OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

親の入院

2016-10-30 15:10:12 | 社会保険

85歳になる母が家の中で転び腕を骨折したので入院をしました。これまで入院をしたことはお産の時だけということで心配したのですが入院中も見舞いに行くと寝ていることは少なく、1週間を待たずして週明け退院できるようです。その母の入院の手続きで感じたのが、高齢者医療の受給手続きの難しさです。

入院手続きをしようとして説明書を見たところ、提出書類が以下の通りとなっていました。

健康保険証等(高齢受給者証・減額認定証・限度額認定証)の提出
②入院申込書兼誓約書の提出③入院室申し込み同意書の提出

①を見たときに手元にあったのは「後期高齢者医療被保険者証」と「介護保険被保険者証」のみでした。また入院ということだったので通常の健康保険の被保険者と同様「限度額認定証」を提出することにより高額療養費の限度額基準を超えた額については病院と保険者との間で直接払いをしてもらわなければととっさに思いました。

そこで感じたのが「後期高齢者医療被保険者証」はこのうちどれにあたるのか?(回答はにあります)

また「限度額認定証」は、協会けんぽでも健保組合でも国民健康保険でもない場合どこに申請すればよいのか?ということでした。

病院窓口に聞いたところ、「限度額認定証」は、「後期高齢者医療被保険者証」に書かれている後期高齢者医療広域連合に電話で聞いて下さいということでしたが、そこには電話番号も住所も書かれていませんでした。そこでwebで検索してみたところ、どうも「限度額認定証」は必要がないということが分かりましたが、これは高額療養費、後期高齢者医療などの仕組みがある程度わかっていなければとてもではないけれども何が何だかわからなくて余計な問い合わせ等をしてしまうと思いました。

この①カッコ書きに書かれているものは何かというと、以下の通りです。

「高齢受給者証」は、70歳になると、75歳(後期高齢者医療制度に移行する)までの間、加入している保険者から交付されるそうです。ここには病院窓口での自己負担割合を示す証明書で、所得の状況などにより、1~3割負担のいずれかが記載されています。そのため、70歳以上の被保険者及び被扶養者が医療機関等で受診するときには、保険証とあわせて高齢受給者証を提示する必要があるということになります。※要するに75歳以上の後期高齢者はこれは持っていないということになります

「限度額適用・標準負担額減額認定証」は、後期高齢者医療制度では、「世帯の全員が住民税非課税の場合」後期高齢者医療被保険者証とともにを医療機関の窓口に提示することにより保険適用の医療費の自己負担限度額と、入院時の食費が減額されます。入院する際は、入院する月のうちに「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付申請を高齢者医療係にしてください。 「限度額適用・標準負担額減額認定証」は住民税非課税世帯を対象に交付するものになりますので、毎年、課税状況に応じて更新します。※要するに「限度額適用・標準負担額減額認定証」は、住民税非課税限度額か否か等療事前に決まっている自己負担割合により必要であったりなかったりするということになります。

神奈川県後期高齢者医療広域連合のHPには高額療養費の支給について以下の表が書かれています。 

 高額療養費 自己負担限度額

所得区分(※)

自己

負担割合

外来

(個人単位)

外来+入院

(世帯単位)

現役並み所得者

3割

44,400円

80,100円+(総医療費-267,000円)×1%(多数回該当の場合44,400円)

一般

1割

12,000円

44,400円

低所得者Ⅱ

1割

8,000円

24,600円

低所得者Ⅰ

1割

8,000円

15,000円

自己負担限度額は、個人単位を適用後に世帯単位を適用します。また、医療機関での支払いは、世帯単位の自己負担限度額までとなります。さらに以下の記載がワク囲みで書かれてありました。 

低所得者Ⅰ・Ⅱ(区分Ⅰ・Ⅱ)に該当している方は、あらかじめ医療機関に「後期高齢者医療限度額適用・標準負担額減額認定証」を提示すると、医療機関での支払いが低所得者Ⅰ・Ⅱ(区分Ⅰ・Ⅱ)の所得区分の自己負担限度額までになります。認定証は、お住まいの市(区)町村の後期高齢者医療担当窓口に申請してください。

やっとここまでたどり着いたという感じです。家賃収入がある母は低所得者には該当しないため限度額認定証は必要がない、ということになります。

結局後期高齢者の入院の場合で低所得者に該当しない場合、限度額認定証は不要ということはあれこれ見た中には書かれていませんでした。わずかに書かれていたのは一般の人は多分見ないであろう以下の厚生労働省の制度の説明資料でした。

高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成27年1月診療分から)厚生労働省保険局

※ 70歳以上の方は、所得区分の認定証がなくても、自動的に窓口での支払が負担の上限額までにとどめられます(低所得者の区分の適用を受けるためには認定証が必要です)。

 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000075123.pdf

 入院案内の担当者に、入院案内に書かれていなかった「後期高齢者医療被保険者証」は、①のどれにあたるのですかと聞いてみたところ、健康保険証等の「等」ではわかりませんか?ということでした。ネットで入院案内を検索すると細かく書かれている病院は少ないようでした。入院案内を受けながら、「私社労士なのですがこの書き方では私でもわかりません」と言ってしまいました。高齢者の夫婦で入院手続きをする場合などどのようにしているのか心配になります。

障害者のバリアフリーについては日本は非常に進んでいるということです。これからは高齢者対応のバリアフリーも増やしていく必要があると思います。今でもトイレに行くと、流すボタンがなかなか見つからず苦戦したりします。これは年を取っていくと苦戦することが益々増えるだろうなと思います。そういう意味で社労士の業務の範囲の中で存在するバリアを見つけ出してコンサルティングすることも行っていくことも役割かもしれません。