我が医院でも忘年会をする。和食中華フレンチイタリアンと日頃食べる機会の少ないご馳走を楽しんで貰う。この数年イタリアンの評判が良く、今年も市内で一二と評判の高い店を予約した。
実は料理も中々のお値段なのだが、酒豪が五人ばかり居るのでアルコール類が結構なお値段になる。今は年に一度のことだし、色々本音も聞けるので全く気にならないが、開院一年目の忘年会の時は遠慮のない追加注文にドキドキしたものだ。その頃は今の半分の職員数だったのだが、看護師に酒豪が二人居て、このワイン美味しいとボトルを平らげてくれた。事務職員は薄々気付いていたと思うのだが、最初の年は経営的に苦戦で決算は大赤字だった。用意した懐の大枚で足りるだろうかと冷や汗をかかされた。今は懐かしくほろ苦い思い出だ。
厳しいなあと思うのが飲食業界で、そうして忘年会をやった延べ二十店くらいの店の四分の一が閉店してしまっている。栄枯盛衰という表現は大袈裟かも知れないが、高々十年十五年でフレンチならイタリアンならあそこと言われた店が閉じてしまうのには驚いてしまう。確かに一万円近いディナーを出していては平日は閑古鳥が鳴くのかもしれない。大都会ならともかく、地方都市で値が張る店を続かせるのは難しいようだ。尤も高級店だけでなく、庶民的な店でも結構店じまいが有り、医業の何倍も競争が厳しい業界なのだろうと推測している。大繁盛はしていなくてもこつこつ二十年三十年続く店は嬉しく、何年かぶりに訪れてシェフや大将とお互いに年を取ったねと暫し見つめ合ったりしている。