ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん103…大阪・USJ 『フィネガンズバー&グリル』の、ハーフヤードビール

2008年09月23日 | ◆旅で出会ったローカルごはん


 ユニバーサルスタジオジャパンといえば、西の
TDLとも称される、関西を代表するテーマパークである。この夏の家族旅行の目玉でもあり、USJに隣接したオフィシャルホテルに泊まり、翌朝は開門と同時によーいドンでアトラクションへダッシュ。前夜に熟読した攻略マニュアルをもとに、回る順は完璧、と、激混み・行列さあかかってこい、と、気合を入れて臨むこととなった。
 それがいざ、訪れてみると、開門前の行列もさほどではなく、人気のジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」や、ウォータースライダーの「ジュラシックパーク・ザ・ライド」、室内ライドの「E.Tアドベンチャー」の御三家を別とすれば、園内も大した込み具合ではない。攻略マニュアルに「子供向け」とあるので、まず目指した「スヌーピースタジオ」なんて、なごみ系のゾーンのため開園直後にはまだ人っ子ひとりいない。
 8月の最終週といっても夏休み中なのに、ライドよりショーが中心の施設だからか、それとも東京と大阪との混雑の観念の違いなのか、ディズニーに行った時の大混雑を思えばまるで楽勝。混雑度も広さも、入園パスの値段も全部、「8掛けディズニーランド」といった感じだろうか。

 人ごみや行列、加えて激しいライドが苦手な自分にとって、絶叫系アトラクション以外は比較的空いているのはありがたい限り。スヌーピースタジオでミニコースターに乗り、迫力ある水上アクションショー「ウォーターワールド」を見て、と、マニュアルにのっとってチェックポイントを順調にこなしても、まだ昼前。マニュアルによると、これからが園内が最も込む時間帯で、早めの昼ごはんに逃げるに限る、とある。
 午後のブロードウェイミュージカル「ウィケッド」に備え、シアターがあるゾーン、ランド・オブ・オズへと移動。ここはショーが中心のゾーンのため、開演時間近くでないと比較的人気が少なく、エリアにあるレストラン『マンチキンキッチン』も、7割程度の客入りだった。攻略マニュアルの作戦成功で、並ぶことなく昼ごはんをいただけることとなった。魔法使いのおとぎ話をモチーフにしたエリアにあるため、見た目はずいぶんファンタジックだが、中はウッディで落ち着けそうだ。
 オーダーがカフェテリア形式なのはいいが、最初にデザートコーナーがあるため、子供たちはマグカップ入りプチシューやメリーゴーランドのムースを前に、さっそく渋滞している。初っ端にデザートを置くとは、なかなか商売上手だな、と感心する一方、この店、メイン料理の値段は1000円ちょっとと、テーマパークのレストランにしては手ごろな値段なのがありがたい。


イカリングとタコスで、結構ボリュームはある(上)店の概観はかなりメルヘンチック(下)


 ここのメイン料理である、店名を冠した「マンチキンプレート」は、ハンバーグカレー、チキンのトマト煮込み、シーフードミックスフライの3種のおかずから選べ、どれにするか息子が長考に入っている。ほか「オズの魔法使い」にちなんだネーミングの「ゆうきをだそうよプレート」なんてのも。カレーにミートボール、星型コロッケなどが付いたお子様ランチで、完食すると「ゆうきのしるし」なる紙製の冠がもらえるから、娘はこれに即決である。
 そしてここでもディズニーとの違いに遭遇、なんとビールが置いてある。「夢の国」にお酒は無粋だからか、ディズニーランドでは売店飲食店とも、一切アルコールが販売されていないのは有名だが、こちらは「映画撮影スタジオ」だから別にかまわない、というわけか。では自分は軽くリーズナブルに、フライリング&チップスを肴にビールで昼ごはんがわりにしよう。
 ディッシュには、サルサソース付きのタコスにイカリングが4つほどのっていて、こちらは1000円しないからなかなかお得。ビールは普通のスーパードライだが、朝早くから園内をあちこち動き回ったのがいい運動になっていて、これが実にうまい。ディズニーの影響で、テーマパークでビールを飲むのは禁断のこと、という印象があるから、よけい美味く感じるのかも?

