昨年の秋に岩手県の震災被災地を視察した際、北三陸の観光担当の方に、「北のコナモン博覧会」という食キャンペーンの話を伺った。小麦や大豆の粉食文化が浸透している当地の、文字通り粉モノ料理を食べ歩くイベントで、八戸せんべい汁にひっつみなどは聞いたことがある人もいるのでは。
そのひとつの「久慈まめぶ汁」が、東京ドームで開催中の「ふるさと祭り」に出店すると誘いをいただき、ブースにお邪魔して一杯ごちそうになった。澄まし汁の見た目はけんちん汁に似ていて、煮干しのダシが香ばしい。ニンジンにゴボウの根野菜は、どれもホッコリ甘い土の味。シメジはシャックリと、香気あふれる山の味。焼き豆腐にはダシの味がじっとり染み、日本人なら誰もがフッと笑顔が浮かぶ、安らぐ味だ。
そして「まめぶ」は、名前からして麸をイメージしていたら、小振りの団子か丸餅のようだった。モチモチと柔らかな中身は何と、刻んだクルミと黒砂糖がこっくりと甘いこと。思わぬ仕掛けに、またまた笑顔が浮かんでしまう。
昔は貴重だった砂糖を用いているように、まめぶ汁はかつては「ハレ」の料理だった。当時は野菜ほか、小麦や大豆も各家庭で栽培していたため、豆腐も自家製でキノコも山で採取した天然ものだったそうである。精進料理でもあったので具には肉は使わず、ダシも干しシメジやシイタケでとっていたとも。普段使いの地方の味ながら、食材に目を向けるとかつての豊かさが、ちょっと懐かしく、うらやましく思えたりする。
B級グルメ大会入賞の味とか、名物どんぶり対決とか、会場には「祭り」だけに華や色のある食があふれている。そんな中でのこの汁、素朴で飾り気はないが、日本の根っこの味のように思える。「北三陸出身じゃない方でも、味わった皆さん懐かしい、とおっしゃいますね」との言葉が、やけに印象に残った一杯だった。
そのひとつの「久慈まめぶ汁」が、東京ドームで開催中の「ふるさと祭り」に出店すると誘いをいただき、ブースにお邪魔して一杯ごちそうになった。澄まし汁の見た目はけんちん汁に似ていて、煮干しのダシが香ばしい。ニンジンにゴボウの根野菜は、どれもホッコリ甘い土の味。シメジはシャックリと、香気あふれる山の味。焼き豆腐にはダシの味がじっとり染み、日本人なら誰もがフッと笑顔が浮かぶ、安らぐ味だ。
そして「まめぶ」は、名前からして麸をイメージしていたら、小振りの団子か丸餅のようだった。モチモチと柔らかな中身は何と、刻んだクルミと黒砂糖がこっくりと甘いこと。思わぬ仕掛けに、またまた笑顔が浮かんでしまう。
昔は貴重だった砂糖を用いているように、まめぶ汁はかつては「ハレ」の料理だった。当時は野菜ほか、小麦や大豆も各家庭で栽培していたため、豆腐も自家製でキノコも山で採取した天然ものだったそうである。精進料理でもあったので具には肉は使わず、ダシも干しシメジやシイタケでとっていたとも。普段使いの地方の味ながら、食材に目を向けるとかつての豊かさが、ちょっと懐かしく、うらやましく思えたりする。
B級グルメ大会入賞の味とか、名物どんぶり対決とか、会場には「祭り」だけに華や色のある食があふれている。そんな中でのこの汁、素朴で飾り気はないが、日本の根っこの味のように思える。「北三陸出身じゃない方でも、味わった皆さん懐かしい、とおっしゃいますね」との言葉が、やけに印象に残った一杯だった。