改革派の政治家こそ戦争をしたがる。大国にそそのかされ、お金のために。
という、萩尾望都さんが「東の地平、西の永遠」で示した視点は、今にして重みを増す。
彼女の作品は、後になるにつれ、リアリズムを重視したためか、言い訳や先送りで物語が長くなり、絵柄も硬直化していった印象があるのだが、初期の短編は弾むようなポップな作風の中に、重いテーマを果敢に取り込んだものが少なくない。
父とは別の男を忘れられない母を子どもが殺す「かわいそうなママ」、亡くなった母が縫ってくれたゆかたを思い返す少女の「小夜の縫うゆかた」、幼い頃に両親が離婚し、ノイローゼ気味の母に育てられた少年が、既に新しい家庭を築いた作家の父を訪ねる「秋の旅」。
結婚や離婚、死別、親のない子の境遇。さまざまな家庭の問題を扱った作品のうち、生き生きと明るく、ほのかなエロティシズムさえ漂うが、ひときわ深刻な問題を扱っているのが1971年の「セーラ・ヒルの聖夜」である。
ロンドンに住む少女が、祖母の家で冬休みを過ごすことになり、田舎町セーラ・ヒルへ向かうが、その町には彼女と瓜二つなガキ大将がいた—
2人は実は双生児で、赤ちゃんの頃に両親が事故死し、それぞれ養護施設から別の家庭に引き取られていったという、驚きの事実を知ることになる。
私は松本清張の「社会派」推理小説よりも、萩尾望都の1970年代の作品群に、開かれた社会の空気を感じる。他人同士の男と女が出会い、家庭を築くことこそ、あらゆる文化・宗教・社会問題の根源にある、小さいが、大きな一歩だということを、若き萩尾望都は完璧に表現した。その世界は、少女マンガの読者層を超え、少年~青年を魅了した。
一方、萩尾望都と一時同居し、競って新しい少女マンガを作り上げた竹宮惠子が、長編『風と木の詩』で描いたのは、全寮制の学園内で娼婦のように暮らすジルベールと、転校生セルジュの、男同士の激しい恋愛。
やがて駆け落ちのように学園を離れた2人は、生活の壁にはね返され、ジルベールを死なせてしまったセルジュは「壮絶な孤独の」後半生を余儀なくされる。
ここには、社会をバビロンと見なす、逃避的・自己愛的な頽廃が感じられ、萩尾望都の作風と好対照を成しているといえよう。
いずれにせよ、それらを最後として、少女マンガが人生の教師である時代は去った。今の私は、わずかな例外を除き、ほぼ音楽一色に塗りつぶされた原理主義の生活である—
iTunes Playlist "2014 Christmas Playlist" 57 minutes
1) Another Christmas Song / Stephen Colbert (2008 - A Colbert Christmas: The Greatest Gift of All)
2) Christmas (Baby Please Come Home) / Darlene Love (1963 - A Christmas Gift for You from Phil Spector)
3) Sleigh Ride / Leroy Anderson (1948 - The Leroy Anderson Collection)
4) 2000 Miles / The Pretenders (1983 - Learning to Crawl)
5) White Christmas / The Drifters (1954 - Single)
6) Have Yourself a Merry Little Christmas / Mel Tormé (1990 - Home Alone OST)
7) Joy Tracey Thorn (2012 - Tinsel and Lights)
8) Come Thou Font of Every Blessing / Sufjan Stevens (2002 - Hark! Songs for Christmas, Vol. II)
9) I've Got My Love to Keep Me Warm / Dean Martin (1959 - A Winter Romance)
10) シャ・ラ・ラ / サザンオールスターズ (1980 - Single)
11) Christmas Song (Chestnuts Roasting On an Open Fire) / Carpenters (1978 - Christmas Collection)
12) Thanks for Christmas / The Three Wise Men (1983 - XTC: Rag & Bone Buffet)
13) Christmastime Is Here (Instrumental) / Vince Guaraldi Trio (1965 - A Charlie Brown Christmas)
14) Bach: O Jesulein süss, BWV493 / Choir of King's College, Cambridge (2007 - Classic Christmas Carols)
15) Another Lonely Christmas / Prince & the Revolution (1984 - The Hits/The B-Sides)
16) The Christmas Waltz / She & Him (2011 - A Very She & Him Christmas)
