トシの読書日記

読書備忘録

過去と未来を行き来して

2020-03-10 15:35:41 | た行の作家



高山羽根子「オブジェクタム」読了



本書は2018年に朝日新聞出版より発刊されたものです。


ずっと以前に中日新聞の「大波小波」で紹介されていて、最近、読みたい本のリストの中から見つけて買ってみたのでした。


これはちょっとしんどかったですね。読みやすいことは読みやすく、独特の世界を作っているところはうまいなぁと感心したんですが、どうも自分にはピンとくるものがありませんでした。


読後、アマゾンの本書のレビューを見ていたら、評論家の小谷野敦氏の記事がありました。この方、アマゾンの他の小説のところでも投稿しているのをちょいちょい見かけるんですが、本書のレビューで「何が言いたいのかわからない」とあったんですね。びっくりしましたね。小谷野氏の他のレビューを見る限り、結構鋭いところを突いていて、なかなかの論客だと思っていたんですが、この人はこんな小説の読み方をしていたんですね。


「何が言いたいのかわからない」小説なんてのは山ほどあります。思い付くだけでも村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」、吉田知子「ユエビ川」、小池昌代「怪訝山」、坂口恭平「けものになること」等々、枚挙にいとまがありません。自分が思うに、およそ小説というものは、「何が言いたいのか」ではなく「何をどう表したいのか」ではないかと思うんですね。そこに自分の感覚(生理的なものも含めて)やら感性にマッチするものを「面白い」というのではないでしょうか。


そういった意味で考えると本作品は自分にはちょっとどうだったかな、という感じです。しかし、併録されていた「L.H.O.O.Q](なんでこんなタイトルなのか、さっぱりわかりませんが)という短編、これは面白かった。不思議な空気が漂う作品で、「へぇー」と思いながら読みました。


最近は、なんだか、読書力というものがもしあるとするなら、それが落ちてきているようで、ジョゼ・ルイス・ペイショットの「ガルヴェイアスの犬」とか、カルロ・ロヴェッリの「時間は存在しない」(これは小説ではないんですが)なんかを少しだけ読んでどうにも読み進められず、放り出してしまってあります。以前の自分なら、多少面白くなくても、いつかこの苦境から脱出できるだろうと期待をもって頑張るんですが、辛抱できないんですね。困ったもんです。

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