年に一つくらい使い慣れた薬が生産中止になる。効果がなくなったわけではなく、利が薄くなったかあまり売れなくなったか・・が理由だと推定する。勿論、代替えできる薬はあるのだがちょっと値が張ったり名前が馴染みにくく直ぐに憶えられず、しばらく躓いてまう。
どういうものか薬価(厚労省の定める薬の値段)は時を経るとだんだん下がってゆく。四十年前に一錠二十二円だった薬が今じゃ九円五十銭などと聞くとあんまりじゃないかという製薬メーカーの気持ちが分かる気がする。中には殆んど利益の出ない薬もあるのだろう。この値上がりする世の中で改定のたびに値段が据え置きあるいは下がるのでは生産中止する会社が出てくるのも仕方がないと思う。医師が使う薬の値段は天丼やラーメンと違い店で決めるわけではなく行政の薬価算定組織で決められるので、薬品メーカーの声は届きにくいらしい。新しい薬の方が薬価が高く決められ利益も出るので宣伝にも力が入り、若い先生は新薬を使う傾向があるので、どうしても古い薬の使用量が減って生産中止という循環が出来てしまうようだ。使い慣れた薬は手放しにくいもので、同種同効と言われても馴染みにくく暫く戸惑うのが本音だ。実際に数多く患者診ないと分からない感覚というものがある。職人の勘とか経験的なものと軽んじられる傾向があるが、意味のある感覚で貴重なものなのだが。