OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

無期転換社員の労働条件

2013-02-03 23:17:14 | 法改正

 先週末は4月に改正される労働契約法と高年齢者雇用安定法のセミナーを2つさせて頂きました。その準備やお話をしている中で、またセミナー後ご質問を受ける中で色々と勉強になりました。だんだん勉強していくうちに、労働契約法の改正のポイントは無期転換社員の労働条件についてではないかと思えるようになってきました。

今回の労働契約法の改正の一番のポイントは、「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みを導入する」という、無期労働契約への転換だろうと思います。ただし、これは平成25年4月1日の施行日以降に新たに結んだ契約や又は更新した契約からカウントを開始するため、実際に無期転換する社員の発生は約5年後ということになります。ただ、そうはいってもそれまでに無期転換させる社員をどのように選んでいくか等を考えた場合、ここ2年くらいでその仕組みや労働条件などを決めておく必要があります。

考えをたどってみると、無期転換する場合の労働条件は、「従前と同じ」又は「無期になることにより転勤はあり得る」などの条件を別段の定めとするなど多少の負荷をかけることはあっても、従前より労働条件を良くするということについてはなかなか難しいことではないかと思います。

無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。(労働契約法18条)・・・当初、無期転換する場合、原則として従前の有期労働契約と同一の内容にしておくのが無難ではないかということしか考えていませんでした。

②①の原則に対して、無期労働契約の労働条件は、別段の定めをすることにより、変更可能です。「別段の定め」とは 、労働協約、就業規則、個々の労働契約(無期転換に当たり労働条件を変更することについての労働者と使用者との個別の合意)が該当します。(労働契約法18条)・・・ただ「別段の定め」は可能であると法律で規定されたわけですから、このあたりをどうしていくかが企業ごとの事情が出てくるところだろうということは推測されます。

無期転換した場合の労働条件については、無期転換前と異なる労働条件を適用する必要がある場合には、労働協約、就業規則、個々の労働契約で定めておくことが必要です。(労働契約法のあらましより)・・・従来期間の定めのない労働契約を締結している正社員と期間の定めのある有期契約社員の2本建てであったところが、無期転換社員という存在ができたことにより、その中間に位置する社員が発生することになります。無期転換前と異なる労働条件にするのであれば、確かに行き違いのないように無期転換社員規程を作成して、正社員就業規則・無期転換社員規程・有期契約社員規程の3本建てにする必要があると思います。

しかし、同じ期間の定めのない無期契約であるからと言って、労働条件を正社員に合せることまで求められているわけではありません。とすると無期転換社員規程を作成するとして、無期転換したからと言ってやはり労働条件を特に良くしようと考える必要はないのだなということになります。

同一の使用者と労働契約を締結している、有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより不合理に労働条件を相違させることを禁止する(労働契約法20条)ことが規定されました。…この改正労働契約法の3つ目のポイントである「無期と有期の不合理な労働条件の相違があることの禁止」を考えた時、有期契約社員から無期転換した社員の労働条件を従前より良くしてしまった場合、有期と無期に相違が生まれ、もし同じ仕事・同じ異動の範囲(法律の規定では①職務の内容②当該職務の内容および配置の変更の範囲となります)のままであると、20条に抵触することになると考えられます。

上記の点を踏まえて無期転換社員規程を決めていく必要があるわけですが、2月4日付の労働新聞に弁護士の安西先生が書いておられる通り、今後の無期雇用社員の存在をある意味逆手にとってどのように活用していくか、というところは確かに考えどころかもしれません。

まだ2月ですが春のような暖かい週末でした。OURSはひどい風邪やインフルエンザやノロウィルスで交代でスタッフがお休みというここ2週間が続きましたが、これで少しみんな元気に出て来てくれるでしょうか。幸い私はできるだけうがいと手の消毒に励んでいるせいか、特に風邪もひかず過ごしています。特に支部長になってからは夜も何かと出ることが多く、あまり真面目にいつも食事を作っていないのですが、スープだけは好きなので、いつも野菜を入れて作っておくのが唯一の救いです。先週辰巳芳子先生の「いのちを支えるスープ」という本を購入して、簡単そうなものから作ってみたのですが、これがまたなかなか流石に美味しいのです。風邪をひきそうな時も、このスープを飲めば元気になれそうな気がします。