下記に取り上げられている、韓国における米軍基地内のゴルフ場やレストラン、スロットマシーンなどの米軍収益事業の問題、また軍人やその家族による英語講習の問題、さらに米軍関係者・外国人車両の取り締まりの問題は、日本にも共通の問題です。そして、そういう米軍基地が、日本や韓国にあることが、アメリカという国が、実は「覇権国家」であることを示しているように思います。
日本の降伏後、連合国軍が日本に進駐し、GHQが対日占領政策を実施したのは仕方がなかったと思います。でも本来、1952年の講和条約発効後に、連合軍は撤退する約束であったと思います。ポツダム宣言の第12条には「前記諸目的ガ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府ガ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルベシ」と定められていたのです。
でも、占領終結後も米軍は占領軍の特権の多くを維持し続けました。
講和条約発効後の米軍駐留政策に、天皇のいわゆる「沖縄メッセージ」がどれほど影響したかはわかりませんが、私は、宮内府御用掛の寺崎英成が、総司令部にシーボルトを訪ね、
”「天皇は、アメリカが沖縄をふくむ琉球の他の島々を軍事占領しつづけることを希望している。天皇の意見によると、その占領はアメリカの利益になるし、日本を護ることになる……」と語った・・・”
という「天皇の、沖縄メッセージ」は、実は、アメリカ側の用意したアメリカに都合のよいシナリオを、天皇や日本の戦争指導層が、受け入れたのではないかと、想像してしまいます。天皇に責めを負わせるかたちの、あまりにアメリカに都合のよいシナリオのように思うのです。天皇とマッカーサーの11回にもわたる話し合いの内容が、ほとんど公開されないのもそうしたことがあるからではないか、と思ってしまいます。
降伏の前後には、日本国内でも天皇の戦争責任の問題が話題にされています。
”天皇も無責任ではあり得ない。せめて退位されるくらいのことは考えねばならぬ。そういう空気が、いまは故人になった政治家、現存している政治家の口から漏れていた”
とは、終戦時の鈴木貫太郎内閣の書記官長迫水久常氏の述懐です。
また、幣原喜重郎内閣で憲法改正問題が討議されたさい、文相安部能成が、
”天皇は無答責というが、道徳的にも責任を負わないという意味なのか……承詔必謹といって国民に服従の義務を負わせながら、本体たる天皇が無責任であるというのは、矛盾であると思う”
と語ったと言います。当然の受け止め方であると思います。
天皇自身も、
”このさい私としてなすべきことがあれば、何でもいとわない”と終戦のさいに述べ、戦争犯罪人問題について、自身の退位で回避できないか、との趣旨を、木戸内大臣に語ったといわれています。
にもかかわらず、天皇の戦争責任は問われませんでした。天皇はなぜ免訴されたのか。
そうしたことも考えると、米軍の沖縄駐留や天皇の戦争責任の問題に関し、日米で詳細な打合せが行われたのではないか、と私は思ってしまうのです。根拠はありませんが。
先日、朝日新聞は、”密約シナリオ「絶対極秘扱」”と題する記事を掲載しました。沖縄返還に関する当時の佐藤栄作首相とニクソン大統領の共同声明は、実は日本国民はもちろん、アメリカ国民や世界中の人びとを欺瞞する声明であったということが、公開された外交文書によって裏づけられたということです。1994年、佐藤栄作首相の密使として交渉にあたった若泉敬京都産業大学教授が、すでにその著書「他策ナカリシヲ信ゼント欲ス」(文藝春秋)で、明らかにしていたことが、公開された外交文書で裏づけられたということです。文書には、核の持ち込みを疑う”新聞記者からの質問は頭から否定する”などという約束があったといいます。そろって公然と嘘をつき通すという約束だと思います。恐ろしいことだと思います。
そして、ウウライナ戦争の問題を論じるときに、そうした過去の事実をなかったことにして論じてはいけない、と私は思います。過去の歴史や戦争に至る経緯など、全体をみなければいけないと思います。
1月6日の朝日新聞の朝日川柳に「いそいそと土産持参 防衛費」というのがありましたが、日米首脳会談に臨む岸田首相の姿勢を適確にとらえた川柳だと思いました。
