新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

廃墟よりこちらが好き #1

2019-03-05 23:43:15 | 美術館・博物館・アート

先週土曜日(3月3日)埼玉県立近代美術館(MOMAS)に行き、

開催中の企画展インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」を観てきました。

「インッポシブル・アーキテクチャー」、私なりに訳せば、「ありえなかった建築」になりますが、ポスターやフライヤーでは、「IMPOSSIBLE」「インポッシブル」には黄色の線が引かれていて、MOMASのHPでは、IMPOSSIBLE」「インポッシブル見え消しにしています。
これは…

MOMASのHPからこの展覧会の概要を抜粋しますと、

この展覧会は、20世紀以降の国外、国内のアンビルトの建築に焦点をあて、それらを仮に「インポッシブル・アーキテクチャー」と称しています。ここでの「インポッシブル」という言葉は、単に建築構想がラディカルで無理難題であるがゆえの「不可能」を意味しません。言うまでもなく、不可能に眼を向ければ、同時に可能性の境界を問うことにも繋がります。建築の不可能性に焦点をあてることによって、逆説的にも建築における極限の可能性や豊穣な潜在力が浮かび上がってくる-それこそが、この展覧会のねらいです。

だそうで、なるほど…なるようなならないような…

   

そんなことは展覧会を観終わってから気づいた話でして、建物好きの私はいそいそと階段を上って企画展示室のある2階へ…

と、階段を上った先(エレベーターの真正面)の壁面に映像作品がありました。

ちょっとやり過ぎの感のある桜吹雪の中、東京湾沿いのビル群実写映像が… あれっ、見慣れた建物の隙間に、実際には存在しない建築物が見えています

この映像作品は、ピエール=ジャン・ジルー「見えない都市 #パート1 #メタボリズム」

説明によれば、

ジルー3Dコンピュータ・グラフィックス技術を駆使し、かつてメタボリストたちが発案したものの、実現には至らなかったメガストラクチャーを、大都市東京に見事に出現させる。東京湾内にそびえ建つのは、DNAの二重螺旋構造をモデルにした黒川紀章の《東京計画1961-Helix計画》(1961)、都心に乱立するビル群の合間には、構造物全体を空中に形成するという奇抜なアイデアの、磯崎新による《空中都市-渋谷計画》(1962)も見え隠れする。しかしながら、そこに映し出される景観は、けっして完全なる架空ではない。銀座には、樹木の幹と葉から着想を得た丹下健三の《静岡新聞・静岡放送 東京支社》(1967)、お台場方面には、同じく丹下による《フジテレビ本社ビル》(1996)、そしてレインボーブリッジ(1993)など、今の東京で、実際に目にすることのできる建造物もしかと建っている。

という作品で、私はすっかり見入ってしまい、2回り鑑賞いたしました

CGの進歩は、建築の世界にもめちゃくちゃ大きな影響を与えているんじゃなかろうか… などと考えながら、インッポシブル・アーキテクチャー」本編に入ると、ここにもまた

本編最初の展示はウラジミール・タトリン「第3インターナショナル記念塔」(1919-1920)だったんですが、

《第3インターナショナル記念塔》は、当時世界で最も高い300mのエッフェル塔を100mしのぐ、400mにおよぶ構想とされる、ロシア革命およびロシア・アバンギャルドの象徴的プロジェクトである。

だったものの、1917年のロシア革命から間もないこの頃は、

当時はまだ内戦が続いており、経済的にも技術的にも当時のソ連に《第3インターナショナル記念塔》を実現する力はなかった

そうな。
ところが、壁面に映されていたのは、長倉威彦CG作品で、ロシアの街の中に「第3インターナショナル記念塔」存在していたら…というもの。

すげぇ~ と感嘆しつつも思ったのは、ジルー「見えない都市#1 #メタボリズム」に映し出されていた現実の東京の姿が、既に十分に「未来」だったのと対称的に、「第3インターナショナル記念塔」は仮に建設されていたとしても、始めから「廃墟」だったのではなかろうか? ということ。

「社会主義の夢」が実質的に否定され尽くした現代において、もしも「第3インターナショナル記念塔」が存在していたとしたら、巨大な墓標と化していたのではないのかな…

というところで一休みいたします。

つづき:2019/03/06 廃墟よりこちらが好き #2

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