近年、多くの大学生に読まれているという哲学入門書「暇と退屈の倫理学」(増補新版)を最近の新聞の広告で知り読んでみる気になった。初版は著者の国分功一郎氏が37歳のときで、その彼も今では50歳である。まえがきで「この本は俺が自分の悩みに答えを出すために書いたものである」と若々しく宣言している。国分功一郎は「こくぶ」ではなく「こくぶん」とよむ。
小平市では、玉川上水を横断する都道328号線の建設反対の市民運動が盛り上がりを見せ、2014年にその賛否を問う住民投票が実施された。その際に小平市民である国分氏は若手批評家を小平に招きシンポジュウムを開催した。私もその会に参加して壇上の国分氏を知ることになる。そのあと偶然にも我が家の門前で、小学低学年の女の子を連れた国分氏と顔を合わせ、こちらから声をかけた。
彼が近くに住んでいることや、千葉の出身であることを知る。我が家から青梅街道に出るときには、彼の家の前を通る。それは短冊状に建ち並ぶ閑静な住宅街にある戸建てだ。都道328号に関わっていた頃に、高崎経済大学に勤務しながら彼が考えていたことは「暇と退屈」ということになる。容貌も思考もシャープだが、率直な研究者だと思う。
初版のあとがきに、彼はつぎのように書いている。「退屈の苦しさを自分もずっと感じていた。しかしそれを考察してみることはなかなかできなかった。斜に構えて世間をバカにしこの悩みをやり過ごそうとしたこともあった。哲学とか思想とか言った分野のことをすこしだが勉強して自分の悩みとどう向き合っていけばいいかが分かってきたのである。勉強というものはなんとすばらしものであろうか。この本は、人に君はどう思う?と聞いてみるために書いた。だから意見を伝えていただけるととてもうれしく思う」