春先は三寒四温というけれど、この春はいわば「七寒八温」ぐらいのスパンに感じる。一気に気温が上がり桜が早めの一斉開花、その後は爆弾低気圧による春の嵐。春だけではなく、このところ季節性のズレや変動が、随分大きくなっている気がする。
体調が春先モードに慣れたところで、朝起きたら猛烈な寒の戻り。その逆もあったりして、この時期は食べたいものも落ち着かない。春っぽい旬ものを食べたいようで、でも寒さに暖をとりたくて。頭に浮かぶものと体が求めるもののギャップ、春先の食の変動やズレも、なかなか大きくなってきたようにも思える。
前日までの陽気に上着なしで出かけたら、きつい冷え込みに襲われ、たまらず「美々卯」に飛び込みニシンそばで昼ごはんに。代謝を上げるべく麺はうどんにしてもらい、ズッとすすってはホロホロのニシンをひとかけら。身欠きに味がじんわり染み、腰がほどほどのうどんとの相性もいい。急で強烈な寒の戻りに、ホッとひと息つける優しさが嬉しい。
「春告魚」と呼ばれるニシンは、名の通り北海道の松前で代表的な春の漁獲。その甘露煮をのせたニシンそばは、底冷えの冬の京都で体温まる逸品。変動激しく不安定な春の食として、これは季節感も暖も満たす一杯かも。