「東京藝大美術館の2展は心穏やかに観られなかった(その2)」のつづきです。
3回で終わりそうもありませんので、遡ってシリーズのタイトルを変更しました。
昨夜のNHK「ニュースウオッチ9」で、2001年にタリバーンによって完全に破壊
されたバーミヤンの大石仏の頭上にあった天井壁画が復元
され、それが、反テロの象徴として伊勢志摩サミットで先進各国首脳に見てもらうことになったというニュースが流れていました。
この復元は、1970年代の京都大学中央アジア学術調査隊による調査結果と撮影された写真をもとに復元図を作成し、さらに、東京藝術大学が他の調査・研究結果を盛り込んで行ったのだとか。
その京都大学隊が撮影した天井壁画の写真がこちら。
すでに大仏のお顔は削り取られていたんですな
「バーミヤン 大仏天井壁画~流出文化財ともに~」では、天井壁画が立体的に再現されていて、かつ、東大仏から見えていた
であろうバーミヤンの風景も「再現」されていました。
壁画のメインとなっているのは、ギリシア由来と考えられる、
四頭の有翼の白馬に曳かれる馬車に乗って、天を駆ける太陽神
で、その周りの図象は、インドやペルシアなど、東西の文化が融合したものなのだとか。
その文化的価値の大きさときたら、想像を絶するものがあるのに、「偶像崇拝禁止」を理由に破壊してしてしまったタリバーンの蛮行
は、およそ理解の域を超えています。
会場内で流されていたドキュメンタリーによれば、タリバーン内にも大仏の破壊
に反対
した人がいたそうですが、それ以前に大仏のお顔が削り取られていたこと、他に展示されていた壁画などの仏さまのお顔の半分くらいが、明らかに人為的に傷つけられていた
ことからすれば、タリバーンよりずっと前から、異文化・異教の抹殺
が行われていたことが察せられました。
敵対する人々を殺すことは、許しがたいけれど、歴史的には必然といえるかもしれないけれど、他人が信仰・崇めるものを破壊する行為は別の意味で卑劣かつ卑怯な行為
だとつくづく思ったのでありました。
つづき:2016/05/29 東京藝大美術館の2展は心穏やかに観られなかった(その4)