玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

理不尽なこと

2005年07月04日 | 捨て猫の独り言
小さな文字は裸眼では読めなくなった。この7月で一年間続いた内科の通院治療が終わる。これでやっと白内障の手術に移れる。どれほどの視力回復が望めるのか楽しみだ。そんな折、天眼鏡を用いて「死の棘」を読んだ。ミホさんのいう理不尽なことをこの本の中から拾い出したかった。こんなに丁寧な読書は久しぶりだ。引用ばかりで恐縮です。

妻は私が女にしてやったことをすっかりききたいという。それは数えられぬほど度かさねて、ききだされ、その度ごとに答えてきたことだからと言いわけをするが、もう一度はっきりさせたいという。「あたしはギモンがこわい。ギモンがおきてくるとあいつの顔が出てきたり声がきこえてきてキチガイになりそうだ。地獄のあたしを救ってくれるのはあなただけなの。・・・」

妻は全身を感じやすいためしの機械と化して私をつかまえ私はそれにかけられてつまずき、妻を飢えの砂漠のなかに取り残す。そうしてとにかくふたりは眠った。目がさめると、裏の工場の機械が動いていて、こどもらもまだ眠っていたが私はかさねて妻のためしを受けた。疲れが私を解きゆるめていたのか、そのとき見ちがえるようにふるまえ、私も妻もかりそめの安堵を得てまた眠った。

「あなた、あいつを喜ばせていたの?」とうつむいていう。「ねえ、喜ばせることができた?あたしはちょっとも楽しくないわ」「・・・・・・・・」「どっちだったの、言いなさいよ」「そんなことぼくにはわからなかった」私は逃げ出したいきもちをおさえ、やっとそれだけ言った。*******「あたしはそれをきくまではゆるしませんよ」「それはねえミホ、非常に個人的なことだろ。それにぼくはそれほど冷静じゃない」「うそ、どうしてあたしにだけ言えないの。******」

コメント
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