 お昼前後の混雑時はショーか食事、朝や15時以降の空いている時間帯にライド、というのがUSJの基本攻略法らしく、夕方前になるとタイムマシン体感ライドの「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」も、大火事体験の「バックドラフト」も、30分強ぐらいの待ち時間でこなすことができた。どちらも激し目のアトラクションのため、特に娘は少々ビックリ、くたびれてしまった様子。締めは20時頃から開始のピーターパンの屋外ショーなので、夕食も早めに済ませておかなければ。
 昼間にアルコールがあったのに気をよくして、夜はアイリッシュパブへと誘導を試みようと、「名物はオムライスらしいよ」と子供たちの好物でもある店の名物で誘ったら、無事合意。ショーが行われるラグーンに近い『フィネガンズバー&グリル』で、パークで2度目の食事である。
 こちらは昼間のファンタジックな店と違い、名のとおり欧風パブといったムードの、スタイリッシュな店構えが目をひく。天井が高く広いフロアにはずらりとテーブルが並び、庶民的な酒場らしい賑わいが感じられる。普段使いにしたくなってしまいそうな、しゃれた雰囲気の店である。
 みんなのオーダーは、もちろんオムライスだ。デミグラスソース、モッツァレラチーズソースなどソースの種類が選べ、トッピングのフライもいろいろあり、あれこれと検討している。3人前ある巨大オムライスのまわりをフライが囲むようにずらりと盛られた、「パーティオムライス」なる特別メニューも。


オールドアイリッシュなバーといったたたずまい(左)定番のデミグラスソースのオムライス(右)


 パーティオムライスもすごい迫力だが、アルコールのコーナーでも負けずにすごいものを見つけた。なんと、高さ50センチほどはありそうな、長~いグラスに注がれたビール。「ハーフヤードという、うちの名物です。普通のジョッキよりもお得ですから、いかがでしょ?」と、USJのアイリッシュパブなのに大阪ノリのウェイトレスさんが、愛想よく勧めてくれる。
 一体どれぐらいの量が入っているのか聞いたところ、中ジョッキで2杯分、約720ミリリットルとのこと。1ヤード(約90センチ)の半分の長さのグラスからその名が付いたそうで、午後もアトラクションに並び続けて渇いたのどには楽勝だ、とチャレンジしてみることに。ビールはスーパードライに黒生、ハーフ&ハーフと選べる中から、見慣れない「グリーンビール」にしてみよう。

 あまりにグラスが長いため、木製の専用ラックに据えられて運ばれてきたグラスは、さっき「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の研究室にあった実験器具のようにも見える。中はまるでクリームソーダのように、鮮やかなペパーミントグリーンの液体で、よりケミカルな感じだ。お姉さんに、グリーンビールの正体を尋ねたら「魔法の粉が入ってるんです」と笑っている。
 でかいだけに飲み方も独特の手順があり、まずは軽く持ち上げて上部から木のラックから外し、片手を底に添え、片手で飲み口に近い上部を握って、ゆっくりと傾ける。ラッパ状の薄い飲み口から、するすると流れてくる冷えたビールが、実に爽快! 調子にのってグッと傾けると、勢いでドッと流れ込んでくるから、そろりそろりと傾け、遠くグラスの奥から緑の液体が迫ってくるのを眺めながら、慎重に味わう。

 そしてアイリッシュパブのビールのアテといえば、ブリティッシュなローカルごはんの代表、フィッシュ&チップスに限る。イギリスでは古くから、安価なファーストフードとして名高く、皿の上には山盛りのフライドポテトに、白身フライが2切れ。そして味付けにはタルタルソースに、モルトビネガーの瓶が添えて出された。
 モルトビネガーとは大麦とトウモロコシが原料の穀物酢で、熱々のうちに塩とこれをかけ回して頂くのが本場流… といきたいが、この酢、かなり癖のある匂いがする。例えれば納豆の匂いで、熱々、ホクホクの納豆ポテトをつまみ、奥底から迫ってくるビールをクイッ。


ベイクドポテト山盛りのフィッシュ&チップス。奥のモルトビネガーで頂く


 グラスの長さの割には、いざ飲んでみるとスルスルと入ってしまい、おかわりもできそうだ。「おかわりならピッチャーのほうがお得ですよ」と、お姉さんがさらに豪気なお勧めをしてくれるが、食後にホテルでバタンキューにはまだちょっと早い。フィナーレを飾るピーターパンのショー見物の穴場を教えてもらい、グリーンビールで爽やかに酔った気分で店を後に。
 ディズニーを訪れるときは、あまり並ばずにたくさん見るにはどうするか、効率のいい回り方で頭がいっぱいになってしまうけれど、USJはそんなに入れ込むことなく、気の向くままに楽しめるところがいい。次回の大阪旅行では、USJは園内攻略法よりも、「飲める」レストランのチェックに力を入れよう。そして今回は新世界だった「大阪コテコテオプション」は、道頓堀や法善寺横町、鶴橋あたりが候補になるか? (2008年8月27日食記)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