水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第五話) アイス・キャンデー事件

2009年12月03日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      
(第五話)アイス・キャンデー事件

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

.洗い場 昼
   タイトルバック
   ポチが、水が湧く洗い場から流れ落ちる水を利用して水浴びしている。タマも日
陰で涼んでいる。うだるような炎天下。五月蠅いほど
   
の蝉の集き。快晴の蒼い空。湧き立つ雲。

2.離れ 昼
   団扇をバタバタやるが、咽返る暑気に、おっつかず、萎え気味の恭之介。その傍で昼寝する
正也。外戸は開け放たれているが、風が
   全くない。
 N   「今日は朝から気温がグングン昇り、昼過ぎには、なんと、36度を突破した。いつもは気
丈なじいちゃんでさえ、流石に萎えてい
      る」
   灼熱の太陽。湧き上る入道雲。
   テーマ音楽
   タイトル「夏の風景(第五話) アイス・キャンデー事件」
   キャスト、スタッフなど
   外戸のある廊下側へ移動して座る恭之介。
 恭之介「地球温暖化だなぁ…。わしらの子供の頃にゃ考えられん暑さだ。ふぅ~、暑い暑い…」
   声で目覚め、恭之介の方へ寝返りをうって薄目を開ける正也。
 N   「隣で昼寝をしていた僕は、じいちゃんのひとり言に、安眠を妨害され目覚めた。声がし
た方へ首を振ると、じいちゃんは団扇をパ
      タパタやっている。じいちゃんが電気モノが
嫌いなので、僕はいい迷惑を蒙っている」
 恭之介「こりゃかなわん。水を浴びるか…。真夏日、いや、猛暑日だとかテレビが云っとったな
(呟いて)」
   ヨッコラショと立ち上がる恭之介。一瞬、足元の正也を見る恭之介。二人の目と目が偶然、
合う。
 恭之介「なんだぁ正也、寝てなかったのか?」
 正也  「…でもないけど(小声で可愛く)」
 N   「そんなことを云われても、暑さに加えて団扇パタパタ小言ブツブツでは、眠れる方が怪
しい」
   一瞬の無言の間合い。
 正也  「じいちゃん、冷蔵庫にアイス・キャンデーがあるよ。朝、二本買っといたから、一本やる
よ」
 恭之介「ほう…気前がいいな。正也は金持ちだ…。じゃあ、浴びてから戴くとするかな(笑っ
て)」
   母屋の方へ遠ざかる、廊下を歩く恭之介。
   O.L

3.離れ 昼
   O.L
   母屋の方から近づく、廊下を歩く恭之介。
 N   「しばらくして、僕がまた眠りかけた頃、シャワーを終えたじいちゃんが、また戻ってきた」
   寝ている正也を覗き込む恭之介。
 恭之介「おい、正也。キャンデー一本しかなかったぞ」
 正也  「えぇーっ! そんなことないよ。ちゃんと二本、買っておいたんだからっ(少し驚いて)」
 恭之介「いや、確かになかった…」
   跳ね起きる正也。冷蔵庫のある母屋へと廊下を走り去る正也。
   O.L

4.離れ 昼
   O.L
   冷蔵庫のある母屋から、廊下を走って近づく正也。手にキャンデーを持つ正也。    
 正也  「じいちゃんの云う通りだった…」
 恭之介「だろ?」
   無言で首を縦に振り、頷く正也。しぶしぶ手に持つキャンデーを恭之介に手渡す正也。受け取る恭之介。
 恭之介「いいのか? 悪いなぁ…(小笑いして)」
 N   「僕は云った手前、仕方ないな…と諦めて、残りの一本をじいちゃんにやった。消えたア
イス・キャンデー。犯人は誰なのか…、僕
      は刑事として捜査を開始した」

5.台所 夕方
   食事時の団欒。食卓のテーブルを囲む四人。
  恭一「なんだぁ、食っちゃいけなかったのか? つい、手が出たんだが…。すまんな」
   談笑する四人。
  N   「夕方、呆気なく犯人が判明した。犯人は父さんだった。今日は日曜で、一日中、書斎
へ籠りパソコンと格闘していたのだ。僕
       は、まず母さんを疑っていた。あとは母さんだ
けと思い、父さんを忘れていたのだから、まあ、父さんもその程度のものだ」
  恭一  「ハハハ…、今回は父さんが悪かったな。しかし正也、買った食い物は早く食べんと
な」
  恭之介「そうだ、それは父さんの云う通りだぞ、正也」
   機嫌よく笑う恭之介。唐突に話しだす未知子。
  未知子「今日はゴキブリ出ないわねぇ(恭一を見て)」
  恭一  「そりゃそうさ。昨日、仕掛けといたからなぁ(自慢げに)」
   得意そうに解説する恭一。仕方なく聞く三人。
  N   「罠にかかったゴキブリが、『馬鹿馬鹿しい…』と云った。…これは飽く迄も想像だが…」
   F.O
   タイトル「夏の風景(第五話) アイス・キャンデー事件 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第五話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖②》第一回

2009年12月03日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖②》第一回
 道場の門弟達にとっての楽しみと云えば、そう幾つもあるものではない。日々の修練を積み重ねる剣の道なのだから、それはそれで仕方がない…と思えるが、そこは
それ、やはり人間なのである。
 皐月に入れば、行事的に宴席へ招かれるといったこともなく、早や端午の節句である。この時期だけ道場の中央神前に飾られる兜(かぶと)が、左馬介と鴨下の手によってふたたび収納されようとしていた。千鳥屋で蟹谷が四度目の五十文を手にした頃のこと
である。
「あとは私がやっておきますから、鴨下さんは、もう部屋へ戻って
下さい」
「いいえ、私も覚えておきたいですから…」
「左様ですか? じゃあ、この手燭台を持って照らして下さい」
 蝋燭の灯りで、かろうじて辺りに納められた調度品などが見えるといった程に暗くて気味悪い納戸の中である。鴨下が先導する形で奥へと進んでいく。左馬介は一馬に教えを乞うていたから収納場所を知ってはいたが、実のところ、去年の梅雨時に入門したのだから、この兜を収納するのは初めてなのである。だから、余り先輩面(づら)を出来るほど周知はしていなかった。それでも一応は古参として振る舞うのだった。


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