庭の柿の木に葉が繁った。ハナミズキも花から葉に変わり、いつのまにやらニシキギも葉をつけた。それらのうちで「柿の若葉」の緑が最も黄色の色合いが強くて柔らかい印象を与えている。この「穀雨」の時期に私があらたに認識できるようになったのはイヌザクラとミズキの木の花穂である。小さな白い花がイヌザクラは棒状にミズキは平面状に集まって咲いている。どちらも夏には小粒な実が熟し野鳥の子育てに役立つのだという。ミズキはこけしの材料にもなる。昨日のこと紅い棒状の花穂をつけた街路樹に出会った。取り付けられていたプレートにはベニバナトチノキとあった。調べるとセイヨウトチノキ(マロニエ)との交雑種であるという。
小平市では都道建設計画の見直しを問う住民投票条例が成立したが、その後に行われた市長選挙ではどちらの有力候補ともほとんどこの問題には触れず、争点にならなかった。60歳の革新系現職が「意見の異った市民とも手を携えてやっていきたい」と3期目を迎えることになった。投票率は37%だった。4月24日の市議会に市が提出した「投票率が50%未満のときは成立しない」という条例改正案が賛成13、反対13の同数となり議長裁決で可決された。これはかなり高いハードルと言わざるを得ない。5月26日の投票日に向けて「どんぐりの会」などは意見交換会や現地を歩く会などの新たな活動を展開している。
私の家の前の道路で先日のこと自転車に乗った国分功一郎さんと出会った。もちろん向こうは私のことを知らない。こちらから「こくぶんさんですね」と声をかけた。子供用の自転車に乗った女の子と一緒である。「あなたが頑張ってくれているので心強い。市議会の傍聴には私も参加しました」と私。「千葉で育ちましたから両親は小平市民ではありません。家はこの近くで、この道路はよく通りますよ」と国分さんは我家の表札に目をやる。女の子は終始うつむいて顔を上げず、おとなしく待っている様子が印象的だった。研究者であると同時に社会運動家の国分さんを今回の住民投票条例問題でより身近に知ることになった。
中沢新一氏も国分さんとのシンポジウム「どんぐりと民主主義ー都道問題から考える」のために小平市を訪れている。この3月には2人の対談集「哲学の自然」が出版された。「すぐ自分と違うものを敵として考えてしまう。敵じゃない。ただ矛盾しているだけです。ただ矛盾しているものをどう調停していくかです」と中沢氏。フランスに留学した経験のある国分さんはフランスのデモを見聞して「デモとは何か。それはもはや暴力に訴えかけなければ統制できないほどの群衆が町中に出現することだ。その出現そのものがメッセージである。だからデモに参加する人が高い意識を持っている必要などない。食べながらお喋りしながら単に歩けばいい。そうやってなんとなく集まって人が歩いているのがデモである」と柔軟である。(写真はミズキの花穂と津田塾大の藤棚)