下記は、「在韓米軍 犯罪白書 駐韓米軍犯罪根絶のための運動本部」徐勝+広瀬貴子(青木書店)の米軍の収益事業関する部分を抜粋しました。
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トピック 米軍は金もうけに来たのか──米軍の収益事業
□ 駐韓米軍の年間売り上げ3千億ウォン
1995年3月17日、米第八軍関係者によると、駐韓米軍は全国約110か所の米軍部隊内に米軍施設として設置されたクラブ、洋食堂、スロットマシーン約6000台、7つのゴルフ場などの運営によって、94年1年間で計2900億ウォンの売り上げをあげたことがわかった。
これは韓国の30大財閥グループに匹敵する規模であり、1993年当時29位であった真露グループの売り上げ額の2倍に達する大きな商売をしたことになる。
駐韓米軍側はスロットマシーンで稼いだ金のうち、運営費を除く収益金から少なくとも約1千億ウォンを米国防相などに送金したことを公表した。
また施設利用者の韓国人の比率が80%程度であることも明らかになり、衝撃を与えている。鳥山(オサン)五五空軍基地ゴルフ場と城南ゴルフ場、龍山米第八軍司令部内の娯楽施設などは利用者の80~90%が韓国人であることが確認された。
韓米行政協定には、米軍娯楽施設は「米軍の構成員と軍属およびそれらの家族」だけのためのものと明示されているにもかかわらず、駐屯米軍側が「韓国政府の認める個人と機関」も利用できるという行政協定合意議事録を楯にして施設を利用できる出入証を乱発し、韓国政府とも摩擦をおこしている。
□ 第八軍による不法な──中学生から中年女性まで国籍不明英語の講習盛ん
韓国の主権が及ばない「サンフランシスコ」と呼ばれる米第八軍基地内で軍属や米軍部隊の招請契約者による不法な英語講習が盛んにおこなわれている。彼らは、原則として米軍部隊関連の業務以外に報酬を受けて仕事をしてはならないのだが、大学で講義をもつなど、韓国人学生を相手にした英語講習は公然の秘密になっている。
実際に毎週土・日曜日になると米第八軍の各ゲートと漢南洞一帯は4,5名ずつグループをつくる中高生たちで混みあっており、子どもたちを送り迎えする親の自動車も目につく。
このような現象は大邱駐屯米軍基地でもおきていて、米兵の家族らに基地内外の宿舎で英語を習う韓国人学生は大邱だけで300~400名にのぼるほど、深刻な問題になっている。
その講習費は兵、下士官、将校によって異なり、受講者が4、5人ずつグループを組んで1週間に2時間、1ヶ月4回で、1時間当たり1万ウォンから2万5千ウォンまでと多様である。
問題になっているのは、まず第一に講師のなかには、米国で大学を出た将校もいるが、大部分は高等教育を受けていない兵士やその妻なので、体系的な教育ができるのかということと、大部分の教師が軍人であるためGI英語(軍人の間だけで通用する言語)しか学習できないということである。
二番目として、英会話を習うことよりアメリカンドリームに酔って「米国文化」に浸ってしまう感受性をもつ生徒がほとんどのため、低俗な文化や低俗言語が無批判に受け入れられてしまうことが憂慮される。
米兵が夫婦で講習する場合、一月の収入は500万ウォン程度になるため、韓国勤務を延長申請する例が多い。これは韓国を「くいもの」にしていることにほかならない。
□ 米軍関係者・外国人車両取り締まりのむずかしさ
ソウル市は、いままで1700台の駐韓外交官所有車両、および3000台の米軍所属車両の不法駐停車に対し罰金、過料の代わりに警告状だけを出して市民から不公平な取り締まりだという指摘を受けている。
このためソウル市は、1995年11月1日から外国人違反車両が交通に支障を与えると判断された場合は、牽引して別途に費用を賦課する一方で、取り締まられた車両が罰金、過料などを滞納した場合、外務部にそのリストを通報して措置を求めるなど 取り締まり方法を強化した。
しかし実際には、米兵と軍属、その家族などが相当数居住しているため、米第十九支援団と米第二十支援団が駐留する大邱地域では、「ことばが通じない」という理由で、外国人の違反車両を摘発してもそのまま放置されるなど、取り締まりができないでいる。
取り締まりにあたっている警察官たちは、事前に政府レベルで外国人に向けて広報しておき、違反者には韓国語で違反事実を知らせ、理解できない場合は英語で記したカードなどを提示、取り締りをするのが適当だという。
