ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはんbyFb…釜石・呑兵衛横丁 『あすなろ』の、釜石の地魚いろいろ

2013年01月04日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 以前に釜石を訪れたのは、新日鉄釜石がまだ健在で、名物の橋上市場もあった頃である。港の近くには「呑兵衛横丁」という飲屋街があり、夜の街は新日鉄釜石の従業員や地元の漁師で賑わっていた。間口の狭い店舗は何と、排水溝を塞ぐ板の上に建っていたとか。そのため津波の際には真下から水が揚がってきてしまい、店舗は全滅。鉄の町・漁業の町の憩いの場だっただけに、当時を思い出して非常に残念であった。

 それが昨年の12月に、釜石の駅前に設けられた仮設店舗に移転。釜石に泊まった夜に訪れてみたら、屋号が灯る行灯が連なる、昔ながらの横丁風景が懐かしく感じる。そのうちの1軒「あすなろ」の暖簾をくぐると、5人も座れば満席の狭いカウンターに、おばちゃんがひとり頑張っていた。

 ホワイトボードに釜石で揚がった魚介を使った肴が並び、オススメを聞くと「イカの一夜干し、サンみりん干しあたりかな」。イカはクキクキの歯ごたえで身は甘く、かなり塩が聞いている。釜石のサンマは三陸でも評判がいいそうで、みりんの味が強いのに脂がのった身の味が強い。サンマどころならではの、厚みのある食べ応えを感じる。

 気を良くしているとおばちゃんがさらに小鉢を勧めてくれる。生ガキはプリプリに粒が丸く、潮の香りが強烈。付近の沿岸ではカキの養殖が壊滅している中で、これは山田で養殖している希少な品だ。おまけの一皿・三陸名物のホヤの塩辛は、酒呑みにうれしい三陸ならではのアテ。オレンジ色の鮮やかさに、産地の新鮮さが感じられ、フルーツ甘い後にキリッと塩っぱさがついてくる。どちらも、まるで三陸の湾をそのまま食べているかのようで、改めてこの海の豊穣さを感じてしまう。

 店のおばちゃんは津波の際、高台から津波の様子を見たそうで、ぺしゃんこに潰れたクルマや家がそのまま流される様子が、心底怖かったと話す。呑兵衛横丁も店の数が減ってしまったが、「仮設のほうが前より、きれいになったかな」と笑う。どの店も狭いながら賑わっている様子で、その姿にかつての「ドブ板」上の飲屋街を、ちょっと懐かしく思い出した。