トシの読書日記

読書備忘録

民話を昇華させる力

2010-09-20 15:29:19 | ま行の作家
ガブリエル・ガルシア・マルケス著 鼓直/木村栄一訳「エレンディラ」読了



コロンビアのノーベル賞作家、マルケスの短編集です。本書は、本作家の代表作である「百年の孤独」と「族長の秋」との間に執筆されたということです。

マルケスに関しては、苦い思い出があります。何年前だったか、マルケスがノーベル文学賞を受賞した際、代表作である長編「百年の孤独」を読もうとしたんですが、あまりの難解さに三分の一くらいで匙を投げたんです。南米のブエンディーアという一族の興亡を描いた大作なんですが、親と子が全く同じ名前だったり、突然何の脈絡もなしに場面が変わったりと、とてもついていけませんでした。


なので、姉から本書を薦められたときも、「え~マルケス~?」と尻込みしたんですが、「とにかく面白いから」と言われてこわごわ読んでみたんです。


で、なかなか面白かったです。マルケス独特の世界観はそのままに、「百年――」よりもずっと読みやすく、わかりやすい話ばかりでした。
というか、着想が奇想天外ですごいですねぇ。思わず笑ってしまう場面もあったりして。

話の題材が、南米に古くから伝わる民話を元にしているようで、それをじっくり読ませる小説に仕立て上げるところ、さすがです。ちなみに表題の「エレンディラ」というのは本書に収められている中編「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」(長い!)から取られています。


マルケス、ちょっと見方が変わりました。しかし、それでも「百年の孤独」は読む気になれませんが(笑)

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