一般市民は、韓国人とアメリカ人を交通取り締まりにおいて差別することは誤った慣行であると指摘しており、民族の自尊心回復という次元からも英語ではなく韓国語で取り締まり活動をすることが望ましいという世論が形成されている。
大邱南部警察署など市内警察では外国人車両の取り締まり策として、最近、交通取り締まりに必要な八つの英会話、八つの主要違反と交通事故処理に必要な英語表現を全警察官に熟知させるよう指示した。
□ 金のなる木、米軍基地内ゴルフ場
大邱第三次循環道路の敷設の障害になっている大邱南区大明五洞、キャンプ・ウォーカー内のA3飛行場の移転要求が激しさを増すなか、一部の地元の人たちが米軍基地内ゴルフ場に出入りしつづけたため、市民の非難を受けている。
「韓米親善ゴルフ大会」のときには、市民の厳しい批判のなかで100人あまりの地元の人たちが参加し、市民の自尊心を傷つけもした。
このようななかで、米第十九支援団と米第二十支援団が、ゴルフ会員権の取得に血眼になった地元の有力者に対し登録台帳にもない感謝状を乱発し、ゴルフ会員審査の際にはそれらを無効とした。このため地元の有力者は米軍の詐欺行為にひっかかって恥をさらしたと非難を受けている。
彼らがゴルフ会員権取得のために便宜をはかってもらうために、米第十九支援団司令官と米第二十支援団司令官など米軍将校と家族170人に観光バス8台と経費いっさいを提供、慶州観光をさせた事実も明らかになり、さらに市民の怒りをかっている。
一方、米第二十支援団はゴルフ会員審査で年間利用回数が関連ゴルフ場28回、クラブ41回以下の会員に対しては、収益性が低いという理由で資格をとりげてその数だけ利用実績の高い韓国人を会員として補充している。地元の有力者が、金のなる木である米軍部隊ゴルフ場を今後も利用する限り、問題になっているA3飛行場の移転は絶対に不可能である。また市民はゴルフ場会員権の自主返納など韓国人による米軍施設の利用自粛を強く求めている。
□ 米軍基地内食堂に出入りするための特権証
釜山ハヤリア部隊など駐韓米軍基地内食堂を利用する一部の有力者が、年間100億ウォン以上を食費として支出しており、外貨を浪費しているばかりか民族的な恥辱をさらしている。
ときに彼らは(米軍基地に自由に出入りできるという)身分を誇示する目的で食堂出入証を発給してもらうために米軍関連福祉会に相当な寄付金を出しており、一部の人は軍関係者の家族らにワイロを渡して米軍捜査隊の捜査を受けるなど物議を醸した。
米軍基地内食堂の韓国人会員は釜山に約100人、大邱に約300人、ソウルに約1000人いることがわかった。最も多い会員数を確保したのはハヤリア部隊将校食堂のヘーブンクラブであり、韓国人会員は118人で一日平均40~50人が利用し、年間に払う食費(一回平均1万3000ウォン)だけでも、11億ウォンにのぼると推定されている。また年会費(一人当たり25万ウォン)だけでも2900万ウォンになり、少なくとも年間浪費される食費が全国では100億ウォンになる。これには国民感情を考慮して政府次元で強力な制限措置がくわえられなければならない。
□ 釜山米軍部隊の商業的バザー
釜山鎮(プサンジン)区の米ハヤリア部隊が基地内で物品販売を目的とするバザーを主催し、釜山鎮警察署に経費の支援を含む積極的な協力を公式要請した事実が明らかになり物議を醸した。
これに対して釜山鎮警察署は、ウルグァイ・ラウンド妥結など米国に対する感情が悪化しているなかで学生のデモ発生が憂慮されるために、消費的傾向の強いバザーはほんとうの韓米間の親善にはならないと米部隊の要請を丁寧に断る一方、バザーをおこなうこと自体を自粛するように求めた。
ハヤリア部隊のバザーは、毎年、春と秋の二回開かれているが、韓米親善という本来の目的はなくなり、米軍軍需物資と米国製品を高価格で販売する場と化して市民の非難を受けていた。
また、ハヤリア部隊側は釜山米国人地域奉仕会の影響力を利用して、バザーを主管する韓米親善祝委員会と契約を締結し、電気料、トイレ使用料、ゴミ清掃料などの経費まで負担させてバザー1回につき4000万~5000万ウォンの収益を上げており、米部隊側が韓米親善を口実にして釜山市民を相手に収益事業をおこなっているという疑惑を生んでいる。