駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

遂に人買い

2018年05月25日 | 小験

  

 遂に禁を破り人買いをしてしまった。看護師が一人体調不良でお辞めになったので、新たに一人雇い入れたのだが、ハローワークや看護協会は三か月もなしのつぶてで、このルートでは期限内に見つけることができなかった。結局やむを得ず、ナース紹介業者を通じて雇い入れた。この十数年、看護師不足に目を付けてこうした紹介業者が蔓延り、ハローワークや看護協会など手数料?を取らないルートから看護師を見つけるのは非常に難しくなってしまった。手数料は年間給与の2-3割が相場で、額が低くなるパートの看護師は一律40万程度(年間給与の3-4割)を要求してくる。

 それは市場原理で、しょうがありませんよと盛業のT先生は笑っているが、毎年一千万円を超える紹介料金を必要とする病院の事務長は真っ青である。零細の開業医の中には、もう看護師は要らないと看護助手だけにして、採血は自分でしているという医師も居る。

 こうした紹介業者を看護師が利用するには理由、探す手間が省ける就職祝い金が貰える・・、があって、中には一年で辞めるすれっからしも居るから要注意だと聞いていた。成程、要注意かとアラビア語の人買いマニュアルを手にこの首はこの足回りはと目を利かそうにも、完全な売り手市場なので人三化け七まではOKを出さねばならない。まだ一か月だが、幸い良さそうな子なので投資も無駄ではなかったかなと胸をなで下ろしている。

 これが市場原理というものにしても、果たしてこのままで良いのかという気がする。いくら売り手市場と言っても何らかの淘汰は働くだろうし、医療が利潤追求環境に囲まれて良いはずがない。立派なビルにホテル並みの接遇で盛業のT先生も、H2ブロッカー程度で毎月通わせごそっと検査をする方式がいつまで通用するか疑問もある。

 大衆向けの外食店が低価格で、なかなかの味を提供できているのは、厳しい評価の目に晒されるからで、大衆が学び目覚めれば、様々な産業職種に淘汰が掛かり軋轢が生ずるだろう。現にデパートや銀行は自己改革を迫られている。富裕層のほとんどいない平均からやや恵まれない層が多い私の外来観測では景気は滞っている。会社勤めの人は受け身で、自分一人でどうにもなるものではないという感覚の方が多く、表立った不満は少ないが、微かな不安を感じている人は多い。

コメント (2)
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