ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん…高山 『居酒屋こがね』の、あげづけと漬物ステーキ

2015年11月18日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
高山・朝日町の居酒屋こがねでの飛騨の宴は、富山湾の魚介に飛騨牛と進んでいく。旅のハレ的な料理もいいが、むかし町だけに土地に根付いた味覚も楽しみたいところ。この店を選んだ地元の方は、ブリも飛騨牛も贅沢品で滅多に食べない、とおっしゃるから、この後出てくる常食のアテに期待したいところだ。

まず続いたあげづけは、食感がパリッ、中がしっとりとして、なんとも懐かしい味が付いている。豆腐のような大豆っぽいような、と思ったら、名の通り油揚げを秘伝のタレにつけたもので、軽く炙るのが地元流だそう。高山の豆腐店「古川屋」が製造、界隈のスーパーなどで扱われており、まさに飛騨地方の家庭の味だ。最近、大柄な女装家の方の情報番組で紹介されたところ、人気が爆発。一時は入手困難になったそうだから、テレビの力は凄まじい。

飛騨は山がちな土地柄のため、古くから地元でとれる産物に限りがある。地場産の食材に加工品が多彩なのは、そのためだという。保存に重きを置いた食材も多く、収穫物の少ない冬場に備えているともいえる。「でも、同じ食材が続くとさすがに飽きるので、手っ取り早く変化をつけるのが焼くこと。朴葉味噌にさっきのあげづけもですけど、飛騨地方は焼いたり炙ったりする料理が多いんです」

その最たるものです、と出てきたのは、案内の方が一押しするステーキ。飛騨牛でも地鶏でもない、なんと漬物のステーキである。白菜の切り漬けやカブの漬物のスライスを、サッと炒めて花カツオをかけただけ。シンプルながらこれが滅法うまく、熱を加えたため乳酸の旨みが活性化。卵でとじたため酸味が丸くなり、飯の友にも地酒「山車」の友にも箸が止まらない。

簡単に調理できるので朝食のおかず向きだそうで、ごはんと炒めてキムチチャーハン風にしても旨そうだ。これも保存食の応用でもあるし、保存し過ぎて長く漬かり過ぎた漬物を利用する、無駄のない料理でもあります、と案内の方。「とりあえず焼いとけ、が飛騨の食文化ですかね」と笑う。ステーキといえば飛騨牛もいいけれど、漬物の方で当地の食文化の真髄に触れてこそ、素顔の飛騨を訪ねる旅なのかも知れない。

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