くりっく365において、ランド円でマーケットメーカーの一社であるコメルツ銀行が異常レートを提示し、それで一部顧客がロスカットとなったという事件があった。その件は、それに関する取引は申し出によりキャンセルになるということで一件落着したのであるが、その再発を防ぐための新措置(PDF)も昨日発表された。この発表と、他の新聞いくつかの記事を総合すると、新措置というのは、一種の値幅制限であって、通貨ペアごとに一定の割合のレンジを設け(2~3パーセント)ある期間内においてその幅を越えるようなレートがマーケットメーカーから提示された場合は、自動的にくりっく365でのレート提示を停止して、異常レート発生を防ぐというものである。
一見よさそうに見えるが、私に言わせれば、大改悪である。前にも書いたように、金融の大事件においては2パーセント(ドル円で2円)の値幅のレート変動が起きることは充分に考えられる。どの程度の期間での変動率なのかが明示されていないのも問題であるが、LTCM破綻の時はドル円で3日で23円の変動があったわけで、それクラスのことが今後起きないとは言えない。他の相対業者は、インターバンクのレートに基本は従っていて、値幅制限などは行っていないわけで、くりっく365だけがそこでレートを停止したら、そこの顧客は、取引もできず、ストップもつかない状態になってしまうわけでまさにパニックだろう。その後、今回のように、そのレートが正常だったかどうか1日ぐらいかけて内部で議論してからレート再開ということになるのだろうか?週またぎのポジションがリスク含みであることはFXをやるものの常識であるが、これは、例えれば、いつ突然の週末がやってくるかわからないシステムなのである。
くりっく365も上の声明で「本措置の導入の結果、マーケットメーカーの錯誤でも、不適切なレート提示でもなく、市場環境の急変を反映した市場実勢であったとしても、直前の相場から大きく動いた場合において、極めて稀ではあると思われますが、レート提示がなされない状況が発生する可能性がありますことをご理解願います。」と逃げをうっているが、「極めて稀」であっても起こったら一大事である。
なぜなら、錯誤による異常レートは、それで起こったローカルな取引を後でキャンセルすればそれで済むが、市場の異常な変動による大きな値幅変動時にレートが止まってストップロスが執行されなかった場合、そのストップをさかのぼって執行することは非常に困難になる。変動してしまったレートはグローバルなものであり、その分の損失をどこかが被ることになるからだ。(だから、くりっくも上のような逃げをうっている)
つまり、このような取引所取引にとって、真のリスクは、錯誤による異常レートで変な取引が「行われる」ことではなく、大きな変動時に正常な取引が「行われない」ことのはずなのだ。今回の「新措置」は、前者を防ぐために、後者を発生させるという、まったくリスク管理の上において真逆のものである。私のくりっく365に対しての評価は前に書いたことと変わらないどころかさらに低下したというのが正直なところなのである。
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GEAB39号(英文)について続報を書くと書いたままになっていました。多忙でその後が続かなくて申し訳ないことです。
幸い、2chで無料版を翻訳してくださった方もあり、有料版の内容も今回はそれとほぼ同様であることがわかりましたから、そちらをご覧ください。また、ヤスの備忘録さんも有料版から若干の紹介記事を書いていらっしゃいますのでそちらも合わせてご参照を。
レポートで、今後、インフレ・増税・国家破綻のどれかに陥る可能性が在るとされた国は、「まずはアメリカ・英国・アイルランド・アルゼンチン・ラトビア、そしてさらにもしかしたらスペイン・トルコ・ドバイ・日本」です。(2chの翻訳では「アメリカ」が落ちています。またそれらから2,3の国と翻訳されていますが、そうではなく、上の三つの将来のパターンのうちいくつか、の意味でしょう。)
いずれにせよ、LEAP/E2020の予測では、ここからがむしろ危機の本番という予測です。私もまったく同感であり、いつも示しているように、米国の膨大なマネー供給がほとんど働いていないことは間違いありません。大きく調整を繰り返しながら、数年後の破局的な段階めがけて落ち込んでいるのが今だと信じています。
前にも書きましたように、短期年末あたりまで調整、中期春先まで上昇、長期その後の大崩落、というシナリオでポジションを作っていく予定ですが、LEAP/E2020の記事を見てそれがさらに確信が持てた次第です。なお、GEAB40号あるいは41号にて、金についての詳細なレポートがなされるそうですので、期待していたいと思います。
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