公民館が主催するサタデー講座「玉川上水の再発見」の初回は10月9日だった。講師は鈴木忠司さんほかのナラミースタッフとある。このたびナラミースタッフの正体を知ることができた。近くにある小平四小はコミュニティースクール推進授業研究指定校になっている。地域住民の参加で創る授業、例えば6年生には津田塾大学と連携した英語の授業が行われている。4年生には鳥や虫や魚や植物などの玉川上水ウオッチングの授業がある。それを担当しているのがナラミースタッフだった。コナラの実からその名が付いたという。私が受講する公民館の6回のサタデー講座もその中から6人が出て分担して行うのだという。
10月8日から22日までは二十四節気の寒露である。鈴木さんのオープンギャラリー友の会が開かれる10日の日曜の予報は午前中雨だった。しかし雨は早めに上がり空は急速に明るくなった。こんな時はオープンギャラリーに誰よりも近くに住んでいることを私はありがたく思う。ひょっとすると今日は中止かもしれないと思いながら出かけた。節気に一度の友の会だが前々回は私は鹿児島に居て不参加で、前回は鈴木さんの都合で中止だったから久しぶりである。鈴木さんは予報は3時間ずれるものだと言いつつこの日数少ない参加者をにこやかに迎えた。
ギャラリーに掲示されている鈴木さんの「寒露の唄」はつぎの通りである。「キンモクセイが咲いた グリーンロード歩こうよ 柿が色づいたね ホトトギスも咲いた 独活(うど)の花見たかい フジバカマ残っているかな ジョウビタキ来たね 歩こうよゆっくり歩こうよ」 永年この地域を観察した蓄積をもとにタイムリーにその季節のポイントに私達を導いてくれる。この日のミニ観察は玉川上水を少し離れた住宅地のキンモクセイ、広がる畑に舞い降りるモズ、秋の七草のフジバカマ、帯状に続く玉川上水の中にあるエゴの木に飛来するヤマガラであった。住宅地を歩きながら今は空堀になっている砂川分水の存在にも気付かされた。その空堀の横にフジバカマが自生していた。自生するフジバカマは珍しい。モズの姿を目撃できなかったことだけがこの日の心残りだった。
ヤマガラは体の大きさはスズメぐらいで繁殖期には主に昆虫を食べるが、秋と冬にはエゴの木の実などをよく食べる。エゴの木は落葉小高木で夏は白い花を落としその真下一面が白く染まるのでその存在を誰もが気付きやすい。花のあとエゴの木の実にはゾウムシが入り込むことが多い。エゴの木の実にゾウムシの開けた1ミリ程の小さな穴を観察することができる。ヤマガラは秋にエゴの木の実などを隠しておき、冬から春にかけてそれを取り出して食べる習性がある。鈴木さんは玉川上水でもエゴの木の多い場所に私達を案内してヤマガラの飛来を待った。ほとんど待つ間もなく鳴き声と共にヤマガラはその姿を見せた。ヤマガラは人によく馴れ昔から飼い鳥として親しまれた。よく知られているのが「おみくじ引き」の芸である。私の幼いころの記憶にもあるが鳥籠から出たヤマガラが模型の神社の扉を開け、おみくじを引いて戻ってくるのだ。社会のようすは大きく変わり、いつの間にかその芸が見られなくなった。