無意識日記
宇多田光 word:i_
 



『SCIENCE FICTION』というタイトルに未だに戸惑っている。宇多田ヒカルとSF。かなり遠い。…宇宙よりも遠い?…場所?(来月からEテレで放送されるんだってさ。良作だからオススメ。まーそれはさておき。)


私がヒカルのキャリアの中でいちばんSFちっくだったなと思うのは『You Make Me Want To Be A Man』のPVなのだが、正直申しましていちばん引っ張り出してきて欲しくない作品だ。Blu-rayで出し直してくれるというのなら即座に購入するのだけど、プロモの前面に出されると海外で炎上しそうで怖いのだ。まぁ今更19年前のビデオを弄くり回すようなことはないとは思うけどね。

他に思い当たるのは『Can You Keep A Secret ?』のPVだろうか。ロボットが出てきて“少し・不思議”なストーリーを描く小品だが、これぞ日本のSFというか、星新一や筒井康隆が書きそうなそんな感触(…小松左京は書かないかな?)なので、これを以てして『SCIENCE FICTION』だと言うのならバッチリだろう。そういえばその『Can You Keep A Secret ?』への20年越しのアンサーソングである『誰にも言わない』は単曲配信だったのにMVが作られていないから、これを機にMV作ってくれたら嬉しいが、流石にちょっと時間が経ち過ぎ? いや作ってくれるなら私は全く気にしませんぞ。

更に「少し不思議」を推し進めるなら『気分じゃないの(Not In The Mood)』をメインに据えてくる事も有り得る。2021年12月28日に宇多田ヒカルが体現した少し不思議な物語。だがこれ、何度も強調されてる通り、歴とした実話なんだよね。FICTION=虚構、架空の作り話でないといけないから、『SCIENCE FICTION』というタイトルに真っ向から反する。雰囲気はバッチリなのに不思議なもんだ。勿体ないな。

じゃあ『SCIENCE』の方はどうかといえば、いちばん直接的なのは『君に夢中』の『科学的にいつか証明される』だろうか。だが証明されてしまうとそれは真実なので虚構ではなくなる。嗚呼、非常に難しい。

そもそもヒカルは将来の進路に漫画家や小説家と共に科学者も考えていた人なので、歌詞の其処彼処にそれっぽいフレーズは出てきたりする。『Let Me Give You My Love』のようなコッテコテのR&Bテイストでも『mixing gene pools』だの『Our chemistry is groundbreaking』だの『into a melting pot』だのといった生物・化学用語を歌って楽しんでいたからね。でも、虚構にはならんのだ。科学を持ち出したらそれは真実の側の話。SF、エスエフと言った時の「一見科学的な鎧で外側を固めていてリアルっぽく見せてるんだけど結局はただの嘘」というある種の冗長な知的遊戯を楽しむ為には、ヒカルの歌は常に現実に対して切実過ぎるのである。だからこそ苦しいときに寄り添ってくれる優しい歌になるのだけど。

SFによって救われた、と人が言うときそれは大概が現実からの逃避先として、だろう。しかし前向きなケースもあるぞ。ロボットや人工知能といった分野は、SFで描かれることでこどもたちが夢を見て、それを大人になってから実現させる、みたいな事が多い。「鉄腕アトム」のせいでロボット工学の分野に進んだ人は数知れず。キャプテン翼でサッカーし始めるのと大して変わらないと言えば変わらないけど、架空の作り話が原動力となって現実を改変していくのはSFの醍醐味のひとつなのだ。

でもそれは宇多田ヒカルの芸風じゃないのよねぇ。夢を見るより目の前の現実を見て、そこにあるものを愛してというのが根本的な世界観であって、余りにもSFと掛け離れている。なのに25周年の集大成になっているかもしれない初のベストアルバムのタイトルが『SCIENCE FICTION』だというのは、なかなかに咀嚼が難しい。

それでも無理矢理に考えるなら、コンサートのオープニングかなぁ? 『Bohemian Summer 2000』では宇宙から(通信衛星から?)メールが届いてたし、『WILD LIFE』では宇宙船に乗ったくまちゃん(ヒカル)が不時着していた。ああいうイメージだとしたら…本編と殆ど関係なかったぞあいつら!? SFっぽいのはあそこだけで、コンサートは別にそういうイメージじゃなかったわ。まさか、今回もその程度のことだったり…する…のか? ツアーのオープニングにワームホールっぽいCGを使ってSF要素はい終了!って??

まぁとにかくだ、こうなったら早くヒカル本人のコメントがひと言でも欲しいとこだけど、未だに一言一句アウトプットしてないからな! 次の投稿がハロウィンのコスプレだったらと思うと気が気でないのだが(まだ諦めていないのかおぬしは)、ひとまず毎日待っておきましょうかね。 

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『SCIENCE FICTION』という名を冠してツアーを行うとなれば、それなりに近未来的な企画が並行すると期待されてしまうよね。こんなところでもハードルは上がる。つくづく茨の道を行く気だな25周年は。

パッと思いつくのは、コンサート中継のバーチャル化だ。今までのステレオ音声平面画面から、立体音響×VRをしかもライブストリームで、というのがどうしたって期待される。

一部は既に『40代はいろいろ♫』で実践されている。SONYの最先端技術、360RA Liveで生中継されちゃいましたね。あれを今度はフルサイズのコンサートでやろうとする、のかな。

前回は狭いスタジオで4台(だっけ?)のカメラでの撮影ということで、そこまでの規模ではなかったが、流石にアリーナ公演をとなるとかなり更に大変になるだろうことは素人でも想像できる。

更にここに、3DVRまで掛け合わせることができるのか?という話をまぁ7年以上ここで繰り返してきてる訳だけど、流石にそれはまだ時期尚早かな。

360RA Liveと3DVR、どちらか片方しか取れないとなれば自分は即座に360RAの方を取りたい。シンプルなバンドサウンドだった『40代はいろいろ♫』と異なり、フルサイズのコンサートとなるとそこにストリングスや二人目三人目の鍵盤奏者、場合によってはホーンセクション、望みは薄いがバックコーラス隊など、かなりの大所帯になることが予想される。そうなってくると360RAの明確な定位はかなりの威力を発揮するだろう。これは実に楽しみになる。

だが、所謂一般ニュースに載せるにあたって関心を引けるのは圧倒的にVRの方なのだ。もうこれは仕方がない。そこはそうそう覆らない。なので、ツアーの話題性や成功を願うなら、現実的にはVR推しが正解になるわな。

VRといえば2018年の『Laughter in the Dark Tour 2018』の時点で既にプレステから横浜アリーナ収録の『光』&『誓い』が配信された為コンサート会場でどんな風になるかは想像のつく人も多いだろう。当時店頭デモもやっていた。あれが観客を入れた状態で、となると非常に見栄えがいいわね。

VRの為にどんなガジェットを使ってくるかはまだわからないが、そういった企業とのタイアップや業務提携も視野に入るわよね。どれくらいの規模や精度でその『SCIENCE FICTION』ぶりを見せてくれるのか、勿論まだそういった技術の導入が決まっている訳ではないけれど、どうしてもこうやって妄想が膨らんじゃうのよね。どうか、名前負けしませんように。(とても勝手な祈願です)

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