【幸せと平和を願う人々の心が臨界質量を超えるとき世界が変わる】
ロンドン大学名誉教授・アーサー・ミラー氏は、ピカソの「アビニョンの娘たち」とアインシュタインの相対性理論。技術と科学の分野で世界に大きな影響を与えた2つの創造的作品の誕生には相通ずるものがあると主張する。
美学上、2つの創造に共通するのは対称性に対する審美眼。アインシュタインが、当時の電磁気の理論が観測する人の視点によって異なる2つの説明を与える非対称性を嫌い、普遍的な原理を求めたのに対し、一方のピカソは、厳密な対称性など存在しない非対称な現実の世界を極めて魅力的に実現したという。
芸術と科学は、人間でいえば、男と女。磁石でいえば、N極とS極。あるいは陰と陽の関係にあるともとれる。私には二極の関係というよりも、ここに宗教が加わり、三極の関係にあるように思えてくる。
ニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art, New York)は同館が所蔵する「アビニョンの娘たち」へのコンサベーション(修復)工程をWebで公開している。ピカソのキュビズムの先駆けとなった「アビニョンの娘たち」の画像を見ることができると同時にコンサベーションについても学ぶことができる。
http://moma.org/collection/conservation/demoiselles/index.html
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「『アトリエは実験室だ』とピカソは言った。逆に、実験室は芸術
家のアトリエのようなものになるはずだ」
ピカソの「アビニョンの娘たち」とアインシュタインの相対性理論。技術と科学の分野で世界に大きな影響を与えた2つの創造的作品の誕生には相通ずるものがある。こう主張するのは、このほど開いた次世代文化フォーラム(国際文化交流推進協会、日本経済新聞社主催)で来日したアーサー・ミラー名誉教授。現代絵画革新の先駆けとなった作品とニュートン以来の物理学を一変させた理論に共通するものは何か。
「2つの創造は美学上の共通項によって支えられている。それは対称性に対する審美眼だ。アインシュタインは当時の電磁気の理論が観測する人の視点によって異なる2つの説明を与える非対称性にいらだちを感じ、観測者の視点によらない普遍的な原理を考えた」
「一方、私たちが生きている現実の世界では厳密な対称性が崩れており、ピカソはその非対称性を極めて魅力的に実現したといえる」
――2つがほぼ百年前の同じ時期に誕生していることをどうみる。
「特殊相対論は1905年、『アビニョンの娘たち』は07年。この時代はアバンギャルド(前衛)運動の影響が大きかった。写真や映画などの発明、非ユークリッド幾何学やエックス線といった科学上の発見が芸術や科学の古い枠組みに挑戦した時代で、知識人の多くが新しい思想や技術に関心を抱いていた」
「ピカソには数学者の友人がおり、四次元の幾何学に興味を持っていた。バイオリン演奏が趣味のアインシュタインにも芸術論を交わすサークルがあった。芸術と科学の枠を超える知的な刺激が創造の原動力になった」
――百年後の今、芸術と科学はまったく異質のものになったのでは。
「再び近づいている。コンピューターアートはその表れ。アーティストでありサイエンティストでもある人が現われるだろう。レオナルド・ダ・ヴィンチのような人が登場するかもしれない」
――そのために何が必要か。
「例えば科学者の卵が絵を学び、芸術専攻の学生が科学論文にふれる。そうした訓練を通じて共通の言葉・理解が生まれる。技術者の中には変わり者と言われる人もいるが、彼らの仕事には芸術的な要素があり、アートとの融合でもっと斬新な仕事ができると思う」
(聞き手は 科学技術部長 滝順一)
「かがくCafe――芸術と科学 再び接近」ロンドン大学名誉教授・アーサー・ミラー
2006.09.17 日経新聞(朝刊)
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ロンドン大学名誉教授・アーサー・ミラー氏は、ピカソの「アビニョンの娘たち」とアインシュタインの相対性理論。技術と科学の分野で世界に大きな影響を与えた2つの創造的作品の誕生には相通ずるものがあると主張する。
