水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第四話) 花火大会

2009年12月02日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      
(第四話)花火大会

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

1.台所 朝
   タイトルバック
   朝食後。食卓テーブルの椅子に座り、テレビを観る恭之介と正也。沈黙が続くテーブル。テ
レビの音と炊事場で未知子が片づけをす
   る音のみが響く。
  N   「僕の家では毎年、恒例の小さな花火大会が催される。とは云っても、これは、どこの
家でも出来る程度の小規模なものなのだ
       が…」
   急須の茶を湯呑みに注ぎ、一気に飲み干す恭之介。
  恭之介「正也、今日は例の大会だなぁ、ハハハ…」
  正也  「じいちゃん、花火は買ってくれたの?」
  恭之介「ん? いやぁ…。未知子さんが買うと云ってたからな…(表情を少し曇らせて)」
   急に温和(おとな)しくなる恭之介。ふたたび、沈黙が続くテーブル。テレビの音のみが響
く。タマが急に、ニャ~と美声で鳴く。椅子
   を立って、子供部屋へ向かう正也。
   テーマ音楽
   タイトル「夏の風景(第四話) 花火大会」
   キャスト、スタッフなど

2.玄関 朝
   出勤しようと、框(かまち)に腰を下ろし、靴を履いている恭一。
  N   「花火を買ってくるのは父さんの場合もあり、母さんになるときもあった。じいちゃんも
買ってくれたとは思うが、僕の記憶では一
       度こっきりだった。僕も主催者の手前、な
けなしの小遣いをはたいて買い足し、花火大会を楽しむのが常だった」
   子供部屋へ行く途中、恭一に気づき、立ち止まる正也。
 正也  「今日は、花火大会だからね(可愛く)」
 恭一  「そうだったな…。じゃあ、早く帰る(無愛想に)」

3.台所 夜
   食後の団欒。恭之介、正也、未知子が食卓テーブルを囲む。テレビが賑やかに鳴っている。
 N   「毎年、開始は夕飯後の八時頃だった。僕は昼間に近くの玩具屋でお気に入りの花火
を少し買っておいた。そして何事もなく、い
      よいよ八時近くになった」
 正也  「花火はどこ? 母さん(可愛く)」
 未知子 「えっ! 今日だった? 明日だと思ってたから買ってないの」
 正也  「云ってたのに !(怨みっぽく云った後、グスンと少し涙して)}
   涙目の正也を見遣る恭之介。
 恭之介「正也! 男が、これくらいのことでメソメソするんじゃない!(顔を赤くして立って叱り」
   涙ぐんだ目を擦る正也。恭之介を見上げる正也。
 N   「僕の前には怒った茹で蛸が立っていた。でも、その蛸はすぐにグデンと柔らかくなった」
 恭之介「まあ、いいじゃないか、今日でなくても…(優しく笑って)」
   蕭々と現れる風呂上がりの恭一。
 恭一  「フフフ…。正也も、まだ子供だな(ニヤリとし)」
   黙って恭一を見遣る正也。
 N   「云われなくたって僕は子供さ、と思った」
   片隅に置いた袋を手に取る恭一。
 恭一  「お父さん。こういうこともあろうかと、ほら、今年は私が買っておきましたよ(少し自慢げ  
に)」
 恭之介「おぉ…珍しく気が利くな、お前(笑顔で)」
 恭一「ついでにコレも買っときました(さも自慢げに)」
   殺虫剤を袋から取り出し、恭之介に見せる恭一。
 恭之介「ああ…コレなぁ。切れたとこだったんだ(喜んで)」

4.庭 夜
   水の入った防火バケツ。縁台と庭先に座り花火を観賞する四人。闇に綺麗な火花を落とす
花火。浮き上がる四人の姿。小さな歓声
   と談笑。時折り、ウトウトする恭之介。少し離れた芝
生で、四人の様子と花火を鑑賞するタマとポチ。
 N   「しばらく経つと、暗闇の庭には綺麗な花火の乱舞が広がり、四人の心を癒していっ
た。でも、じいちゃんは半分、ウトウトしてい
      た」
   F.O
   タイトル「夏の風景(第四話) 花火大会 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第四話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖①》第二十九回

2009年12月02日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖①》第二十九回
 余程、五郎蔵一家の嫌がらせには困っていたように思える喜平の道場に対する肩の入れようだった。五郎蔵一家が道場の蟹谷、樋口、山上の三人によって始末されてからというもの、商売敵(がたき)の三洲屋も廃墟と化し、今は泊り客にも事欠かない千鳥屋である。喜平が堀川一門を崇(あが)め奉(たてまつ)るのも、当然といえば当然
だと云えた。
 蟹谷は鱧の骨きりを酢味噌に付け、口へと運びつつ酒を飲む。やがて、頃合いに身体が火照れば、道場への帰途につく。客人身分とはいえ、門限だけは別で、刻限迄に戻らないと、場内へは入れない。外の行動に関しては無礼講で、勝手気儘(きまま)が許されている
はいえ、これのみ、どうしようもなかった。
 帰路の約十町は足取りが軽くなる。懐(ふところ)に入った手間賃の五十文も、ずしりと重く感じられる。蟹谷にとって、薪割りの小仕は今月に入りこれで三度目で、あと二度もやれば、これでこの月一朱は道場へ納められる手筈なのだ。それに、月一度、千鳥屋用心棒まがいで喜平の供に付き合えば、また別の一朱は包んでえるといった御の字の収入源もあった。懐具合は、そういうことで苦にする必要もなかったが、剣の修練の道は、また別である。左馬介と同様、蟹谷もまた剣聖への道を模索していた。
                                

                                                      剣聖① 完


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