駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医師の技能評価法

2017年05月14日 | 医療

         

 最近は医学博士取得よりも専門医取得の傾向が出てきている。どうしてそうなってきたかというと、初期研修医育成プログラム変更の影響があると思われる。二昔三昔前は論文数が重要視されたため、きちんと患者の診察や手術のできない医師が教授になったり、論文執筆や学会発表が診療よりも高級というか重要と見られる風潮があったりして、診療中心の臨床医が育ちにくかった?。それに医学博士取得を背景に教授を中心とした医局に権力が集中し、地域の病院が医師の確保に苦労したり、病院が大学により系列化される実態があった。

 勿論、これはそういう一面があったということで、必ずしも不合理不公平な事ばかりではなかったのだが、厚労省と医師会の英断で医師の初期研修を全国津々浦々の病院で受けられるように変えた。つまり、医師免許を取得したらまず第一に臨床能力を付けさせて同時に医師の偏在を解消しやすいシステムを導入したのだ。一寸というか、かなりアメリカの医師育成を真似たシステムで、ある程度その目論見は成功したようだ。

 尤も、現実には医学生も将来に有利な選択を志向するから、最近は研修病院がネットでミシュランよろしくランク付けされていると聞く。折角の医師偏在解消目的が、大都市集中の元の木阿弥では困るというので、十年経っていろいろ制度の見直し作業が進んでいるらしい。

 それに伴い、玉石混淆の専門医の内実を変えようという作業もされている。なにがしか実力が付いたという証明資格がないと、研修の意欲も湧かないし、雇用する側も能力の判定がしにいので、専門医制度は臨床研修制度に欠かせないのだ。しかし現実には理念と利害が絡み、新しい専門医制度の制定はすんなりとはいかないようだ。足の裏の米粒だと皮肉られた医学博士と同じ轍を踏まぬように、権威と意義ある資格にして欲しいものだ。

 *足の裏の米粒というのは、それを取っても食べられるわけではなし、かといって取らないと医療界を歩きにくいという意味。

コメント (2)
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