駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

「大日本史」から昭和史を窺い知る

2018年01月11日 | 
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 連休、風邪でごろごろしていたので本を少し読むことが出来た。その一冊に「大日本史」山内昌之・佐藤優共著 文春文庫がある。対談形式で読みやすく、短い時間で読むことが出来た。山内昌之氏は二三度テレビでお見かけしたことがあるが、歴史に造詣が深い柔軟な紳士な学者という感じがした。ご存じ佐藤優氏は驚くべき数の著書を生み続けている化け物のような、否本当に化け物かも知れない考え物言う知識人だ。

 自分は日本史に詳しくない、世界史だって大して詳しくないが、殊に昭和史は全く知らないと言ってもよいくらいだ。二十五歳から五十五歳くらいまでは殆ど医学書しか読まなかった。五十半ばから、多少あれこれ他分野の本を読むようになったのだが、理解できても記憶に残らないという現象を体験することとなった。最近は理解力も落ちている。

 「大日本史」の太平洋戦争への流れを、やはりそうかと苦い思いを持って読んだ。昭和の初めに起きた間違い(日本の国土は荒廃し亡くなった人だけで300万に近いのだから間違いと言えると思う、侵略された国側では間違いは済まないだろう)がどうして起きたかというと防げなかったからだと読んだ。

 国の方針がなんとも奇妙というか不思議な決まり方で、決まってしまうのを読むと、どこか今に似ている気がしてくる。物事を先まで深く考えず、目先のことの可否で突っ走り、方針に反対あるいは疑問を呈する人物勢力を、暴力と思考停止視野狭窄の託宣を持ち出すことで排除してしまう人達が居た。そういう人達は必ずしも高位の役職ではなく、異様な圧力特異な才覚で上位の人を動かし操ったようだ。高官の中には結果がどうなるかよりも保身に走る人物も多く、誰が決めたか何でそうなったかの責任は宙に浮いてしまい、反省見直しがうやむやになってしまう。

 日本人は歴史に学ばない悪弊があると山内さんは指摘しておられる。

 一体、敵愾心旺盛で暴力的権謀術数的自己中路線に取り憑かれる精神はどこから生まれてくるのだろうと不思議な気がした。国民栄誉賞の羽生さんも井山さんも決して一手しか考えないで指したり打ったりすることはない、何十手も先を読んでどうなるかを見極めている。そういう熟慮する人を国民栄誉賞に選んだのだから、よく考え先まで読んで結果を予測することの大切さを政治家はご存じのはず、国民全体のためにどうぞよろしくと申し上げたい。

 戦えば北はなくなるという言葉は、小野寺大臣は誠実な発言と思われているかもしれないが、戦略的で不正確な表現だと思う。何十万の人が命を奪われ、何百万もの人が困窮し国土は汚染されることになる。その中には日本人も日本の国土も含まれるのは確実なわけで、決してすっと消えてなくなる訳ではない、広島や長崎の惨事が再現されると表現して欲しい。

コメント (2)
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