水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第八話) 西瓜(すいか)

2009年12月06日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      
(第八話)西瓜(すいか)

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

洗い場 昼
   タイトルバック
   洗い場に浸けられた西瓜。麦わら帽子を被り、水浴びをする正也。離れから出てきて洗い場を覗き
込む恭之介。恭之介を見遣る正
   也。溢れ出た水を浴び、身体を冷やすポチ。水しぶきの冷気が漂う
日陰で涼んで眠るタマ。 
  恭之介「おお…上手い具合に、よお冷えとる…」
   タマが、そら、そうでしょう、と云わんばかりに、ニャ~と鳴き、欠伸する。

2.(フラッシュ) 洗い場 朝
   畑から帰り、洗い場へ、手に持つ西瓜を浸ける恭之介。
  N   「朝早く、じいちゃんは、家に昔からある湧き水の洗い場へ西瓜を浸けておいた」

3.もとの洗い場 昼
   洗い場近くの樹々に蝉が集く。冷水が滾々と湧く水中の西瓜。水に浸かり、また上がる、を繰り返し
水と戯れる正也。上手い具合に、
   日影になっている洗い場。
  恭之介「どれ、力仕事の前に、ひとつ、身体でも拭くか…」
   湧き水に濡らした手拭いで、身体を拭き始める恭之介。
  恭之介「ふぅ~、気持ちいいのう…(誰に云うでなく)」
   気持ちよさそうな洗い場の二人。灼熱の輝く太陽。
   テーマ音楽
   タイトル「夏の風景(第八話) 西瓜(すいか)」
   キャスト、スタッフなど
   水浴びを止め、タオルで身体を拭き始める正也。
  N   「僕は昼間、洗い場で水遊びをするのが日課となっている。というのも、これからじいちゃんの
離れで昼寝をしなければならない
       からだ。別にどこだって寝られるじゃないか…と思うだろう
が、じいちゃんの離れへ行かねばならないのには、それなりの理由
       がある。それについて
は、後日、語ることにしよう(◎に続けて読む)」
   身体を拭き終え、衣類を身に着けている正也。
  N   「(◎)で、そうなると、じいちゃんは電気モノ嫌いという困った癖があるから、体を充分に冷や
しておかないと眠れない訳だ。そ
       こで、昼寝前の水遊びが日課となった…とまあ、そういうこ
とだ」
   
衣類を身に着け終え、家へ入ろうとする正也。
  恭之介「おい、正也。お前も食べるな?」
   立ち止まって振り返る正也。日陰の洗い場に腰を下ろした流れる汗姿の恭之介。
  正也  「うん!(可愛く、愛想をふり撒いて)」

4.C.I 離れ 昼
   汗だらけで団扇を忙しなくバタバタと動かす恭之介。
  N   「じいちゃんは夏に汗を掻くのが健康の秘訣だと信じている節がある。

5.洗い場 昼
   滾々(こんこん)と湧く水が勢いよく流れる。澄んだ水。
  N   「この湧き水は、いったいどこから湧き出てくるのだろう…と、いつも僕は不思議に思ってい
る。知ってる限り、枯れたことはなく、
       滾々と湧き続けているのだ」

6.台所 昼
   食卓テーブルに置かれた俎板。俎板の上の西瓜。包丁で今にも西瓜を切ろうとしている恭之介。恭
之介を取り囲んで見守る恭一、正
   也。見事に切る恭之介。
  N   「家へ入ると、じいちゃんは賑やかに西瓜を割った。力の入れ加減が絶妙で、エィ! っと、凄
まじい声を出して切り割った。流石、
       剣道の猛者(もさ)だけのことはある…と思った」
  恭一  「父さん、私は一切れだけでいいですよ…( 遠慮ぎみに)」
  恭之介「ふん! 情けない奴だ。男なら最低、三切れぐらいいはガブッといけ!(手に持った包丁で、
切った西瓜を示して)」
   テーブルより、少し避難して離れる正也。
  N   「じいちゃんは包丁を持ったまま御機嫌が斜めだ。弾みでスッパリ切られては困るが、その危
険性も孕む」
   炊事場から未知子が近づく。
  未知子「お父さま、塩とお皿、ここへ置きますよ(遠慮ぎみに)」
  恭之介「未知子さん、あんたも、たんと食べなさい」
   笑って首を縦に振る未知子。

7.台所 昼
   食卓テーブルで西瓜を食べる四人。上品に頬張る恭一。わずか四、五口で一切れ食べ尽くす恭之
介。普通に食べる未知子と正也。
   恭之介の食いっぷりに見とれる三人。
  恭之介「恭一、お前が買ってきた殺虫器な。アレは実にいい、よく眠れる…(五切れ目を手にしなが
ら)」
  恭一 「お父さんは電気モノがお嫌いでしたよね? 確か…(暗に殺虫器は電気式だと強調して)」
  恭之介「お前は…また、そういうことを云う。いいモノは、いいんだ!(怒り口調で)」
   顔を赤らめて怒る恭之介。恭之介を見遣る正也。
  N   「じいちゃんも現金なもんだ…と、僕は思った。猛暑日は、今日で四日も続いている」
   F.O
   タイトル「夏の風景(第八話) 西瓜(すいか) 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第八話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖②》第四回

2009年12月06日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖②》第四回
「蟹谷さんが昨日、先生に会われたとか…」
「えっ! 先生に…。それは誠(まこと)ですか? ど、どこでです?」
 一馬と鴨下が話す声が廊下を歩いていた左馬介の耳に偶然、こえた。丁度、葛西の権十(ごんじゅう)という百姓が、畑で採れた作物を持って道場へやって来たので、その応対をして小部屋へと戻る矢先であった。だから、左馬介としては聞こうとして聞いた話なのではない。ただ、偶然に聞いた話としては、余りにも左馬介の心を乱す内容であった。蟹谷は客人身分だから、外出中にどこで幻妙斎に出会おうと、決して不思議ではない。だが、鴨下がどのようにしてそのことを知り得たのか? 謎が謎を呼んで、左馬介の心を掻
き乱した。
 その日の夜、十三夜の朧月が見られた。それも、晩春の薄雲が霞み棚引
く程度で、煌々とした光が地上を照らしていた。
「いい月ですねえ…。つかぬことをお訊きしますが、昼、一馬さんと話されていた蟹谷さんが先生と会われた、という一件なんですが…」と、単刀直入に左馬介は鴨下へ投げ掛けた。すると鴨下は、朧
月を眺めながら、
「ああ…その話でしたか。いやあ、私も偶然、と云えば偶然なんですがね…」と云って笑い始めた。


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