ゼミで少し議論になったので雇用保険法の受給資格について取り上げてみたいと思います。
「受給資格」とはいかなる状態をいうかというと、原則として離職日以前2年間に通算12カ月以上の被保険者期間(賃金支払基礎日数11日以上)がある状態をいい、
「受給資格の決定」というと受給資格の要件を満たしたうえで職安に求職の申し込みに行き現実的には離職票を受給資格者証に替えた状態をいうというものです。
雇用保険法14条2項の定めで、被保険者期間を算定する場合に除外する期間として簡略すると以下の通りとされています。
(被保険者期間)
2 前項の規定により被保険者期間を計算する場合において、次に掲げる期間は、同項に規定する被保険者であつた期間に「含めない」。
一 最後に被保険者となつた日前に、当該被保険者が受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得したことがある場合には、
2 前項の規定により被保険者期間を計算する場合において、次に掲げる期間は、同項に規定する被保険者であつた期間に「含めない」。
一 最後に被保険者となつた日前に、当該被保険者が受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得したことがある場合には、
当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であつた期間
・・・ここでは「受給資格の決定」ではなく「受給資格の取得」となっており、
受給資格の要件を満たした離職であればハローワークに行こうが行くまいがその受給資格に係る「被保険者であった期間」を通算することはできない、
(離職にかかる期間について被保険者期間の算定には使えない)ということになります。
しかし、行政手引でこの扱いが緩和されており、
受給資格の決定を受けていなければ(取扱いとしてはハローワークに行き求職の申し込み及び受給までしていなければ)既に受給資格を得た被保険者期間を通算できる、
という扱いになっているということです。以下が該当の行政手引きです。
行政手引50103(3)被保険者期間
(ロ) (イ)により被保険者期間を計算する場合において、次の期間は被保険者期間の算定の対象となる被保険者であった期間に「含まれない」。
a 最新の離職票に係る被保険者となった日前に当該被保険者が受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格の「決定」を受けたことがある場合
(ロ) (イ)により被保険者期間を計算する場合において、次の期間は被保険者期間の算定の対象となる被保険者であった期間に「含まれない」。
a 最新の離職票に係る被保険者となった日前に当該被保険者が受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格の「決定」を受けたことがある場合
(当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に基づいて基本手当、高年齢求職者給付金又は特例一時金を受給したか否かは問わない。)における当該受給資格、
高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前の被保険者であった期間
「決定」があるかなしか、ほんのちょっとした違いなのですが、受給資格要件を満たしただけで前後の通算はできないとする条文と異なり、
行政手引きでは職安に行き求職の申し込みをしていなければ(実際には受給していなければ)通算できるとするもので、
実務上大きな違いがあります(いずれにしても通算できるのは1年以内の期間に限られます)。
例えばA社に10年勤務した会社を退職し、1年以内にB社再就職した場合で8か月勤務して自己都合退職した場合、
B社では受給資格を得られておらず、A社では受給資格得ていたとして、
条文上でいえばA社とB社の受給資格は通算できず、B社退職後A社の受給資格で基本手当を受給することになります。
しかし、B社退職の時点では、A社の退職から少なくとも8か月は経過しており、
A社の離職日から1年間である受給期間が残すところ4か月となってしまいます。
そこで平成19年に行政手引きの変更により、B社の退職事由により、B社とA社の通算期間で受給資格を取得できるものとし、
受給期間の1年間も確保できることとしたということのようです。
平成19年というと法改正で「特定理由離職者」が創設されており、前年リーマンショックで雇止めが頻発し、
大変な不況時であったため受給要件を緩和したという経緯があります。
法改正なく行政手引の変更での対応については疑問が残りますが、その時の社会的背景を考えるととても面白く納得性があります。
また驚いたことに平成21年度の我らが「新標準テキスト」には詳細に上記のことが書かれていました。
(流石です。当時講師であったのにこのことはすっかり失念していました)
先週、修士論文を提出し終え、約半年ぶり位にゆっくりした休日を過ごしました。
しばらく買い物にも行っておらず、久しぶりにセールに出向きスーツを購入し、受講生OBからいただいた「ゴッホ展」にも行きました。
しかし・・・大学院での勉強は本当に楽しく、張り合いがありましたので、何とな心にぽっかりと穴が開いたような寂しさを感じます。
修士論文の最終面接が終了しいよいよ卒業となれば、何かあらたに勉強することを考えないといけないなあと思っています。
ちょうどTACの講師を卒業したときの状態のような感じですので、もう少ししたら見えてくるかなと期待しています。