日々の感じた事をつづる
永人のひとごころ
声の交差点 消えた玉ねぎ
声の交差点
6.28河北新報
収穫直前・消えた玉ねぎ
三浦恭夫81歳
多賀城市・無職
*
畑に出向いたのは何日振りだろう。自宅近くの市民農園の一画で、道楽の野菜作りを始めてから9年目になる。よる年波には勝てず、畑に出向くのは月にかぞえる程になった。
「長い海外旅行でしたね」と大きな声がする。冗談上手の向かいの保育所の方だ。近寄ってきて、「玉ねぎの収穫時期なので、農園主から電話してもらおうと思っていました。元気で良かった」とおっしゃる。
老体を心配してくれる声が、大玉ねぎの揃う畑に響きわたった。やさしい心遣いが有り難かった。
天気が良くなったら掘ろうと思っていて、つい放っておいてしまった玉ねぎ。なんと立派に育っていたことか。よくじつ掘って猫車で運ぶことにした。
翌朝6時、静かな朝だった。さて、と畑に行き目を疑った。あの上出来の玉ねぎがそっくり消えて、お椀型の穴が並んでいる。50個は超えていた。信じられない光景に立ちすくむほかなかった。半年かけて育てての収穫目前だった。
持ち去って行ったお方はどなたか存じ上げないが、お口に合いましたか?あんなにたくさんどなたと食べるのでしょう。
無駄にしないでじっくり味わってくださいね。
実はあの玉ねぎ、近々「こども食堂」で食べてもらう手はずになっていたのです。
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