ジンギスカンと聞いて「♫Uh!Ha!Dsching,Dsching,DschingisKhan」とのフレーズが浮かぶのは、もろ竹の子族世代だからだろうか。かの歌はドイツのアーチストが、モンゴルの草原を馬で駆ける英雄を歌ったらしいが、北海道名物のかの料理も、英雄が率いる軍団の陣中料理がルーツとの説がある。真偽はさておき、北の大地とモンゴルの平原を結びつける豪快勇壮さが、この鍋料理の持ち味に思えてならない。
そのジンギスカン、道内の地域により二つの流儀があるのをご存知だろうか。生ラムジンギスカンは、名の通り生肉をスライスしてそのまま焼き、付けダレで味付けするシステムである。昨晩いただいたススキノの「のざわ」は、まるで場末のホルモン焼き屋のようなすすけた店舗に年季を感じる。オーダーすると、奥でおばちゃんが肉を切って登場。肉はドーム状の鍋の斜面の部分、野菜類は麓の脂が溜まったところで揚げるように、と教わったら、いざ焼き始めである。
肉は厚めでコロリとしたのと、平たく薄めなのがあり、焼き上がりが早いので2、3回ひっくり返したらつけダレでいただく。グシっとかむと中がジューシー、柔らかで脂がスッキリ軽く、お腹にストンと入りやすい。たっぷり脂を吸った野菜に肉をのせ、おろしニンニクと一味唐辛子を落としてくるんで食べると最高。あっさりいくらでもいけ、グラスビールのサッポロクラシックが進んでしまっていけない。
一方、今日の昼ごはんにお邪魔した「松尾ジンギスカン」は、札幌駅前の地下フードコートにあり、ジャズピアノのBGMにしゃれた雰囲気が漂う。滝川に本店を有するタレ漬けジンギスカンの雄で、漬け込んだ肉を焼いてそのまま食べるスタイルだ。
普通のラムジンギスカンと、赤身で肉が柔らかい特上ジンギスカンのランチセットを注文。焼き方も生ラムと違いがあり、モヤシを鍋の斜面に全部敷き、鍋のてっぺんに肉を並べたら準備完了。肉は焼き、野菜は蒸すのがコツで、モヤシにタレをかけ回すと肉の脂や肉汁とともに野菜に降りてきて、油を敷かなくても焦げない仕組みになっている。
肉の周りでタレがグツグツ煮立ったら食べ頃で、そのままでひと口。そこそこ厚めだがふっくら柔らかく、肉の淡さにタレの酸味と甘辛さが良く染みている。普通の肉は脂甘さがしっかり、特上はソフトな食感にタレの味と、食味も味付けも異なる。生卵やわさびなど薬味添えもいいが、一番はやはりタレ味のストレート。クタッとしたモヤシと一緒にご飯にのせて、ガッとかっ込めばこれはパワーが湧いてくる。
生ラムはビールに合い、タレ漬けはごはんの友。味も違えば守備範囲も異なる二つのジンギスカン、ともに味わえば北海道の羊肉食文化の深みが、体感できること請け合いだ。はしごは満腹必至だけれど、かの歌の歌詞も「どんどんいけ、さあさあ飲め」とあったっけか。Wahahaha〜