水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景 特別編(下) 怪談ウナギ(2)

2009年12月12日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      特別編
(下)怪談ウナギ(2)

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

15.C.I とある野原の道 早朝 
   ポチと散歩する正也。
  N   「ポチを散歩させ、(①に続けて読む)」

16.C.I 玄関 外 朝
   首から出席カードをぶら下げ、玄関から走り出る正也。
  N   「(①)ラジオ体操へ行き、(②に続けて読む)」

17.C.I 玄関 内 朝
   ポチに餌をやる正也。
  N   「(②)帰って、ポチや…(③に続けて読む)」

18.C.I 台所 朝
   小忙しく朝食の準備をする道子。タマに餌をやる正也。
  N   「(③)タマに餌をやって、朝食となる」

19.台所 朝
   食卓を囲み、食事をする四人。
  恭一  「父さんに聞いたんだが、悪い夢を見たんだってな、正也」
  正也  「ん? まあね…」
   沈黙して食べる四人。
  N   「夢の話は既に、じいちゃんから父さん、母さんへと伝わっていた。ここは云わザルだ
な…と思え、単に一語で片付けることにし
       た」
  恭一  「ふ~ん、そうか。寝苦しかったからな…」
   胡瓜のお新香をバリバリと噛る恭一。

20.C.I 玄関 外 朝
   背広姿の恭一が出勤していく。見送る未知子。
  N   「父さんが出勤し、(③に続けて読む)」

21.C.I 子供部屋 朝
   机で夏休みの宿題をする正也。
  N   「(③)僕は宿題を済ます(④に続けて読む)」

22.C.I 玄関 外 朝
   畑の見回りに出る恭之介。
  N   「(④)じいちゃんは家の前の畑の見回りだ」

23.台所 朝
   炊事場で雑用を熟(こな)す未知子。テーブル椅子に座り、未知子の様子を見遣る正也。
  N   「母さんは? と見ると、家の雑用をしている。僕は、夢で見た小川へ早速、行ってみる
ことにした」
   椅子を立つ正也。下にいたミケがニャ~と鳴く。玄関へ向かう正也。

24.玄関 内 朝
   靴を履く正也。台所から未知子の声。
  [未知子] 「暑くならないうちに戻るのよぉ~!」 
  正也  「は~~い!(可愛く)」
   戸を開ける正也。ポチがクゥ~ンと鳴く。戸を閉める正也。
  N   「目敏(ざと)い母さんは、レーダーで僕を見ているようだった」

25.とある小川 朝
   子鰻を探す正也。干上がりかけた水溜りにいる子鰻。気づく正也。両手で掬(すく)い本流
へと逃がしてやる正也。泳ぎ去る子鰻。
  N   「夢に現れた小川へ行くと、確かに…お告げのように一匹の子鰻が、干上がりかけた
水溜りにいた。僕は急いで本流の方へ
       と、その子鰻を両手で掬うと逃がしてやった。
勢いよく子鰻は泳ぎ始め、そのうち、どこかへ姿を消した」

26.台所 朝
   食卓テーブルの椅子に座る恭之介と正也。話す二人。
  恭之介「そうか…、まあ、いいことをした訳だな。正夢だったか、ワハハハハハ…(豪快に笑
い飛ばして)」
  正也  「それはいいけどさ、枕元が濡れてたのが…」
   今朝、起きた時の超常現象について語る正也。近くで洗濯機を回す未知子の声。
  [未知子] 「あらっ! それ、私なの。うっかり、掃除をした時、バケツをね…慌てて…」
  恭之介「そうでしたか…(大笑いして)」
   釣られて笑う正也と未知子。未知子の携帯が鳴り、出る未知子。電話の恭一と話す道子。笑って
電話を切る未知子。  
  恭之介「恭一からでしたか…」
  未知子「『なんだ、そうだったか…』って、笑ってましたわ」
   笑う恭之介、未知子、正也。三人の続く雑談。
  N   「これが、この夏、起きた我が家の怪談、いや、怪談モドキである。ただ一つ、夢の子
鰻は確かに小川にいた…」
27.エンド・ロール
   炎天下の青空。湧水家の遠景。

   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O
   タイトル「夏の風景 特別編(下) 怪談ウナギ 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「夏の風景 特別編(下) 怪談ウナギ」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖②》第十回

2009年12月12日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖②》第十回
 それ故、左馬介は千鳥屋で待つ心積もりをしていた。権十の話では、蟹谷を見たのは昼前辺りらしく、左馬介は、その時分までは待たねばなるまい…と、覚悟していた。左馬介が道場を出たのは卯の上刻だから、昼過ぎまで待つとなれば、大よそ三つの時を経なければならない。勿論、それは念頭に入れている左馬介であったが、果して蟹谷に会えるのか、そして、蟹谷が幻妙斎に受けた剣の指南について訊き出せるのか…といった、全く先の読めない状況
が待ち構えているのであった。
 案の定、千鳥屋は堅く戸を閉ざしていたが、それでも、うっすらと東の空が朱色に染まり始めると、店の者達の動き出す気配が店中で聞こえ始めた。早朝に出立する宿の泊まり客も半ばいたからである。左馬介は店に着いて後、暫し佇んでいたが、身体を休めようと、軒下の地面へ、べったりと腰を下ろしていた。冬ではないから、そう苦になるものではない。返って心地よいくらいのものだ。梅雨入りが近づいてはいたが、幸いこの日は朝から晴れ模様で
あった。
 戸口が開き、年端も行かない丁稚小僧が箒を手にして通用口から現れたのは、卯の下刻に入った頃である。漸く辺りに陽射しが満ち始めていた。


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