ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

日々是好食…ウナギのファンタジー

2013年07月23日 | ◆日々是好食
「ウナギって、疲れている時にありがたいよね」
「ほんとに。何たってレンジでチン、で調理いらずだもんね」
こんなかみ合わぬ笑いネタがあったように、ちょっと前はもう少し手頃だった印象のウナギ。常食にはちと高価だが、庶民に全然手が出ないほどでもない。些細なハレの日やご褒美に奮発する、「プチ贅沢」な食べ物といった位置づけが、我々世代にとってのウナギのポジションだった。

稚魚の乱獲に激減、養殖業者の減少など、ウナギの値段の高騰の理由は多々あるようだ。にしても土用の丑の日のスーパーで、丸一尾分の蒲焼が2000〜3000円とは。丑の日はそもそも、夏場に売れ行きが悪いウナギの販促のため、江戸期に平賀源内が仕掛けたのが始まりとの説がある。消費は促進されたが、現在は需給のバランスがすっかり逆転。プチがとれた贅沢高級魚となった最近では、くたびれて晩飯を調理する元気がないから思いつきで買ってチン、なんて訳にはとてもいかないくなってしまった。

魚介は天然養殖が云々言われる中、ウナギは養殖地自体がブランドと評価されている。浜名湖産は最近いい値段がつく伝統の銘柄だし、鹿児島や宮崎や三河一色などもすっかり一大産地として浸透した。普段使いのプチ贅沢から、旅でいただくローカルブランド魚介へ。高騰により、ウナギのポジションが変わってきたということか。

その土地の魚介はその土地で食べるのがうまい、という点では、東京付近からは三島のウナギがオススメだ。うな重は供されたら、熱々のうちに脇目も振らず食べるのが礼儀。箸でフッとほどけたのをタレ付きご飯と頬張れば、炭火でカリッと焼き上がった表面から、脂香ばしさが立ち上がる。そして口の中を柔らかく優しく包み込む、言葉が出ない至福。捌く前に富士山からの伏流水に活けておくのが味の秘訣で、土の香りが控えめなのが湧水の効能のようだ。

ウナギはお金をかけただけの「ファンタジー」が得られる料理だ、と某めしバナ漫画で読んだ。東京から新幹線で57分、交通費をかけても得たいファンタジーがある三島へ。ウナギは今や、プチ贅沢な食旅アイテムになりつつある。

東海軒のサンドイッチ@静岡駅

2013年07月22日 | 旅で出会った食メモ
静岡への行き来は、最近は在来線利用が当たり前だったが、新幹線を使うとさすがに1時間と早い。この分だと10時には仕事場に着席と、ひょっとして自宅からより近いのでは?

食事の時間も微妙なほどだからか、こんなレトロなサンドイッチを売っていた。タマゴとハムチーズの基本形で、これでもか、のたっぷりバターが駅弁屋のサンドイッチらしい。

と書いているうちに富士川を渡る。やはり富士山見えないな…。

ローカル魚でとれたてごはん…焼津 『やまちゃん』の、マグロの珍味料理あれこれ

2013年07月21日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
水揚げ量ナンバーワンの漁港の変遷は、魚種や水揚げ地の様々な漁業事情を映し込む。先日訪れた清水は、現在マグロの水揚げ量が日本一と聞いたが、県都静岡を挟んで反対の西側に位置する焼津も、何度もその座についているマグロ処。昭和30年代にはインドマグロの水揚げで隆盛を極め、関連産業で街が大いに潤ったという。新港の市場あたりを散策すると、大型船が接岸できる岸壁に、コンベアが錯綜する荷揚げ場が。周囲には超冷凍の倉庫や深層水の供給場などが立ち並び、依然として遠洋漁業の基地らしい威容を誇っている。

せっかくだからそんなたたずまいでマグロを味わうべく、内港の入り口に近い「やまちゃん」という店ののれんをくぐった。天然マグロへのこだわりが水揚げ地らしく嬉しいが、その分いい値段がついており、トロと赤身の刺身盛り合わせや握りを気ままに頼むと予算的に大変そうだ。一方で各種部位の珍味も揃っているのも、水揚げ地ならでは。こちらは手頃な値段がありがたく、ホンマグロ尽くしを楽しんでみることに。

