実を曲げて書くこと)の努力を重ねています。このとき加藤周一はなにがなんでも読者を言いくるめようと努めていました。 . . . 本文を読む
当時の『思想』は泣く子も黙る、葵(あおい)のご紋章の入った印籠でした。そういう時代のまっただなかにおいて、久野収は、俺は『思想』の編集顧問なんだぞ、と学者や評論家を恫喝したのです。文壇に確乎たる地位を占めていた伊藤整であっても、『思想』に書かせるかどうかの判断は久野収の胸三寸にあるのです。いわんや、これからなんとかして『思想』に拾われたいと願っている論壇二軍の大勢に対して、久野収のこのなにげない一言は、電流のように行きわたったでしょうね。 . . . 本文を読む