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長男の処遇(その2)

「・・・・・」まだ無言である。

『私が大幡に来た時あなたは11歳だよ。この叔父がどんな働きをして来たか、あなたが見て来て一番解るはずだろう!?・・・“双方の話を聞く”、と言うのは事情の知らない人が使う言葉で、あなたがこの叔父に言う言葉ではないだろう!!』

「・・・・・」

『少なくても国士舘入学から、今日までの6年間、あなたから私に話らしい話は一度も無かったじゃないか!?、叔父さん、よろしくお願いします。とか、会社の状況はどうですか?とか、父があのとおりで、何か叔父さんを困らせていませんか?とか、何かあるのが普通だろう?』

「・・・・・」

『黙っていないで何とか言ったらどうだ!』

「叔父さんは高い声を出すから・・・」

『当たり前だろう、大人らしくもないあなたの言動を怒って居るのだ。』

「私はどうすれば良いのですか?」

『両親はなんと言ってるの?』

「今の会社を直ぐ辞めて帰ってきて大幡建設工業の社長として跡を継ぐように・・・と」

『あなたはどう思っているの?』

「その積りでいます」

『馬鹿な事は言いなさんな!倒産会社はもう大幡家の事業ではなくなっている。別会社の設立も間も無く完了の予定だ。全体として、12億円の負債を抱えて、どうやって払っていくかの大問題になっているのだよ。

自殺による死人まで出ている。行きがかり上、私が連帯保証人として、全負債を抱え、別途新会社を作ってやっていくしかないし、その方向に裁判所も、債権者も社員もまとまっている。

あなたには手に負えない問題だよ。第一この叔父の苦労を台無しにする気か?、何のために大学へやり、就職まで世話したか解っているのか?、あなたが他所で修業し、大幡の会社が正常に動いているならば、ころあいを見て退職し、跡継ぎとして帰ってくるのは本来の予定だったし、その旨〔中途で家業を継ぐために退職させていただく〕を説明した上で今の会社に採用してもらったイキサツもある。

だが事情が変わった今は、このまま今の会社でずっとお世話になり、努力すればいいのだ。まだ23歳のあなたはここで泥を被ることが無いように、この叔父が頑張っているのだよ。ありがたいと思って黙って新潟へ帰り、一生懸命自分の為に努めなさい!

二度と両親の見栄から来る話を信用しちゃだめだよ!自分の人生を考えろ。大幡の犠牲は俺一人でたくさんだからな!!ここで途中から同席した裁判所から選任された整理委員二名から

「あなたは軽く考えているけれど、債権者に一度も頭を下げずに姿をくらました形の大幡光二郎を“許せない”とイキまいている債権者の元を・大幡の長男です・と歩いたら、それこそ殺されるか、大怪我させられてしまうぞ!」といわれ、事の深刻さと大きさを思い知ったようだった・・・長男の処遇(その三)へ続く。





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