トシの読書日記

読書備忘録

シニカルなロマンチスト

2009-07-22 17:11:29 | た行の作家
太宰治「おしゃれ童子/走れメロス」読了


以前、「走れメロス」だけ読みたくて買ったこの短編集だったんですが、太宰治マイブームのこの時とばかりに全部読んでみました。


収録作は「燈籠」「満願」「富嶽百景」「葉桜と魔笛」「新樹の言葉」「おしゃれ童子」「駆込み訴え」「走れメロス」「清貧譚」「待つ」「貧の意地」「カチカチ山」の12編です。


どれもなかなかにおもしろかったです。特によかったのは「葉桜と魔笛」「おしゃれ童子」「駆込み訴え」「走れメロス」「待つ」「カチカチ山」あたりですね。

「葉桜と魔笛」の病気の妹に対する姉の愛、そして父。美しいです。「駆込み訴え」のキリストに対するイスカリオテのユダの嫉妬。これも読んでいてさもありなんという感じで、人を充分に納得させるものがあります。そして「走れメロス」。これは説明の必要がないでしょう。最後のところ、メロスがセリヌンティウスに「私を殴ってくれ」と言って殴らせ、またセリヌンティウスもメロスに殴らせるシーンは何度読んでもじーんときます。


この短編集は、本作家の中期の作品ということで、前に読んだ「斜陽」とか「人間失格」あたりとは、かなり趣を異にしています。それほど退廃的な感じもなく、むしろ生き生きとしたイメージの作品すらあります。


太宰の作品をなんだか逆にたどって進んでしまっている感じですが、最後は初期の作品である「晩年」あたりを読んで、マイ太宰ブームを終結させようと思っております。

コメントを投稿