美学上、2つの創造に共通するのは対称性に対する審美眼。アインシュタインが、当時の電磁気の理論が観測する人の視点によって異なる2つの説明を与える非対称性を嫌い、普遍的な原理を求めたのに対し、一方のピカソは、厳密な対称性など存在しない非対称な現実の世界を極めて魅力的に実現したという。
芸術と科学は、人間でいえば、男と女。磁石でいえば、N極とS極。あるいは陰と陽の関係にあるともとれる。私には二極の関係というよりも、ここに宗教が加わり、三極の関係にあるように思えてくる。
ニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art, New York)は同館が所蔵する「アビニョンの娘たち」へのコンサベーション(修復)工程をWebで公開している。ピカソのキュビズムの先駆けとなった「アビニョンの娘たち」の画像を見ることができると同時にコンサベーションについても学ぶことができる。
http://moma.org/collection/conservation/demoiselles/index.html
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「『アトリエは実験室だ』とピカソは言った。逆に、実験室は芸術
家のアトリエのようなものになるはずだ」
ピカソの「アビニョンの娘たち」とアインシュタインの相対性理論。技術と科学の分野で世界に大きな影響を与えた2つの創造的作品の誕生には相通ずるものがある。こう主張するのは、このほど開いた次世代文化フォーラム(国際文化交流推進協会、日本経済新聞社主催)で来日したアーサー・ミラー名誉教授。現代絵画革新の先駆けとなった作品とニュートン以来の物理学を一変させた理論に共通するものは何か。
「2つの創造は美学上の共通項によって支えられている。それは対称性に対する審美眼だ。アインシュタインは当時の電磁気の理論が観測する人の視点によって異なる2つの説明を与える非対称性にいらだちを感じ、観測者の視点によらない普遍的な原理を考えた」
「一方、私たちが生きている現実の世界では厳密な対称性が崩れており、ピカソはその非対称性を極めて魅力的に実現したといえる」
――2つがほぼ百年前の同じ時期に誕生していることをどうみる。
「特殊相対論は1905年、『アビニョンの娘たち』は07年。この時代はアバンギャルド(前衛)運動の影響が大きかった。写真や映画などの発明、非ユークリッド幾何学やエックス線といった科学上の発見が芸術や科学の古い枠組みに挑戦した時代で、知識人の多くが新しい思想や技術に関心を抱いていた」
「ピカソには数学者の友人がおり、四次元の幾何学に興味を持っていた。バイオリン演奏が趣味のアインシュタインにも芸術論を交わすサークルがあった。芸術と科学の枠を超える知的な刺激が創造の原動力になった」
――百年後の今、芸術と科学はまったく異質のものになったのでは。
「再び近づいている。コンピューターアートはその表れ。アーティストでありサイエンティストでもある人が現われるだろう。レオナルド・ダ・ヴィンチのような人が登場するかもしれない」
――そのために何が必要か。
「例えば科学者の卵が絵を学び、芸術専攻の学生が科学論文にふれる。そうした訓練を通じて共通の言葉・理解が生まれる。技術者の中には変わり者と言われる人もいるが、彼らの仕事には芸術的な要素があり、アートとの融合でもっと斬新な仕事ができると思う」
(聞き手は 科学技術部長 滝順一)
「かがくCafe――芸術と科学 再び接近」ロンドン大学名誉教授・アーサー・ミラー
2006.09.17 日経新聞(朝刊)
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“思い”を他者に託して形にするって、本当にむずかしいんだなって、今回のフォーラムで勉強しました(初ぷろでゅーすでした)。来年はもっともっとがんばって、もっと面白いものをつくるので、またこりずに来て下さい。
ちなみに、アーサーさんは本当に素晴らしい人格者でした。今回のフォーラムのミッションを唯一シェアしてくれた、“同士”みたいな存在でした。日本の社会にもこんな大人がいてくれたらなってこころから思います。
コメント、ありがとうございます。
“思い”を他者に託して形にする、ということはとても難しいことなのでしょうね。更なるスパイラル・アップを願っています。
私も、アーサー・ミラー教授に会いたくなってしまいました。