≪脚色≫
夏の風景
特別編(下)怪談ウナギ(2)
登場人物
湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
湧水恭一 ・・父 (会社員)[38]
湧水未知子・・母 (主 婦)[32]
湧水正也 ・・長男(小学生)[8]
N ・・湧水正也
その他 ・・猫のタマ、犬のポチ
15.C.I とある野原の道 早朝
ポチと散歩する正也。
N 「ポチを散歩させ、(①に続けて読む)」
16.C.I 玄関 外 朝
首から出席カードをぶら下げ、玄関から走り出る正也。
N 「(①)ラジオ体操へ行き、(②に続けて読む)」
17.C.I 玄関 内 朝
ポチに餌をやる正也。
N 「(②)帰って、ポチや…(③に続けて読む)」
18.C.I 台所 朝
小忙しく朝食の準備をする道子。タマに餌をやる正也。
N 「(③)タマに餌をやって、朝食となる」
19.台所 朝
食卓を囲み、食事をする四人。
恭一 「父さんに聞いたんだが、悪い夢を見たんだってな、正也」
正也 「ん? まあね…」
沈黙して食べる四人。
N 「夢の話は既に、じいちゃんから父さん、母さんへと伝わっていた。ここは云わザルだな…と思え、単に一語で片付けることにし
た」
恭一 「ふ~ん、そうか。寝苦しかったからな…」
胡瓜のお新香をバリバリと噛る恭一。
20.C.I 玄関 外 朝
背広姿の恭一が出勤していく。見送る未知子。
N 「父さんが出勤し、(③に続けて読む)」
21.C.I 子供部屋 朝
机で夏休みの宿題をする正也。
N 「(③)僕は宿題を済ます(④に続けて読む)」
22.C.I 玄関 外 朝
畑の見回りに出る恭之介。
N 「(④)じいちゃんは家の前の畑の見回りだ」
23.台所 朝
炊事場で雑用を熟(こな)す未知子。テーブル椅子に座り、未知子の様子を見遣る正也。
N 「母さんは? と見ると、家の雑用をしている。僕は、夢で見た小川へ早速、行ってみることにした」
椅子を立つ正也。下にいたミケがニャ~と鳴く。玄関へ向かう正也。
24.玄関 内 朝
靴を履く正也。台所から未知子の声。
[未知子] 「暑くならないうちに戻るのよぉ~!」
正也 「は~~い!(可愛く)」
戸を開ける正也。ポチがクゥ~ンと鳴く。戸を閉める正也。
N 「目敏(ざと)い母さんは、レーダーで僕を見ているようだった」
25.とある小川 朝
子鰻を探す正也。干上がりかけた水溜りにいる子鰻。気づく正也。両手で掬(すく)い本流へと逃がしてやる正也。泳ぎ去る子鰻。
N 「夢に現れた小川へ行くと、確かに…お告げのように一匹の子鰻が、干上がりかけた水溜りにいた。僕は急いで本流の方へ
と、その子鰻を両手で掬うと逃がしてやった。勢いよく子鰻は泳ぎ始め、そのうち、どこかへ姿を消した」
26.台所 朝
食卓テーブルの椅子に座る恭之介と正也。話す二人。
恭之介「そうか…、まあ、いいことをした訳だな。正夢だったか、ワハハハハハ…(豪快に笑い飛ばして)」
正也 「それはいいけどさ、枕元が濡れてたのが…」
今朝、起きた時の超常現象について語る正也。近くで洗濯機を回す未知子の声。
[未知子] 「あらっ! それ、私なの。うっかり、掃除をした時、バケツをね…慌てて…」
恭之介「そうでしたか…(大笑いして)」
釣られて笑う正也と未知子。未知子の携帯が鳴り、出る未知子。電話の恭一と話す道子。笑って電話を切る未知子。
恭之介「恭一からでしたか…」
未知子「『なんだ、そうだったか…』って、笑ってましたわ」
笑う恭之介、未知子、正也。三人の続く雑談。
N 「これが、この夏、起きた我が家の怪談、いや、怪談モドキである。ただ一つ、夢の子鰻は確かに小川にいた…」
27.エンド・ロール
炎天下の青空。湧水家の遠景。
テーマ音楽
キャスト、スタッフなど
F.O
タイトル「夏の風景 特別編(下) 怪談ウナギ 終」
※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「夏の風景 特別編(下) 怪談ウナギ」 をお読み下さい。