という、萩尾望都さんが「東の地平、西の永遠」で示した視点は、今にして重みを増す。
彼女の作品は、後になるにつれ、リアリズムを重視したためか、言い訳や先送りで物語が長くなり、絵柄も硬直化していった印象があるのだが、初期の短編は弾むようなポップな作風の中に、重いテーマを果敢に取り込んだものが少なくない。
父とは別の男を忘れられない母を子どもが殺す「かわいそうなママ」、亡くなった母が縫ってくれたゆかたを思い返す少女の「小夜の縫うゆかた」、幼い頃に両親が離婚し、ノイローゼ気味の母に育てられた少年が、既に新しい家庭を築いた作家の父を訪ねる「秋の旅」。
結婚や離婚、死別、親のない子の境遇。さまざまな家庭の問題を扱った作品のうち、生き生きと明るく、ほのかなエロティシズムさえ漂うが、ひときわ深刻な問題を扱っているのが1971年の「セーラ・ヒルの聖夜」である。
ロンドンに住む少女が、祖母の家で冬休みを過ごすことになり、田舎町セーラ・ヒルへ向かうが、その町には彼女と瓜二つなガキ大将がいた—
2人は実は双生児で、赤ちゃんの頃に両親が事故死し、それぞれ養護施設から別の家庭に引き取られていったという、驚きの事実を知ることになる。
私は松本清張の「社会派」推理小説よりも、萩尾望都の1970年代の作品群に、開かれた社会の空気を感じる。他人同士の男と女が出会い、家庭を築くことこそ、あらゆる文化・宗教・社会問題の根源にある、小さいが、大きな一歩だということを、若き萩尾望都は完璧に表現した。その世界は、少女マンガの読者層を超え、少年~青年を魅了した。
一方、萩尾望都と一時同居し、競って新しい少女マンガを作り上げた竹宮惠子が、長編『風と木の詩』で描いたのは、全寮制の学園内で娼婦のように暮らすジルベールと、転校生セルジュの、男同士の激しい恋愛。
やがて駆け落ちのように学園を離れた2人は、生活の壁にはね返され、ジルベールを死なせてしまったセルジュは「壮絶な孤独の」後半生を余儀なくされる。
ここには、社会をバビロンと見なす、逃避的・自己愛的な頽廃が感じられ、萩尾望都の作風と好対照を成しているといえよう。
いずれにせよ、それらを最後として、少女マンガが人生の教師である時代は去った。今の私は、わずかな例外を除き、ほぼ音楽一色に塗りつぶされた原理主義の生活である—
iTunes Playlist "2014 Christmas Playlist" 57 minutes
1) Another Christmas Song / Stephen Colbert (2008 - A Colbert Christmas: The Greatest Gift of All)
2) Christmas (Baby Please Come Home) / Darlene Love (1963 - A Christmas Gift for You from Phil Spector)
3) Sleigh Ride / Leroy Anderson (1948 - The Leroy Anderson Collection)
4) 2000 Miles / The Pretenders (1983 - Learning to Crawl)
5) White Christmas / The Drifters (1954 - Single)
6) Have Yourself a Merry Little Christmas / Mel Tormé (1990 - Home Alone OST)
7) Joy Tracey Thorn (2012 - Tinsel and Lights)
8) Come Thou Font of Every Blessing / Sufjan Stevens (2002 - Hark! Songs for Christmas, Vol. II)
9) I've Got My Love to Keep Me Warm / Dean Martin (1959 - A Winter Romance)
10) シャ・ラ・ラ / サザンオールスターズ (1980 - Single)
11) Christmas Song (Chestnuts Roasting On an Open Fire) / Carpenters (1978 - Christmas Collection)
12) Thanks for Christmas / The Three Wise Men (1983 - XTC: Rag & Bone Buffet)
13) Christmastime Is Here (Instrumental) / Vince Guaraldi Trio (1965 - A Charlie Brown Christmas)
14) Bach: O Jesulein süss, BWV493 / Choir of King's College, Cambridge (2007 - Classic Christmas Carols)
15) Another Lonely Christmas / Prince & the Revolution (1984 - The Hits/The B-Sides)
16) The Christmas Waltz / She & Him (2011 - A Very She & Him Christmas)
萩尾望都作品集〈4〉セーラ・ヒルの聖夜 (プチコミックス) | |
萩尾 望都 | |
小学館 |