さらに店頭はこんな塩梅、効果のほどはどうなのだろう。
さらに店頭はこんな塩梅、効果のほどはどうなのだろう。
笠間でのいなり寿司の食べ歩き、そばいなり2つではかえって空腹感を誘ってしまい、そのまま「茶房きむらや」へハシゴいなり寿司に。一芸勝負が中心の笠間のいなり寿司の店の中で、ここは8種類を揃えバラエティの豊富さを売りにしている。ひとつ130円均一、店頭売りのをその場で会計して店内でいただくスタイルで、12時を回ったぐらいなのにショーケースにはすでに完売の品も。朝から仕込んで並べた先から、人気の具材のは売れてしまうとかで、残りわずかの品をあわてて選んでみた。
ここのいなり寿司は上が開いていて、具材が見えるのが楽しい。刻んだカリカリ梅をまぶした「梅稲荷」はシャクシャクと歯ごたえよく、暑い中の散策で酸味が食欲をそそる。「高菜稲荷」は高菜めしのピリッとしたアクセント、「れんこん稲荷」はダシで炊いたレンコンと添えた昆布の塩気が嬉しい。イチオシは「みょうが稲荷」で、酢漬けにしたミョウガが猛暑を吹っ飛ばす清涼感。甘く煮付けた揚げはどんなご飯にも、めしの友にも合うようで、いなり寿司は握り寿司よりも汎用性が高く感じられる。
そして、そばいなりと並ぶ笠間のいなり寿司のもうひとつの特徴は、具材にクルミを使うことだ。笠間の特産でもあり、笠間稲荷の別名「胡桃下稲荷(くるみがしたいなり)」にも所以がある。店頭の「くるみ稲荷」はすでに完売だったが、せっかく来てくれたから、となんと一カン作ってもらえることに。揚げの砂糖甘さに、クルミの甘みと香ばしさがバランスよく相乗。味の方向性はどことなくおはぎに似ており、いわばスイーツいなりといった感じだろうか。
地元の素材を用い、手作りで仕込むのが笠間のいなり寿司の流儀な中、この店は揚げもクルミも自前で煮付け、ミョウガも笠間の地物をまとめて甘酢漬けにしているという。特に揚げは仕込みに二日かけ、注ぎ足しながら使うタレを使った昔ながらの手法。みょうが稲荷が旨かった、と褒めたら、そろそろ夏の新ミョウガが穫れる時期のため、みずみずしさがいっそう際立ってくるのだとか。食材の「旬」がしっかり生かされていることも、笠間のいなり寿司の大きなウリのようだ。
ここまでで累計7カンのいなり寿司を味わったが、もうちょっといけそうだ。笠間のいなり寿司は小ぶりでお安いので、お腹にも財布にも優しいのがありがたい。続く。
笠間稲荷の参拝後に門前町を歩いていたら、店の中からおばちゃんに呼び止められ、あれよあれよと店内に引き込まれた「つの国や」。2個で300円とリーズナブルなので、いなり寿司食べ歩きのはじめのひと皿にはちょうどいい。
笠間のいなり寿司の特徴は、地場産の農産品をふんだんに具材に用いている点だ。中でもごはんの代わりにそばを使った「そばいなり」が、笠間のオリジナル。門前にはそば屋がいくつかあったことに由来し、名物の常陸産のそばを揚げに詰め、独自性を出しているという。そばのいなりとは、汁なしきつねそばのようでもあるが、ここのはごはんと同様に軽く酢で締めてあるので、ちゃんと寿司っぽい味わいがする。細めの白っぽいそばはスルスルと胃に入り、小腹を埋めるにはちょうどいい体裁だ。
さらに、この店の具材のもうひとつの特徴が、マイタケを使っていること。地元のキノコ園でとれたものを、砂糖と醤油、さらに地酒を加えたつゆで煮てあり、ホクホクした食感に山の香りが芳しい。きのこの旨みと揚げの甘さも、意外に引き立て合う、
ペロリと平らげてお茶をいただいていると、テーブルに懐かしの、星座占い付き灰皿が置かれているのを見つけた。笠間稲荷でおみくじを引き忘れたので、ここでレトロな運試しにチャレンジしてみるか。