高校から大学生の頃、横浜駅西口の飲屋街にあるラーメン屋に、足繁く通っていたことがある。がっちり濃い醤油ベースのトンコツスープにはうっすら油が浮き、食べごたえある中太麺、そしてトッピングには角海苔添えに味玉と角煮がゴロゴロと、パンチ力とボリュームはバツグン。味の濃さに油の量、麺の固さが選べるのも当時は画期的で、「油多めの味濃いめ!」と気勢をあげていたものだった。
当時のラーメンといえば味噌、醤油、塩の基本形に、白濁のトンコツがブームになり始めたあたり。「家系」というカテゴリーが生じるかなり前の話で、この「横濱家」が自分の家系の原体験、かつその後の物差しになっている。もっとも総本家の「杉田家」や派生の直系を食べた時、ずいぶん軽くあっさり感じたから、この店のおかげでちとハード方向に、基準が偏っているのかも知れない。
腹ペコ学生時代にはドンピシャのインパクトも、社会人になると逆にノックアウトされる恐れがあり、最近は体調と空腹に万全を期した時ぐらいしか足が向かなくなってしまった。先日、久々に行ってみたが、そのキャラは昔のままだ。太麺にごってり濃厚なスープががっちり絡み、醤油味とトンコツだしと油のトリプルインパクトは健在。さらりと完食できたら、自信とともにあの頃のバイタリティもみなぎってくるような。
当時はまだ携帯もネットも草生期で、グルメ情報は「ぴあ」系のムックか出初めの横浜ウォーカー程度。そんな中で見つけたこの店を「新時代のラーメンだ!」と友人に勧め、シンパを増やしたりしていた。今の情報過多な時代では、滑稽というかアナログというかだが、あの頃は「自分だけの店探し」を、足と経験で稼いでいた時代。そんな当時を懐かしく、ちょっとうらやましく思い出してしまうラーメンでもある。