焼津はマグロほか、カツオも主要水揚げ港である。なので刺身はこちらを頼むと、身はかなり厚めで血合いがほぼない澄んだ桜色。もっちりしたのを一切れ口に入れるとサクサク軽い食感で、脂ののりはあまりなくいわばカツオの赤身な感じがする。「鮮度がいいから、地元ではあまりたたきにしないのよ」とおばちゃんが話すように、薬味なしでもいける澄んだ瑞々しさが夏らしい。カツオ塩辛はきつめの塩でくせを押さえ込んだ、ワタの塩漬け的風。切り身が大きいのが水揚げ地の自家製流でいい。

そしてマグロの珍味二品が届いたら、地元の銘酒「磯自慢」も外せない。潤いあり品のいい甘さの冷やをクッといったら、まずは皮のポン酢から。皮が厚いホンマグロ以外ではできない料理と、おばちゃんがオススメの品だ。プリッ、トロトロの皮目のゼラチン質が、舌で転がすうちに溶け出し、トロの濃厚な脂甘さの像が浮かんでくるよう。もう一品のトロのねぎま串は、その皮に近い身を使うだけに、濃厚な食べ応えがする。トロを炙る贅沢な串で、表面はパリパリに香ばしく、中は脂の甘みが活性化。サーロインのようなステーキ肉に似た味がする。

おばちゃんにマグロの水揚げ作業を見学できるか尋ねたら、作業は早朝で毎日ではないそう。マグロは海水温が下がると脂がのるため、生息海域の冬に合わせて操業、3月から6月頃が水揚げが盛んとのことだった。新港が整備される前は、水揚げ場は店の近くの岸壁で、当時は300キロクラスのホンマグロが荷捌き場にゴロゴロしていたね、と親父さんが懐かしそうに話す。

最近のマグロ漁業を取り巻く環境は厳しく、焼津でも減船傾向で漁業者も減り、巻き網が規制されたりと、親父さんの話が重く響いてくる。一方でマグロは捨てるところがないと、新たな献立にも注目しているなど、当地のマグロに心底惚れ込んでいるご様子。水揚げ日本一奪還のカギは、関わる漁業者や地元の方々の「マグロ愛」にかかっているのかも、と、親父さんと「磯自慢」を酌み交わすにつれて思い入ったりする。

ホテルドルフ静岡の夕食サービス@静岡

2013年07月21日 | 旅で出会った食メモ

最近は取材日程のうち、1日はホテルにチェックイン後は出かけずゴロゴロするのが、お約束となりつつある。今宵も焼津でカツオブシ入れてフリフリのポテチにツナ缶、カツオジャーキーのバリ勝男と、一応買い込むアテは当地もののこだわりを見せつつ、のんびりの予定。

すると泊まった静岡のホテルが、17時以降フリーフードのサービスがあり、何と静岡おでんバイキングが無料!しかもアルコールも1本サービスで、芋焼酎のホッピー割りまで無料!締めご飯の牛丼も無料!だったが、これは玉ネギしか具がなかったような…。


一献一品出合い酒 50献@焼津

2013年07月20日 | ◆一献一品出合い酒
焼津内港に近いホテルの部屋にて、一番搾り缶×へそフライ。カツオにマグロの水揚げ港をぶらり散歩した後なら、駅前の総菜店で衝動買いしたアテを肴にひと息の、このコンビが似合う。

店頭の手書き品書きにひかれ、オーダーしたところで揚げ始める。揚げたて熱々が冷めぬうちに、ホテルへ急ぎ部屋で缶ビールをプシッ。程よい冷えでのどを湿らせてから、ダボダボソースの串をガシッ、グイグイ。正体は心臓だけに弾力が強く、かめば出てくる内臓肉的旨味が、まるでホルモンのようでもある。マグロカツオ尽くしの晩飯前に、まずはモツにビールで前哨戦の一期一会。

昼間に見た巨大な漁港と市場は、あいにく水揚げ作業はなしの静けさ。串を一本二本とかじるごとに、コンベアに満載の魚影が頭の中にひしめくような。一献一品の小さな酒宴、今宵を前に天下泰平なり。